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第33話新たな力

 僕らの本日の狩場は22階。まだまだジョングルフロアの続く迷宮にて先輩の歓声は響いた。


「やった……ひゃっほー!」


「ニャー」


 喜びのあまり飛び跳ねておられる。


 先輩は大量の捕獲した魚モンスター肉を駆使して、ついに成し遂げたのである。


 そして浦島先輩がまず目を付けたのは猫科には違いなかったが……跨がれるほど大きな黒豹型のモンスターだった。


 それぞれのモンスターには好物と言うものが存在するらしい。


 それを正確に把握している攻略君は、グランドサーモンと言う名のモンスター釣りを僕らに命じた。


 モンスターに好物を食べさせて、仲良くなる。それこそがテイマーの発現条件だ。


 だから僕らは鮭狩りに勤しんで条件をクリアする手伝いをしていたわけだ。


「テイマーになるとレベルに応じてモンスターを仲間にする数も増えていくみたいですよ」


「おおお……。で、でも流石にモンスターを連れて帰るわけにはいかないよねぇ。どうしようか?」


「テイムしたモンスターを影に収納出来るスキルがあるらしいです。覚えるまでは……此処で飼えばいんじゃないですか?」


「こ、ここで? それってダンジョンで?」


「そうですよ。そもそもここに住んでいるわけですし」


 でっかい黒豹を抱きしめながら驚いている先輩だが驚くのはまだ早い。


 上級職テイマーはただ放し飼いでは済まさない親切仕様の便利職だった。


「それにですね、テイマーのスキルがあればダンジョンの中に陣地作成も出来るみたい……先輩?」


 ガッツリと肩を掴まれた。先輩のギラついた目は迂闊なことを言うと殺されそうなほど血走っていた。


「……そこのところ詳しく!」


「は、はい。ええっとテイマーのスキルで陣地作成が出来るんです。ダンジョンにモンスターの入ってこない場所を作ったり、その場所をモンスターに守らせたり。当然陣地にテイムモンスターを住まわせることも出来るわけです」


 これは素直にすごいスキルだと思う。


 ダンジョンの探索中にセーフエリアを自在に作り出せるスキルは絶対に役に立つだろう。


「そ、それってつまり……好きに猫カフェ……作れるってこと?」


「……猫カフェかなー?」


 僕はついさっき先輩がテイムしたばかりの黒豹型モンスターに視線を向ける。


 どう見ても肉食獣だ。


 それが例え喉をワシャワシャされて目を細めていたとしても隠しきれない、野性味がそこにはあった。


 もし僕がカフェでうろうろされたら癒されるのとは別の意味で腰が抜けそうだった。


 しかし……この質問が重要なことだというのは、先輩の目を見れば明らかである。


「や、やろうと思えば?」


「ほんとかよ……テイマー……最強すぎでは?」


「ええっと……場の制圧がテイマーの真骨頂みたいですよ?」


 陣地を作り、味方を増やし、一人で前衛後衛を両方出来る。


 よっぽどヤバい奴に突っ込みでもしなければ、安定感は抜群らしい。


「ほ、ほー……うん。いいね。すごくいいよ。いや、私は動物が大好きでね。でも家族がアレルギーでずっとペット飼ったり出来なかったんだよ。でもこれは……確実に使える」


 グフフと悪い顔で笑い、なにか漠然としたものを確信に変えた先輩はダンジョンの楽しみ方を見いだしたようだった。




 そして浦島先輩のテイマー転職が成功し、僕は続いて桃山君の所に行く。


 するとそこに、すさまじい速さで水の上を走りながら襲い掛かって来るサーモンを倒している桃山君を発見した。


「これすごいでござるな忍者! どんな場所でも走れるでござる!」


「桃山君! もうサーモンよさそう! ご苦労様!」


「おや? 調子が出て来たんでござるが……」


 桃山君はメモ書きを見たその日に、シーフを習得し、忍者に至ったらしい。


 またあの恐ろしい肝試しをしたらしいが、無事で本当によかった。


 水の上を走っているのは、忍者のなせる技だ。


 桃山君が無事転職に成功した上級職『忍者』のスキルだが、見ていると面白かった。


 動きはまさしく忍者のそれで、体捌きが速すぎて分身して見えるようである。


「……って、ホントに分身してない?」


「忍! 本当にしているでござる。いやぁ。ビックリでござるな! このまま忍者を極めたくなるでござるよ!」


 どうやら使ってみるうちに、忍者の良さに目覚めてしまったようだ。


 桃山君はその楽しさにのめり込み始めているようだが、これはマズイ傾向だった。


「しかし……さっそく忍者に浮気? いや、それでいいならいいんだけどさ」


「……ジョークでござるよ? 初志貫徹でござる。それに……本当に鮭を狩ってたら加速のスキルを覚えたでござるからなぁ」


「お? じゃあ。もう転職か。良かったじゃん」


「……」


「……やっぱり、もう少し忍者で行く?」


「い、いや! 侍! 侍でござる!」


 おや、僕は忍者メインのビルドも楽しいかもと思っていたけど、どうやら桃山君は迷いを振り切ったみたいだった。


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