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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第252話100階層攻略完了

「……」


 僕は城の中で目を覚ました。


 そこにはずらりとサブカルチャー研究部のメンバーが顔をそろえていて、青い顔で僕を見ている。


 なにも言わないのは気まずいので、僕はとりあえず口を開いた。


「……どうも僕はワタヌキ カネタロウ。ダンジョン学園で一年生やってますヨ?」


「……それは大丈夫な受け答えなんでござるか?」


「むしろダメな方なんじゃないかな?」


「だ、大丈夫なはずです。ポーションは効いたはず……タブン?」


「この指何本に見える? 意識ははっきりしてる?」


「……三本。意識……飛んじゃってましたかね?」


 浦島先輩の質問に答えつつ体を起こし、恐る恐るそう尋ねると全員の視線が泳いだ。


「いやぁ……アレはそんなレベルではないでござる」


「そう……だねぇ……モザイクとか必要だったかなぁ」


「確かに……ワタシのトラウマが書き換わりそうでした」


「一体僕どんな状態だったの!?」


 何それおっかないんですけどぉ!?


 思わず叫ぶと、逆にオーバーリアクションで叫び返された。


「叫びたいのはこっちだよ! でっかいヤツぶっ壊したと思ったらバタンと倒れて! なんのダメージ!?」


「一体何があったんですか! なにかすごい攻撃にやられたんですか!?」


「あの得体のしれない奴の事でござる……なにか未知の呪いか何かを喰らったのかも……!」


 アッと言う間に圧に負けた僕は、逆に冷静になって自分の状態を確認すると、全身泣きそうなくらい痛い以外は、後遺症も状態異常もないようだった。


 それにぶっ倒れたことに原因があるとすれば、それは敵の攻撃とかではないから、改めて説明しようとするとちょっと恥ずかしい。


「……あーいや違うんだ。アレは、対抗するためにちょっと裏技を……でも負荷がきつすぎちゃって」


「え? つまり……自滅?」


 まぁそういう事である。


 ロード化と超化の相乗効果はすさまじかった。


 ロード化の恩恵で天使の力が加算されているところにさらにステータスが一桁変わってくるっていうのは真面目にヤバい。


 一気に魔力が高まりすぎて、気分が神様のところまでぶっとんだ気がしたほどだったが、本当に意識が飛ぶとは思わなかった。


 まぁ実際すさまじい力ではあったのだろう。


 そうじゃなければこの100階層を攻略できるわけもない。


 傍らに転がっていた、トールハンマー? だったものはずいぶん雑な作りの鈍器に姿を変えているし、がんばらせすぎてしまったみたいだった。


「倒した後、外のモンスターはだいたいおとなしくなったみたいだよ。被害もほとんどなかった。やっぱジャンボゴーレム君が頑張ってくれたのが大きかったね」


「ドラゴンはどうでした?」


「そこそこ?」


 あらまぁ。そんなに活躍できなかったか。


 登場が遅かったから仕方がない。


 突入してから攻略までテンポは良かったと思うから、うまくいったなら何よりだ。


「これで次の階層のフリーエリアが解放? 楽しみにしてたんだけど……ダメっぽいね」


「どうも次の階に行けないっぽいんでござるよね」


「……」


 そして今、念入りに調べているのは、最初にボスが立っていたステージの様な場所らしい。


 なるほど。露骨に怪しいもんね。


 床のデザインなんて魔法文字がびっしりと刻まれた扉の様で、いかにも開きそうなデザインではあった。


 何もしていなかったということはないようで、僕が目を覚ますまでに浦島先輩達もいろいろと試してみていたようだった。


「いつもならボスを攻略したところで次の階に行くための何かが起こるはずだけど、全然変化がない。絶対ここが怪しいんだけどね」


「そうでござるな。拙者も斬ってみたでござるが……」


「めっちゃ物理試すなぁ……」


 そして肝心の扉らしきものの前では、今は龍宮院先生が全力の拳を叩きつけていたが、地鳴りはするものの肝心の扉自体には傷もつかない。


