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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第249話コウセイ

「―――これでいくらか」


「桃山君! 集中!」


「へ―――……っ!」


 桃山君は後ろに飛ぶ。


 そしてぬいぐるみは無造作に右腕を振った。


 僕は慌てて転移で跳ぶと桃山君と人形の間に割りこんだが、気が付くともろとも吹き飛ばされていた。


「……!」


 衝撃が冗談ではない。


 ダメージも深刻だが、しかしその一撃に込められた厄介な呪いは黒炎となってオーラを侵食し、受け止めた腕に燃え移った。


『侵食するぞ! 切り離せ!』


「……桃山君! 斬れ!」


「……っ!」


 桃山君はすぐさま燃えた僕の腕を切り落とすと、床に落ちた腕はあっという間に燃え尽きてしまった。


「グゥ……!」


「ワタヌキ君!」


「……集中だ、桃山氏」


 すぐさま僕は回復魔法を最大出力で使用する。


 激痛と共に腕は再生したが、危うく致命傷になるところだった。


「フゥ……! 厄介な呪いを使ってくるな……」


『気を付けろ。魔法の中で呪いは最も厄介だ。場合によっては一瞬の判断ミスで回復すら意味がなくなるものも存在する』


 今まさにそいつを体験できたね。だが今は生の実感に浸っている暇すらない。


 桃山君を浦島先輩にパスしつつ、僕はアームの盾を構えてオーラを集中することで、続く追撃をどうにか堪えた。


「!!……ぐぉぉぉ」


 僕は歯を食いしばる。


 飛び出た黒い触手による斬撃と打撃の物理的な衝撃はドラゴンの一撃よりも重い。


 アームを自分の腕でも支え、聖騎士オーラをシールドに集中してなお、衝撃が体に深く響く。


 だが後ろでは桃山君達の声も聞こえていて、一歩も引くわけにはいかなかった。


「……不覚っ」


「大丈夫!?」


「……気を抜きすぎたでござるね。てっきり弱体化したものと」


「今回はアイテム一つ使うだけで解決とはいかないか……」


「そうでござるな」


 浦島先輩が桃山君に追加で回復魔法を使ってくれていたが、桃山君の耐久力ではちょっとこいつを耐えるのは厳しそうだ。


 想定以上の敵の速さと力に、僕はゴクリと喉を鳴らす。


 デバフは桃山君が引き付けている間に積んでいるはずなのにコレとは、まったく手に負えない。


 ただステータスが上がり続けているのを感じるから、レイナさんと浦島先輩の準備は後、2、3秒で終わるだろう。


 3,2……


 その間10回は即死クラスの攻撃が飛んできたが、気合いで耐えるのは僕の仕事だった。


「……行きます!」


 そして攻撃の切れ目にダッシュ。


 シールドを前面に構えて突進で潰してやろうと思ったら、今度はドロリとした泥の津波が目の前に迫っていた。


「!」


『こけおどしだ! 突っ込め!』


 うわ! 対応めんどくさ!


 僕のつかみどころのないイメージ最悪である。


 だがだいたいの敵の居場所は把握済み。


 咄嗟に攻撃手段を切り替えてパイルバンカーを構えると、ぬいぐるみのあった位置めがけて叩き込む。


 ドパンと泥が弾け、差し込んだ杭が固い何かに触れた瞬間、引き金を引いた。


 ぬいぐるみは吹き飛び、空中で回転しながら飛んで行く。


 その間に溜めが終わったレイナさんがエルフ耳状態でギターを構えていて、通常よりも巨大な魔力の流れが集約する。


「……ラストいきますよ! 受け取ってください!」


 そしてレイナさんから放たれた魔法は僕らに一気に流れ込んだ。


 ネクロマンサーとして集めたエネルギーが全員に均等に流し込まれるスキルはレイナさんだからこそできる強化であり、今回最高のヘイト管理だった。


 魔力に反応する化け物の注意を、引きつけたい誰かに集中する。


 つまるところ僕である。


 そしてその瞬間、龍宮院先生もすでに動いていた。


「シッ……!」


 先生は恐ろしい勢いで火の玉ぬいぐるみの懐に潜り込む。


 僕は反撃が来るかとリカバーに意識を割いたが、なぜか反撃はこず――見覚えのない赤いオーラを纏った龍宮院先生は神速のラッシュをぬいぐるみに叩き込む。


 ガガガガッとマシンガンのように打撃音が響き、光を帯びた拳はまるで流星の様だ。


 僕はしかしタコ殴りにされる火の玉ぬいぐるみの背後になぜかトレンチコートを着たおじさんの姿を幻視した。


「……あ、これちょっと任せよう。ちなみにあの赤いオーラ何?」


『バーサーカー状態……対象を怒り状態にして冷静さを失わせる状態異常だ。攻撃力が二倍になるが……』


「……ああ、道理でキレがいいと思った」


 お? あいつ自爆した?


 状態異常解除の魔法をストックはしておくが、使うタイミングはもうちょっと後にしよう。


 是非ともここであいつをひき肉にしてもらいたいけど、そううまくはいかないことは理解していた。


 龍宮院先生の黄金の拳は、しばしの間クリティカルヒットを叩き込み続けていたが、敵からにじみ出る魔力の変化の兆しは、いちいち派手だ。


 そろそろ恐怖トレースなんて小技のターンは終了が近かった。

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