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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第236話攻略開始

「95階層から先は様子が変わります。大猿の階層で感じたと思いますけど、出現モンスターの強さが跳ね上がりますからいつもの5割増しで気合を入れてくださいね」


 僕は前置きする。


 96階層に足を踏み入れた僕らは、ずいぶん殺風景な島のような場所に突然放り出された。


「……!」


 固い緑の床に、遠くに水平線が見える水場がある。


 そして入って早々襲い掛かって来たのは巨大なウミヘビが一体。


 更には大量の二足歩行の恐ろしく速い亀が集団で攻めてきていた。


「いきなりだなぁ!」


 誰かの声が聞こえたが前置きのおかげか動揺というほどでもない。


 戦闘への移行はスムーズだった。


「敵は一体と沢山。武闘派の亀は亀のくせに速くて強いです。取り囲まれないように注意してください!」


 僕は瞬時にアームを展開。盾を構えて突進した。


 まず頭からヘッドバットで押し潰そうとしてきたウミヘビを正面からラウンドシールドで受け止め、飛び掛かって来た亀を魔法ですべて捕捉する。


「投げます。全力で叩いて」


「お膳立てが過ぎるでござる」


「全くだね」


 次の瞬間、空間魔法で空中に放り出された亀達は一瞬で刀で斬り裂かれ、拳の一撃は甲羅を叩き砕いていた。


 さすがの威力だ、頼り甲斐がある。


 桃山君も龍宮院先生も、もう自分のレベルに身体を十分慣らしていると思ってよさそうだ。


「これは斬り放題でござるな! 行くでござるよクロハナサクヤ!」


 呼び声に応え、ひょうたんから影が飛び出し、影の桜が舞い散る。


 銀色の剣線はおおよそ正確に無駄なく首を跳ね飛ばし、死角を影が補って薙ぎ払う。


 更に刀が揺らめき、漂う霞が巨大な猿と狼の形を取って手当たり次第に亀達を蹴散らしていった。


「こっちもどんどん行くよ! コノハ! オウギ! 出番だ!」


 龍宮院先生の金色の輝きは円を描くようにアクロバティックに亀の急所を次々打ち抜いていた。


 そして龍宮院先生の呼びかけに応えて現れたのは水と炎。


 オウギと呼ばれた黒髪龍人の少年とコノハと呼ばれた明るい燃える髪を持つ上位精霊の少年は獰猛に吼えて、亀に襲い掛かった。


 巨大な水の龍と鮮やかに燃え上がる炎の虎は容赦なく亀達をなぎ倒す。


 どこか忍者っぽい動きで華麗に舞うテイムモンスターを見る龍宮院先生は、とっても満足そうで、お肌も興奮して赤らみ、ツヤツヤであった。


 もちろん贔屓目をなしにしてもモンスター達の動きは素晴らしい。


 どちらも龍宮院先生の動きにきっちりと追従してサポートしている姿は十分な戦闘経験を感じさせるものだった。


 96階層でこの無双感が出せるとは……!


