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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第37話そうだ下見に行こう

『じゃあ、30階に行こうか?』


 いつも通りダンジョンの下見をしようとしたところ、攻略君から飛び出すこの発言である。


「……張り切りすぎじゃない」


 僕は頭を抱えたが、攻略君はこの暴挙を攻略と言ってはばからなかった。


『どんどん深い階層に行こうと言い出したのは君じゃないか』


「そりゃ確かに言ったけど、毎回10階ずつ飛ばして進むのがかっこいいみたいなのはどうなんだろう?」


『階層なんてただの時間稼ぎさ。突破するのはそんなに難しい事じゃない。ちなみに30階は今日の目標だよ。明日は40階、明後日は50だ。転移宝玉を沢山手に入れてセーブポイントを増やしていこうね』


「こ、攻略君がやる気だ……」


 あまりにもアグレッシブな攻略に僕は戦慄したが、攻略君は声が弾んでいた。


『当然だろう? ダンジョン攻略をアドバイスしている時こそ、私はアイデンティティが満たされていると感じるよ』


 そんなところに感じてるのかアイデンティティ。なんか地上ではあんまり話さなくてごめんね?


 かなり命の危険を感じるが、そのおかげで守られているから複雑だった。


 だが覚悟を決める。


 乗ると決めたのなら最後まで乗り切って見せようじゃないか。


 僕はパンと頬を張って気合を入れた。


「……じゃあ。まずどうする?」


『うん。じゃあ今からホームセンターに行こう』


「……なるほど」


 なんだろう……この攻略君すぐホームセンターに行かせようとする。


 そう言えば、僕のハンマーもホームセンター産だった。




『君達は君達が持っている文明をもっと敬った方がいい。精錬技術は言うに及ばず、ありとあらゆる技術が洗練されている。ホームセンターは最も身近に役立つ技術が集約されていると思う』


「めっちゃホームセンター褒めるやん。生活に密着しすぎじゃない?」


『結局生活に密着した物が人類には有益なのさ。あっ。アルカリ性の洗剤を沢山買っていってくれ、後はなるべく丈夫そうなデッキブラシかな? 風呂用の混ぜ棒でもいいが』


「とてもダンジョン攻略の前準備とは思えないラインナップだ……」


 リクエストに応えて僕はドンドン商品を集めて回る。


 迷いがない分、商品の山も出来上がるのはあっという間だった。


『あ、ガスバーナーがあるといいね。うん。アイテムボックスが手に入ったから買い物が実にスムーズだ』


「懐事情は有限だから、是非とも手加減して欲しいよ。あ、でもそうか。重量制限ないんだったね。じゃあでっかいバーベキューセットとかも買っていっとくか。ゴムボートもちょっとくたびれてたからストックも欲しいな」


『……君って奴は。調子が出て来たじゃないか』


「おかげさまで。まぁ楽しいは楽しいよね」


 僕だってどうせやるんだったら楽しんでやろうとは思っているんだよ?


 ただこれから行く場所が場所だから、心臓にとにかく悪いというだけだ。


『ああ、なるべく巨大な鍋を大量にね? ポリバケツもいいな』


「……ポリバケツはともかく、巨大鍋は専門店じゃなきゃ厳しくないかな?」


『なかったらポリバケツだけでもいいよ。要は混ぜられればいいから』


「混ぜられればか……まぁ出来る限り買っておこうか」


 いったい何を作らせるつもりなのか……。


 手早く買い物を済ませてさて次の工程へ。




『ダンジョンの水と、水のあるフロアから海藻を採ってきてくれ。モンスター化しているものがあるとなおいい。鐘太郎、君泳げるかな?』


「河童の名をほしいままにしていたよ」


『それは結構。ああ、河童も見つけたら倒すといい。いい金策になるよ』


「……了解」


 妖怪もいるのか。ダンジョンってすごい。


 しかしダンジョンの水場にわざわざ飛び込んで海藻を採集するなんてことをやった学生は本気でいないと思う。


 なぜなら水の中にいるモンスターは凶暴な奴が多いからだ。


 だが準備運動をして、あったら便利かもと買ってきていたゴーグルをはめようとすると攻略君から攻略情報がもたらされた。


『聖騎士のオーラは水を弾く。その気になればマグマの中でさえ活動可能だから、前段階として水で練習しておくといい』


「なんと……そうか。思ってもみなかった。でもそれはゴーグルを買う前に言ってくれないか?」


『……何か使い道もあるよ』


 なんというか言われてみれば目から鱗の使い方である。


 魔法が弾けるんだから、水くらい弾けるだろう。


 すべてはイメージの問題なのか。そして意識さえすれば弾くものの種類も選べると。


 聖騎士のオーラだからなのか、他のジョブでも同じことが出来るのかは要検証である。


 やはりこのオーラも魔法のようなものなんだなと改めて納得だった。


 水中を歩行するアクティビティのように体を覆い、水中から酸素だけを通す。


 そんな真似が出来れば、水中も地上の様に歩き回れるのだという。


 そして実際にやってみると……思ったより感動してしまう僕がいた。


 地上の延長のように水の中に入って、どんどん地上が遠ざかる感覚はとても新しい。


「なんだろう……えら呼吸になった気分だ」


『まさしく同じだね。水中歩行の完成だよ』


 うん。こいつは夏に重宝しそうな特技が出来てしまった。


 僕は水中の世界に感動しながらせっせと動く怪しいモンスター海藻を集めていると、やはり騒ぎすぎたのか大型の水棲のモンスター、巨大なカジキの様な化け物が僕を襲いにやって来た。


 本来なら死を覚悟する場面である。


 僕はしかし舌なめずりして、新たな獲物に歓喜した。


 こいつは、今の僕の相手ではない。


 ハンマーを振りかぶって、真っすぐ突っ込んできたところを一撃である。


『お見事』


「どうも。海藻はこんなもんでいい?」


『ああ、十分だよ。ちなみに今倒したモンスターはおいしいよ。血が猛毒だから、血を抜いて早いところ魔法で浄化しておくといい。魚類は鮮度が命だ』


「おお! 魚か! いいね! さっそくやろう!」


『……君は心なしか食べ物の話になると食いつきがいいなぁ』


「海藻集めより楽しいと思うけど?」


 意見は分かれると思うけど、それはそれとして好みはあるという話だった。


 しかしここでもアイテムボックスは大活躍だ。


 仕留めたモンスターから採取した素材も、ちゃんと持って帰れるのがアイテムボックス最大の利点だと思う。


 ないと浅い階層でもなければほとんど破棄だから、これは革命的だった。


 肉の解体は余計な手間だが、目的を達成して続いて最後の工程に取り掛かるとしよう。




『よし……最後に集めたものを混ぜます』


「なるほど」


 そうだろうと思っていたので、先んじて大量のポリバケツを用意。


 集めた材料をアイテムボックスから引っ張り出してすぐにも作業は始まった。


 大量の焚火に次々海藻を放り込んで焼き、作るのは大量の灰らしい。


『海藻はしっかり灰にして、洗剤の中に入れてよく混ぜといて』


「それで……これはなんに使うのさ?」


 正直、石鹸でも作るつもりなのかと言いたくなる工程を延々続けるのもしんどい。


 出来上がった頃合いを見計らって、そろそろと説明を求めたら攻略君はあっさり30階のボスを教えてくれた。


『巨大スライムにぶちまけるのさ』


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― 新着の感想 ―
大量に買わないといけないから、ホムセンになるよね
懐事情を考えるならユーズドショップじゃない? 何も考えずに道具を購入して結局使わなかったりちょっと使ったやつとか売りに出てるし
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