 へこんだガンドレットに眉を顰めて、龍宮院先生はため息交じりにこちらに戻って来た。


「フー……。うーん、これはもう破壊不能でここが底ってことでいいんじゃないか?」


 ドロップしたらしい転移宝玉と壊れない床を見比べつつ、渋い表情の龍宮院先生は力づくでの解決は諦めたようである。


 先生、地味に脳筋だななんてちょっと思ったが、今現在開かないというのなら底と同じことだった。


「……だけど今日のところはいったん撤退ですかね」


 僕が弱々しくそう口にすると、それはそうだと満場一致で頷かれた。


「そりゃそうだよ。もうさすがに疲れた」


「激闘でござったからなぁ。めちゃくちゃ強かったでござる……」


「こんなに歯ごたえのある戦いは久しぶりだった。正直緩んでいたみたいで恥ずかしいよ」


「そうですね。流石に魔力も空っぽです!」


 96階から続く戦いはどれも強力なモンスターばかり相手にした、激しい物だった。


 僕らは死力を尽くしたし、出し切ったと胸を張れる闘いはできたはずだ。


 ただ……ちょっとだけ僕にも気になることがある。


 それは僕の腕にいつの間にかくっついていたぬいぐるみについて。


 すごく見覚えのある火の玉ぬいぐるみがしっかりとしがみついていることだった。


 意味が分からなかったので、僕はひとまず浦島先輩に訊ねていた。


「ねぇ……こいつなんで腕にくっつけたんです?」


 すると浦島先輩はああそれねと、曖昧に首を傾げた。


「いや、なんか逃げ出したかと思ったら、くっついて取れなくなったんだよね」


「……なんで? ダイジョブかなこれ?」


「いや、なんか微笑ましいし、いいんじゃない?」


「……呪われたりしないですかね?」


 一応僕のテイムモンスターになったということは、凄く広い意味で天使カテゴリーに掠る存在なのかもしれないけれど、直接腕を切り落とす羽目になった身としては、どうにも落ち着かない。


 しかし答えを持ち合わせている可能性がある者はいなかった。


 可能性があるとすれば攻略君なんだろうけど、黙っているのなら訊かない方がいいこともあるってことなんだと思うことにした。


「まぁ……攻略したものの、分かんないことも不思議なことも山盛りですよね」


「そうなんだよ」


「全くでござる」


「そんなのずっと前からじゃないか?」


 龍宮院先生がその通りのことを言っていたけど、まぁ今まで謎だったのなら、その謎もゆっくり全部解き明かせば済む。


 僕はよっこらせと起き上がる。


 全快ではないが、問題なく動けるレベルには回復したか。


 我ながら自分の頑丈さに呆れてしまうけど、それはすべて攻略君おすすめビルドの賜物である。


 この後も攻略君には聞きたいことが沢山あるなとそんなことを考えながら、もう少しだけ周囲を探索してみると仲間が解散するのを見送ると、少し遅れて僕の肩は叩かれた。


「ん? なんだろう?」


「はいマスターワタヌキ! 一つ質問があります!」


 わざわざタイミングをずらしたレイナさんは、一応周囲を警戒して声を潜めると、ソワソワと体を小刻みに揺らしながら目を煌めかせてこんな質問をしてきたのだ。


「ワタヌキ……権能ってなんだかわかりませんか?」


「…………っ!」


 その瞬間の背筋が冷たくなるような感覚は、僕の表情を取り繕う余裕がないほどゆがめていた。


 一方でレイナさんは僕の様子にまず目を丸くする。


 だがすぐに目論見が成功したようにニシシと楽しそうに笑っていた。


「その顔……なるほど? なにか知ってますね? 初めて本気で表情を崩せた気がします!」


 これはどうやら僕の反応で自分の中の予想が当たったと確信させてしまったみたいだった。

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― 新着の感想 ―
あの土壇場覚醒は攻略君の想定にも無さそうだしね…
そういや攻略君は自分のこと権能と言ってたね 前話でも邪神の力とか言ってたし、なにやら核心に近づいてきた予感?
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