 どうやら思っていた以上にしっかりと龍宮院先生は相棒の育成にも力を入れているようで、実に愛が深い。


 亀はお代わりが大量で、まだまだ前衛は仕事が多いから増員は大歓迎である。


「ふんぬ!」 


 僕もスレッジハンマーで力任せに海蛇を弾き飛ばしたがまだまだ。


 次々襲い掛かって来る亀を手当たり次第にぶん殴り、とにかく敵を引き付ける。


 ギャインとギターの音が響き、バックミュージックが加われば、戦闘のアドレナリンと合わさって最高にご機嫌な気分だった。


 しかしこれだけの戦力でもまだ足りない。


 数の暴力で後衛を狙う無粋な連中の対応には、こちらももっと数が必要である。


「先輩! 手を貸してください! 亀は水の属性、雷か植物系が良く効きます!」


「あいよ! 任された!」


 浦島先輩のテイマーのスキルで連続召喚されたモンスターは、守りを抜け出た亀を押しとどめた。


 現れたのはアルラウネと呼ばれる植物系モンスターの群れである。


 頭に花を咲かせた女性の姿をしたモンスターは亀との相性は抜群だ。


 根を張り、ビュンビュン伸ばされる蔦は亀を絡めとって、その水分を吸いつくしていた。


 やっぱり相性って大事だ。レベル的には劣っているはずだが数もそろうと敵の勢いが明らかに衰えていた。


 これで撃ち漏らしはなし。わざわざウォークライを使ってヘイトを稼ぐ必要もない。


 余裕をもって完全に守られた我がパーティのメインアタッカーは演奏しながらすでに存分に魔力を練り終えている。


 僕はその瞬間、叫んだ。


「レイナさん! チャージが終わり次第全力で地面に一撃!」


「ハッハー! タイミングバッチリです! ……んん? 地面?」


「そう! 地面!」


「なんだかわからないけど了解です!」


 貯めに貯めた一撃をレイナさんは空中からサウンドに乗せて地面に放った。


 特大の閃光が地面に叩き込まれると雷光が暴れ、地面そのものを砕いて、一際大きな断末魔の叫びがこの階層全体を震わせる。


「「「「「!!」」」」」


 大地震の後水柱が遠くでそびえ立ち、地面は動かなくなった。


 これにて巨大モンスター、島亀討伐完了だった。


「ひゅー! よし!」


「うお! これ島じゃなかったんでござるか!?」


 桃山君の驚きの声を、僕は頷いて肯定した。


「そうだよー。でっかいウミガメみたいなやつ。ちなみに最初のウミヘビは、こいつの尻尾だね。放っておくと滝みたいに海水を叩きつけてくるから、早めに仕留めないといけない」


「うわ! いいなぁ島よりでかいウミガメかぁ! いつかテイムしたいなぁ!」


「できないことはないですよ? 先輩なら」


「マジでか!? どうしようかなぁ!」


 浦島先輩はテイム欲が凄いことになっているのは知っていたが、状況に応じたモンスターをチョイスできるまでとは正直驚きだった。


 そして何よりこの超重量級のモンスターを一撃で沈めてしまったレイナさんの魔法は、さぼっていたどころかむしろ磨きがかかっている。


 思い切り大魔法をぶっ放したレイナさんは爽快に笑い、演奏を締めくくると、僕に向かって手を振っていた。


「サイッコーですね! やっぱり魔法はでっかい奴に全力で叩きつけるに限ります!」


「いやぁ、お見事。っていうか威力上がったよね?」


「えっへっへーでしょう? 何だかコツ掴んじゃったみたいですよね!」


 ネクロマンサーとしての特性を存分に使いこなしているという事なのだろう。


 本来なら一撃では仕留められないだろうから、追撃予定だったのだが予想以上の高火力には脱帽だった。


「なるほど……なんか初めて正統派の連携を見た感じするな、君達の」


 龍宮院先生がはぁーと感心した風に呟いていたが、僕もそう思う。


 自分達のことながら、ここまでしっかりとチームが機能できるとは驚きだったけど、頭の中の攻略君は当然だと囁いた。


『君らは最初から、パーティとしてお互いを補うビルドをしていただろう? これこそが知の力というものだ。知っているからこそ、君達は補い合える』


 それは確かに。


 ここまで計画的にチームとして力を求めたダンジョン探索者はたぶんいないとは思う。


 砕けた大亀の甲羅の真ん中に、下に降りるゲートが現れる。


 どうなる事かと少し心配はあったが、不安を払拭するのにこの小手調べは十分以上の意味があった。


 これなら問題なく先に進めるだろう。


 僕は撤退の選択肢を捨てて、目標まで突き進むことを心に決めた。

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― 新着の感想 ―
またへんてこな攻略をするのかと思ってましたが真っ当な攻略でしたね。面白かったです。応援してます。
龍宮院先生の婚期が遠のいていく気配がする…理想のショタ侍らせてたら現実の男とかいらなくなりそう
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