第31話撮影した動画を見てみよう
「ちょいちょい扉開けて―」
「はーい」
僕が声に応えて部室の扉を開けると、大きな段ボールを抱えた浦島先輩が立っていた。
「はいはい。お疲れさ……なんですこれ?」
「パソコンパソコン」
「パソコンですか!」
「おおー! どうしたんでござるかコレ!」
つい僕は目を輝かせ、浦島先輩はドヤ顔で机の上に段ボールを下ろした。
「ふぅ。パソコン室で払い下げるやつもらってきたんよー。型落ちだけど結構いい奴だって。グラボもソフトも中々いいの入ってる」
「おおおお……すごいじゃないですか!」
「いいんでござるか? そんな高そうなの?」
「まぁなんか色々あるんでしょう。移り変わり早いからねこういうのは」
どんな交渉すれば貰って来られるのかはわからないが、なんにせよこれでやれることはグッと広がった。
しかしまさかこんな同好会の一室にパソコンがやって来るとは、またこの部室の魅力がアップしてしまったようである。
「でも、ちょっと調子悪いんだってさ。修理出来るなら全然使っていいって話だったんだけど……ワタヌキ君、確か行けたよね?」
「もちろんやります! ちなみに修理費は部費で出ます?」
「出ないねぇ。そもそも部費なんて存在しないねぇ。自腹、割り勘でいけたらいいんだけど」
「……やったりましょう。ポーション狩ってくればすぐですよ。実際使えそうですし。しかし……なんだって急にパソコンを?」
僕はそう尋ねると浦島先輩はニヒルに微笑み、親指を立てて言った。
「動画編集……したいんでしょ?」
「う、浦島先輩……最高です」
「フッ……ホレるなよ? ワタヌキ後輩」
やだ、この先輩最高にクールだ。
浦島先輩は段ボールから出したそれをペチリと叩いた。
「ここ数日で私も完全に腹が決まったわけさ。言いたいことがないわけじゃないけど、レベルも上がったしね。……言いたいことがないわけじゃないけど」
「いや……まぁ、なんかすんません」
「いいのよ。得難い経験だったわ。で、協力の第一手がこれというわけよ。私も……自室以外で作業出来るとそれはそれで捗るでしょうし……まぁ元々払い下げのPCは狙ってたよね」
「あー狙ってたんですね」
「じゃなきゃこんなすぐ手に入るわけないでしょ? 切っ掛け、切っ掛け。じゃあさ、世紀の大発明の記録を確認しようぜ? 見てたよドローン。飛んでるだけでも驚きだったけど、撮影までちゃんと出来たら……まぁやるしかないでしょ」
そこはちゃんと見られていたか。
言い出した僕も、まぁ自作だけに気になっていたんだ。
さっそくパソコンのセッティングをして、状況を確認するとやはりすぐには動かない。
電源がつかないとなるとこいつは手こずりそうだった。
「……ちょっと、パーツ買って来なきゃですね」
「そっかー……じゃあ、動画だけでも確認しとく? スマホでいけるかな? なんか特殊なんでしょ?」
「データは普通と一緒ですよ。観るだけならたぶん……」
「おお! じゃあさっそく観てみるでござるよ!」
僕らはドローンの画像データをみんなで確認してみることにした。
しばし、顔を突き合わせて鑑賞。
しかし改めて観てみると……大きな誤算も一つあった。
「これはひどい……」
「はたから見るとえっぐいでござるな」
「なぜここを撮影しようと思ったのか?」
いや、誤算でも何でもないか。
変な格好をした三人組が、順当にモンスターに群がられるやばい絵だ。
しかも沼に沈みかけのモンスターをぶん殴って止めを刺している。
ちょっといつもすごいスピードで沈む金色のやつが見たかっただけなんだけど、なんでこんなことに……。
僕らはそこに映っているヴァイオレンスな映像をしばらく眺めて、同時にため息をついた。
「うわぁ。これはお蔵入りじゃない? ……人類初のダンジョン映像なのになぁ」
「一発目でこれはかっこ悪いでござる……」
「それに方法が裏技過ぎるわ。これは出さない方がよさそう」
撮影成功は喜ばしいが、お蔵入りは満場一致で決定だった。




