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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第256話100階層を攻略を終えて

「いやぁいいね! 旅行気分は今更だけど、やっぱりでっかい建築物は心躍るなぁ!」


「ひえー本格的に城だったでござるなぁ。龍宮城とはまた趣が違うでござるが……観光でお金とれそうでござる!」


「こらこら油断しすぎないように。ダンジョンの100階だよ。ひりつく感覚は収まってるけど、何が起こるかわからないんだから」


「「はーい」」


 気軽なやり取りに、どこか間の抜けた空気は修学旅行でもしているようだった。


 ……ここが前人未到のダンジョン100階層なんて頭のおかしい場所でなかったら。


 しばしの探索の後、待ち合わせ場所にしていた城の城門前でサブカルチャー研究部の面々はお互いの成果を報告し合っていた。


 まず桃山はいやまいったと、ため息混じりに報告した。


「成果と言っても、まだトラップの類が多すぎてまともな探索はできていないでござるな。ただ比較的開けた場所には罠は設置されていなかったみたいでござるよ」


 そして浦島は城や城の周囲のモンスター状況を確認していたようだった。


「モンスターは見かけなかったね。やっぱりあのボスを倒したからみたい」


「とても珍しいタイプの階層だ。守護者のいる階層にモンスターが闊歩している時点でかなり珍しいんだけど……」


「そうですね。あと次の階層に行く階段は見つからなかったね。やっぱりあの扉かな?」


「そうでござるなぁ」


 大した成果は上がらなかったが、もう少し探索の必要はあるらしい。


 その場に座り、息を吐く。


 落ち着きを取り戻し、閑散とした100階を眺めて最初に言葉を発したのは桃山だった。


「ついに100階……。来るところまで来た感じがするでござるなぁ」


「そうだねぇ……信じられないよねぇ」


 そして浦島は相槌を打って遠い目をしていたが、それはおそらくここにいる全員が感じている感想だった。


 100階層という場所は常識的にいうのなら夢のまた夢の場所。


 どんなに頑張っても現状の人類ではまだ到達できない場所である。


 大量のモンスターが溢れる殺伐とした空気に、戦いの余韻を残した魔王然とした城という色気のない場所ではあるが、それは間違いなく探索者の夢見る場所には違いない。


 どこか現実感の無い浮ついた空気の中、龍宮院は問いかけた。


「少し聞いていいかな?」


「構わないですよ?」


「どうしたでござるか?」


「……二人から見て、ワタヌキ君はどう見えてる?」


 区切りがいい階層だからか、龍宮院の不躾な質問に浦島と桃山の二人は顔を見合わせて、曖昧に言った。


「どうというと……仲のいいオタ友、だったはずでござるよ」


「そうだね。ただどう見えると聞かれると……よくわからないってことになります」


「問いただそうとは?」


「考えたことはありますけど、できませんでしたね。なんていうか……鶴の恩返しみたいな? 今は一緒にいてくれてますけど、こう……正体を探ったら縁が切れちゃいそうで」


「拙者も、その感じわかるでござるよ。なんというか……明確に踏み込ませないラインを決めてる感じがあるでござるよね」


「そうそう。そんな感じ」


 うーむと二人して唸る。


 龍宮院は意外に思ってそんな二人に首を傾げた。


「そんなことは……ないんじゃないか? ワタヌキ君はそんなに薄情って感じじゃないだろう? あれだけ惜しみなく結構ヤバい情報も出しているしラインがあるとは……」


 龍宮院はやんわりと否定したものの、しかし浦島はこの際いいかと開き直ったように言った。


「いや、いい奴だってことはわかってますよ? ワタヌキ君はいい奴だから私達も信じてここまで来たんです。彼はお得な攻略情報を正直に教えてくれているんですけど、今となっては全部本当の事だったから問題なんですよね?」


