第239話黄金の砂漠
最後にゴーレムの胴体にでっかい凹みが出来てしまったが、一先ず攻略完了した。
そして今回の勝利は、この一階分だけでも相当な達成感を僕らにもたらした。
「うっひょー! これで砂金の砂漠全部私達の物!? ヤベー!」
「ドラゴンの宝物の時もすごかったでござるが……この規模は価値観ぶっ壊れそうでござるよ!」
「アッハッハッ! もうとっくの昔にぶっ壊れていると気が付いていなかったのかい? 桃山後輩!」
「そういえばそうでござるな!」
パーティメンバーは、すでにこの勝利を存分に楽しんでいた。
確かに価値観は壊れ気味であると認めよう。
何せ僕なんて砂金の砂漠よりも、戦闘を止めるのが遅れてテイムしたゴーレムに結構なダメージを与えてしまったことの方が気になっている。
浦島先輩特製巨大岩石を龍宮院先生が打ち出す合体攻撃だったようなのだが、単に重い質量攻撃は思いのほか強力だった。
そしてそのダメージを与えた張本人達は、思い切り大魔法をぶっ放して大変健康的に笑っていた。
「いやぁ焦った。めちゃくちゃ倒しに来ましたね……」
危うく巻き添えを喰らいそうになって震えるが、相手が相手だけに当たり前の話ではあった。
「そりゃあ倒しに行くでしょ? 最近は全力出せる相手なんて早々いないからね!」
「山みたいな岩の塊だったけど飛ばせるもんだ……自分でもビックリした!」
「あんなでかいのぶっ飛ばす機会はそうそうないですよね! 先生!」
「あってたまるかって感じするよね!」
確かに全力を出すという意味ではこんなに耐久力のある的はそうはいない。
一体何やらかしたんだ?っという感情はなくはないが、このゴーレムにダメージを与えたという事実だけでも、よっぽどのことを実行したのは間違いなかった。
そりゃあ……ものすごく見たかった。 さぞかし大迫力だっただろう。
「最初はどうなる事かと思いましたが、最高でしたね!」
「大火力を僕もろとも試すのは止めてー。でもテイムできて良かった」
僕らは改めてひっくり返ったピラミットを眺めると、やはりちょっとスケール感がおかしくなる大きさだった。
レイナさんは大人しくなって安心して見られるようになった巨大ゴーレムを眺めて、鼻息が荒くなっていた。
「すごい……デカいです! 今までで最大じゃないですか?」
「いいよね……ゴーレム。やっぱりでっかいことはいいことだよ」
「そうですとも! でっかいことはいいことです!……まぁこいつはデカすぎますけどね!」
「それはそうだけど……ここから先こいつには頑張ってもらわなきゃだしねぇ」
「こいつにですか!?」
レイナさんに限らず全員が驚いていたが、このゴーレムはこの先のギミック対応に大いに役立つ。
次の階層でも大活躍の予定だった。
そして次の階層での鍵はもう一人いる。
僕は赤パーカーのガスマスクの友人に視線を向けて、ポンと肩を叩いた。
「次は桃山氏大活躍回だから、足場は重要でしょう? 剣士だし?」
「え? そうなんでござるか?」
名指しされて驚く桃山君に僕は頷く。
次は彼にとっては活躍回でもあり、パワーアップ回でもある重要な階層だった。
「まぁね、次はこいつと一緒に頑張ってもらうよ」
「……コレとでござるか?」
聳え立つピラミッドゴーレムを見上げる桃山君に僕は力強く頷いた。
「そう、最後の相棒狩りだ。ついに新型銃の出番だね。バッチリ決めてくれよ? 桃山氏」
「……プレッシャーかけないで欲しいでござるよ。このでっかいゴーレムの後のモンスターとかただでさえヤバそうなのに」
僕としては最近バトルジャンキー気味だった桃山君が不安がるとは意外である。
しかしこの巨大ゴーレムはそれだけのインパクトがあったという事なんだろう。
他のメンバーもこの先に関して台詞に不安が混じっていた。
「確かに……これから何が出て来るやら」
「ちょっと想像よりもやばい奴が続いてますね。ソロで戦って勝てそうにはないです」
「……というか。戦うようなモノなのかな? このピラミッド? みたいなモンスターも個人の力で対抗するようなモノではないと思うんだけど?」
「対抗した人たちが言いますよね……でも確かに強いですが勝てない相手ではないってことです」
しかしまぁ確かにこいつが地上で暴れたら怪獣映画みたいなことになるだろう。
もしそんなことになったらビルの類は簡単に倒されるだろうし、軍隊の一つも出撃してくることが鮮明にイメージで来た。
「……なんか不謹慎かもですが。軍隊対巨大ゴーレムとかそのシュチュ燃えますね」
「おいおい……まぁ。わからなくはないけど」
苦笑する龍宮院先生だが、分かるということはその手の娯楽に適性のある人か、素晴らしい。
やはりでっかいことはいい事だった。
しかもその大怪獣バトルは、この後すぐ。
実に楽しみ……ではなく、当事者なんだから気合いを入れていこう。
次の階層はずいぶんと殺風景な景色から始まった。
地面から棒が突き立ったみたいな円柱形の細い岩山が聳え立っていて、いかにも何かありそうである。
実際この天辺に、この階層のボスモンスターが陣取っているはず。
僕は空を見上げると、そいつは僕らがこの階層に足を踏み入れた瞬間にすでに動き出していたらしい。
目を凝らすと、岩山の上にキラキラ輝きながら飛んでいる、鳥の姿が確認できた。
「……いますね」
そしてそいつの身体は燃え上がり、黄金の炎を放って岩山を丸ごと包み込む。
「!」
単なる変わった色の炎かと思いきや、岩山の隙間からメキメキとすごい勢いで植物が急成長し始めてただの岩山を覆いつくすと、黄金の炎燃え盛る不気味な植物の塊に姿を変貌させた。




