第238話迫りくる巨大ゴーレム
魔法の一切を反射、増幅して反撃してくるこの馬鹿デカいゴーレムは魔法の効きがとにかく悪く、やたら硬い。
試しに壁をスレッジハンマーでぶん殴ってみたが、軽くへこんだだけだった。
「うーむ」
内部までこの硬さとは、つくづく破壊させる気がない防御力は呆れを通り越して尊敬するレベルだ。
この極めて特殊なゴーレムの攻略方法はしかし極めてシンプルである。
『勝利するには、この耐久力をとにかくレベルとパラメーターの暴力で叩き潰すか、弱点を突いて黙らせるかのどちらかだ』
「2択がどっちも大変そう」
『しかしそのどちらも大変すぎて割に合わないモンスターであることは疑いない』
「だろうね」
『だからまるっといただいて。元を取ろうというわけだね』
「大賛成」
組み変わるブロックをかいくぐり、モンスターの体内に侵入すると、内部は別の階層のダンジョンのようだった。
壁のブロックを一つ持ち帰るだけでも一財産だけど、肝心のそのブロック一つ一つがゴーレムの一部で、自分を殺しに来るんだから気の抜けないアスレチックである。
ただこちらの位置を向こうも完全に把握しているわけではないのか、攻撃は大雑把で、隙間だらけなのが唯一の活路だった。
『真っすぐ進んで! 飛び出す壁と床に注意だ!』
「注意と言われましても!?」
通路の様で通路じゃない。
ブロックの集合体は、どこがどう動いてもおかしくはない。
よく指示を聞きながら、華麗にアクロバティックな動きを成功させているのは、パラメーター頼りの力技だった。
『そこを右に行って上に行って、穴があるから飛び込んで!』
「……!」
新種の音ゲーでもやらされているみたいな指示の連続は脳みそにクル。
何度も潰されそうになりながら、せわしなく入れ替わるブロックを潜り抜け、ようやく見つけた穴の中に飛び込むと、僕は空洞に飛び出した。
「……ぅ!」
『ここが中枢だ!』
空中に放り出されたが、浮遊感で脳が混乱する。
そこは重力さえもまともに機能していない怪しい空間で、ブロックが無数に浮かんでいた。
そして攻略君はすぐさま目の前に飛び込んで来た無数の魔法文字が刻まれたブロックを前に指示を飛ばす。
『それがコアだ!』
「見えてる!」
僕は手を伸ばし、なんとか目標のブロックにしがみついて、アイテムボックスから袋を引っ張り出すとそれをぶちまけた。
袋の中身は東雲さんとの工作中に出たオリハルコンの金属粉と魔法生物の泥を混ぜ込んだものである。
ぶちまけた瞬間に挙動がおかしくなったコアに、すぐさま僕はスキルを使用して、その本質を掌握する。
大丈夫。この手の作業はもう何度もこなしている。
振り落とそうとするゴーレムコアの抵抗を、腕力で無理やりねじ伏せてしばらく耐えていると、気が付けばビュンビュン飛び回っていたオリハルコンブロックは空中でピタリと動きを止めて、絶え間なく振動していた巨大ゴーレムそのものが停止していた。
「……」
しばし、耳を澄ます。
そして本当に止まったのか確認して、ようやく僕は肩の力を抜いていた。
「……ふぅ。これで……終わった?」
『お疲れ。いい仕事だったよ』
「それは……よかった。じゃあゴーレム君、最初の仕事だ。手でも振って戦闘が終わったことを外のメンバーに教えてあげてくれる?」
そう指示するのと同じタイミングで、ズドンと冗談じゃない衝撃がゴーレムを揺らして、僕は身をすくめた。
「!何事!?」
『足止めの攻撃だね。……すごい威力だけど、次弾が来るのは15秒後ってところだ。正面から叩き潰す勢いだよ?』
「!!」
そりゃマズイ!
僕は休憩する暇もなく大慌てで、攻略終了を伝えに走った。




