第310話生徒会長の依頼
「まず……言わせてくれ……生徒会室がエルフだらけなんだが!?」
まぁ、僕が原因だってバレますよね。
それでもここに来るまで間が開いたことに温情を感じます。
「あー……まぁそうですよね。というか知らなかったんですか?」
「知らないなぁ……どういうことなんだ?」
「いやー……個別にファイアーボールヘッドに相談に来てくれたもので……協力を」
「協力って、それでエルフをテイムさせたのか!」
怒るというよりも驚きで腰を浮かせる八坂生徒会長だけれども、それ以上でも以下でもなかった。
「……ええ、いってしまえばその通りですが」
自分でも結構大盤振る舞いしたと思っている。
素敵なステッカーのお土産も配っちゃった。
テヘへと笑う僕に、生徒会長は特大のため息で答えた。
「モンスターは危険だからな……テイムについてはもっと慎重に……」
見るからに苦言を呈す体勢の八坂生徒会長だったが、それを口にする前に後ろから如月副会長に制服を引っ張られて止められていた。
「ねぇ」
「なんだ?」
「……小言はいいから、本題に入ろう」
「うっ……そうだな」
再びため息。
そして生徒会長は、佇まいを直し表情を引き締めると話を続けた。
「こんなことをいうのは恥知らずだとは思うのだが……我々にもテイムの手ほどきを依頼したい」
「……ぜひお願いします」
「それは……正式に生徒会長個人で依頼したいってことですか?」
「その通りだ。現状、モンスターなしでは我々が足手纏いになりかねない。申し訳ないが協力してはもらえないだろうか?」
一応念を押すと、八坂生徒会長は頭まで下げてきたが、そこで待ったをかけたのはレイナさんだった。
「ちょっと待ってください。少しそれは問題あると思います」
「レイナさん?」
「いえ……これは言っておくべきです。前回の依頼は対価として、ダンジョン内での金銭流通システムを提示されました。だからこその大サービスです」
そういえば前回のやつは、報酬を受け取ったんだったか。
しかもかなり大掛かりな報酬だったことを聞いた生徒会長と副会長はそれは予想していなかったみたいである。
「……本当か? だがそれは確かに……」
「ずいぶん思い切っている……それにうまい」
「君はその条件で同意したのか?」
「ええ」
僕が頷くと、八坂生徒会長はピクリと片眉を上げた。
「ダンジョン内で機械を使えるように技術提供も?」
「いえ、それについてはどうですかね? 使えるようにはするつもりですけど、再現できる保証はないです」
空間歪曲ステッカーを再現することができるならば可能だ。
そうでなくとも、精霊をブロックできれば可能かもしれない。
だがおそらくはもうちょっとスキルとしての錬金術が習熟しないとうまくはいかないだろうけど、それも時間の問題ではあると思う。
「ふむ……」
難しい表情の八坂生徒会長は、このままだとなにかすごい見返りを提示して来そうな気配があった。
それは副会長も同様である。
だがこのまま報酬で引き受ける流れは、色々弊害が出てくる予感しかない。
僕としてはもらった方を優先しないといけなくなるだろうし、何より気軽さがなくなると自ずと教える範囲が狭まってしまう。
最終的に知識の出所を分散するという隠れた目的が達成できなくなるのは困るのだ。
だから僕はこの流れをいったん止めることにした。
「そうですね……じゃあ一つ条件があります」
「聞こう」
「何か好きなアニメを一つ布教させてくれたら、お二人ともモンスターのテイムに協力しますよ?」
「……ん?」
だが僕の提案は意味不明だったようで、八坂生徒会長の背後には宇宙が透けて見えた気がした。
「ア、アニメ? ……ええっと、それは全然かまわないが……そんなことでいいのか? ええっと……例えばそう、私がアニメ関連の物を報酬として渡すのではなく?」
「違います! 会長の好みに合わせたアニメをこっちが選んで提供します。大事なことなのです。モチベーションが違います」
そこは本当に大事なところなので、念押しして僕は語ったが、なおさら生徒会長の困惑は深まった。
「そ、そうか?」
「そうですとも」
説明しても半信半疑な生返事を返す八坂生徒会長に対して、静かに話を聞いていた如月副会長はコクリと小さく頷いた。
「……布教は構わない。でも私はすでに今アニメにはまっている」
それを聞いて、僕らの方の空気が変わった。
僕はなるほどと頷いてすっと手をかざすと、副会長に続きを促した。
「ほほう……聞きましょう。―――いったい何に?」
すると如月先輩は淀みなく注目作品を紹介した。
「……ガ〇ダムTV版+Z+逆〇ャア……シャ〇ア・ブルを理解するまでの道のりは長かった」
僕は深く頷き、如月先輩に握手を求める。
「……先輩、ゴーレムに興味あったりしますか?」
「大変興味がある」
「えぇ……」
いつの間に?と驚愕している生徒会長はともかく、如月副会長については僕、大いにサポートする気がモリモリ湧いてきた。




