第248話刃の嵐
「……」
息を呑んで僕は桃山君の動きを注視する。
流石忍者も経由したことがある侍だ。
そこにいるにもかかわらず、極限まで気配を殺し、たとえ見えていたとしても見落としてしまうような技術は、けして間違った選択ではなかった。
実際、他の誰かだったらもっと早く攻撃されていただろう。
それが射程内に踏み込めている時点で十分大したものだった。
桃山君は銃を構え、引き金を引く。
先制攻撃には成功したが、飛び出した弾丸は斬撃によって切り落とされた。
「……!」
続いて連射。
だがことごとく弾丸は斬られ、無効化される。
更に反撃で飛んで来る無数の飛ぶ斬撃を桃山君は最小限の動きで躱してゆく。
桃山君が数秒前に立っていた地面は、バラバラに切り刻まれていて、それはまるで刃の嵐のようだった。
「一体何が起こってますか!」
「単純に斬撃の攻撃だよ。アレが桃山君が最も恐れるモノなんだろう」
斬撃だけの攻撃はいうなれば自分よりも優れた剣士の具現である。
おそらくは空想の更なる高みが、桃山君を襲っているものの正体に違いない。
だが桃山君は追い詰められているようで冷静だった。
あんなでたらめな攻撃にただの一度も当たっていない。
それどころか僕には攻撃の方向を誘導しているようにも見えた。
桃山君が逃げ込んだ太い柱をギャリッと斬撃は削り取る。
しかし飛び出してきたものに殺到した刃は次の瞬間、大量の氷に止められていた。
「ワオン!」
狼は斬撃を一撃喰らって、煙になって姿を消す。
そして反対に飛び出した、桃山君のタイミングは絶妙だった。
それでも刃は飛んできたが、桃山君渾身の居合抜きは飛んできた刃を切り伏せて一気に敵との距離を詰めた。
「プレゼントのお届けでござる!」
最後にポイっと投げ渡されたぬいぐるみはモンスターの闇に触れると一気にそいつを捉えて、吸い込んだ。
「おお!」
僕は思わず歓声を上げた。
火の玉人形は膨大な闇を吸収して、ゆっくりと動き出す。
空っぽだったモノに真っ黒な闇は浸食を重ね―――そして一つとなった。
「……!」
体を手に入れ、僕らと同じところに堕ちて来た化け物の気配に、思わず身体が震える。
ポトリと地面に落下した人形は暗黒のオーラを纏い、人形とは思えないほど威圧的な気配を持っていて、視界に入れただけで僕は冷汗が止まらなかった。