「……そうだね」


「ズバリ、不信感の原因って、その情報の出所とかの話でしょ? 違和感があるから、わざわざ先生も聞いたんでしょうし?」


「……まぁそうだよねぇ」


「ちょっとお得情報程度じゃないでござるからなぁ。こんなのありえないでござるよ。はっきり言って有益すぎるでござる」


「そうなんだよねぇ……本人も怪しいとわかった上で隠していないから、逆に踏み込みづらいんだよ。卑屈な言い回しをしちゃうとさ? おこぼれでここまで来れちゃってる。まるで最高効率の攻略チャートをなぞったみたいに」


「……」


 それがどこかの誰かからもたらされた情報だという可能性が高かったのは、浅い層までの話だ。


 だが、あまりにも先取りしすぎている。


 どこかの誰かが人間であったとしたら、今の世の中のダンジョンの常識に疑いを感じるほどに。


 すべてがワタヌキ カネタロウという少年の空想で、たまたまそうだったとするには、あまりにも噛み合いすぎている。


 結局のところ今現在誰も知らないはずの情報がすべて真実だと、他ならぬ自分達が証明してしまった。


 この100階にたどり着いたという事実が情報の正確さを証明するすべてだった。


 全員が黙り込み、なんとなく城を見上げていると、そこに慌ただしく走ってくる足音が聞こえた。


 自然と全員の視線が足音に向くと、トーレスが大慌てでこちらに走ってきていた。


「この城のどこかに武器とモンスターを作れる工房があるみたいですよ!……どうしました?」


「「「……」」」


 そしてまたぶっ飛んだ知識が転がり込んできたようだ。


 そのソースは間違いなくワタヌキであろうことは疑いない。


 ただ肝心のワタヌキの姿はなく、龍宮院は尋ねた。


「ワタヌキ君はどうしたの?」


「すぐ来ると思いますよ? 途中から別行動です!」


「別行動か……なんか嫌な予感がするな。次は何が起こるんだろうか……」


 龍宮院が呟くと、ハハハと軽い笑いが起きた。


「いやいやワタヌキ氏だってこんな短い間に何もしないでござるよ」


「そうですよー。ワタヌキ後輩は引き際はいつも鮮やかなもんですよ?」


「そうですね! また何かハイライトに花火を見せてくれそうな雰囲気でした!」


「え?」


「え?」


「え?」


「んん?」


 ハッと全員が城を一斉に振り返った時、それは起こった。


 城の一室から激しい光が輝くと、光は一気に広がって城全体を包み込んだ。


「! 急ぐぞ! 場所は!?」


 咄嗟に龍宮院が叫ぶ前に、浦島、桃山、トーレスの三人は駆け出していた。


「えぇ!? いくらなんでも早すぎじゃない!?ワタヌキこーはい!」


「事件に事欠かないでござるな! 急ぐでござる!」


「向かっていた方に案内します!」









 大慌てで同好会一同は、ワタヌキを探して城を駆けた。


 ガラリと内装が変わった城内は戦闘跡が一切消え、新築のように美しくリニューアルされていた。


 そして先ほど光っていた部屋にやってくると、その扉を開けて勢いよく飛び込んだ。


 しかしすんなりと開いた扉の向こうに広がっていた光景は、彼らが息を呑むのに十分だった。


「「「「……っ!」」」」


 真っ白に染まった部屋に、大小さまざまな天使が集まっていた。


 そしてその中には真っ黒な騎士の姿もあって、全員が一様に玉座に座る人物を前にして跪き、頭を垂れている。


 それは新しい王の誕生を祝福しているように見えた。


 全員がただ事ではない光景に入り口で立ちすくんでいると、玉座に座っていた彼は動く。


 どこか今までにないほどに堂々と、頬杖をついて座っていたワタヌキはいきなり背筋を正して目を開いた。


「……え? すみませんすみません! ……寝ちゃってました。あ? なんか内装変えた? 」


 あっ。大丈夫かも。


「え? 何事?」


 明らかに動揺して火の玉頭が揺れているのを見て、サブカル研究部の面々はひとまずいつも通りに彼に歩み寄った。

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