第233話パワーアップを語ろう
「い、いや、ゴメン……クックックッ……インパクトがっ……!」
「アハハハハ! 最高じゃないですか! でもそれ何なんです? 新しいシールですか?」
「いやー自分でも変身後見て爆笑しましたよね。こいつはですね、ロード化っていって、聖騎士の裏スキルですねー」
僕も朗らかに笑いながら、さらっと説明するとピタリと爆笑が止まった。
浦島先輩とレイナさんはギョッとした顔で僕を見ていて、恐る恐る訊ねてきた。
「……え? 聖騎士の裏スキルって超化でしょ?」
「……幻影の類ではないと?」
「ああうん。天使っぽい部分はオーラに近いものだから、幻影っちゃ幻影なんだろうけど、時間制限付きのパワーアップだよ。ちょっと変わり種だけどね」
「変わり種のパワーアップかぁ。聖騎士ならすごい固くなる感じ?」
「使役している天使系モンスターの数に応じて、パラメーター上昇が変動する……元気を分けてもらう感じですかね?」
それゆえ天使系モンスターを使役すればするほどに強力な力を振るうことができる。
僕がこのスキルを使う間、天使達自体の力は一時的に下がってしまうし、テイムモンスターがまるでいない状態だと他のブースト系の裏スキルに比べて、明らかに劣った性能しかない。
だが今の僕の状態まで持っていければローリスクかつ、でたらめなバフを実現できるわけだ。
ここに本当の意味で攻略君一押しスタイルは成ったと言う事なのだろう。
「……んん? てことは……今、天使系何体いるんですか? ヴァルキリーは天使に含まれますか?」
「含まれるみたいだよ?」
「てことは……ワタヌキ君今、めっちゃ強くない?」
「一時的にですけどねー。反動キツイから積極的には使いたくはないですけど。空も飛べますよ?」
「空まで!? ワタシの領域が!?」
「いやぁちゃんと空でも前衛頑張るから……」
ちなみに翼は着脱可能である。
僕としては基本的に翼は引っ込める方針だけど、空中戦が必要なら使うのもいいだろう。
ただ浦島先輩はなるほどと頷きつつも肩をすくめ、レイナさんは頭を抱えてなんてこったと嘆いているのだから、不満があるのは明らかである。
「それってあれだよね? こないだ龍宮院先生と一緒に行ってた天使集めの成果?」
「そうですよ?」
「おーあっさり肯定しちゃう? レイナさん? 二人きりでパワーアップイベントですって」
「これは決定的ですね……ワタシ達ハブられました。黄金の鎧をプレゼントしたとも聞きます。先生優遇が過ぎるのでは?」
「い、いや。そんな。都合が合わなかっただけじゃないですか……」
「えぇ? そうかなぁ?」
にやにや笑う浦島先輩は確実に面白がっているなぁ。
レイナさんも面白がってはいるけれど、ダンジョンアタックが満足にできていないことにフラストレーションを感じているのも本当の様だ。
どうしたものかと思うけど、何言っても意味がない気もする。
困っていたそんな時、ちょうど頼み事をしていた桃山君が用事を済ませて帰って来た。
桃山君は、僕らを見つけると何をやっているんだと首を傾げた。
「どうしたんでござる? お店の前でみんなして?」
「聞いてよ! 桃山後輩! ワタヌキ後輩またこっそりパワーアップしたんだって!」
「そうなんです! 水臭いですよね!」
「えー……そんなの当り前じゃないでござるか? 特訓なんて隠れてこっそりやるもんでござろう? ペラペラしゃべる方がおかしいんでござるよ」
「「……確かに」」
桃山君の特訓論は一定の説得力があったらしく、二人は妙に納得して頷いていた。
そして桃山君は浦島先輩とレイナさんを見て、不思議そうに首をかしげていた。
「というか……拙者も結構パワーアップしてるんでござるが……二人は何もなかったんでござるか?」
純粋に疑問に思ったらしい桃山氏が質問すると、二人がうぐっと唸り、ちょっと恨みがましい視線がこちらにチラリと来たので目を逸らす。
みんな忙しかったじゃないですか? でもその割には強くは確実になってると思いますよ?
ただ強くなることについて、ここ最近二人は積極性に欠けていたことは自覚していたようだった。
「まぁーいや、イベントの準備とかあったからねぇ。モンスターの頭数は充実したけど……」
「そうですね……忙しかったですし……無念です。休みの間いろいろしていたはずなんですが……」
「……そうだね。後は龍宮院先生用のコスプレ衣装を考えたりとかくらいかなぁ」
「そうですね……アレは楽しかったです」
だけど最後の話は僕も知らない。
「!!!そっちこそ! 黙っているのは水臭いんじゃないでござるぅ!?」
そして過剰に食いついた桃山君に、アッしまったと笑う浦島先輩とレイナさんだった。
「いやぁ、一時の雑談が盛り上がっちゃって。際どいアニメ衣裳は着てくれないじゃない? 龍宮院先生。スタイルいいのにもったいない」
「そうなんです……だからもう勝手に物を作ってしまおうかと」
「大丈夫それ?」
「……何作ったんでござるか?」
不満そうな桃山君にニシシと笑いかけ、浦島先輩とレイナさんは話し合いの結果を披露した。
「ロングコートだよ」
「しかも防弾のやつです」
「ほぉ……」
「あーなるほど……羽織ればいいでござるからね」
これは羽織るだけでコスプレ感が出るいいチョイスなんじゃないだろうか?
探偵が着ていそうなトレンチコートかな?
それとも、まさか裏切者が着ていそうな暁が映えそうなやつ?
コートというのも実に夢の広がるアイテムだった。
「先生格闘家だからさ。私としてはお尻が見えちゃう系のレオタードとか、一押しだったんだけどねぇ」
「しかしワンチャン普段使いできるこの路線ならいけるはずです! 高性能な仕上げを期待します!」
この二人、人にやいのやいのいう割にやることはやってるね。
まったく素晴らしい趣味である。
「で、ここから桃山君にダンジョン仕様に仕上げてもらおうかなって」
「わざわざ海外でオーダーメイドですよ?」
「あ、それはガチのやつでござるな。正解でござる」
桃山君はちょっと悔しそうだけど、判断の正しさを認めた。
高品質になればなるだけ、スキルでは再現できない領域というものが存在する。
工業製品の精度もだが、職人技の細部への気配りはどうしても作りが甘くなりがちな筆頭だった。
女子二人の先生改造計画は魅力的である。
楽しい話だがその前にいったん今進行中の僕らの計画も確認しておかなければならない。
僕は頼んでいた物がしっかり受け取れたのか、桃山君に確認することにした。
「ちなみに桃山君の方は、東雲さんと無事会えた?」
「バッチリでござるよ」
そう言って、取り出したのは新品の銃だ。
それもリボルバータイプで、またちょっと時代が進んでる。
あまりにも突貫工事のはずだが、しかし銃に一切のゆがみはなく、僕にはどこかの商品と言われても納得できるものにまで仕上がっているように見えた。
しかしこの世の中にまだあり得ないものを見て、初見の二人は更にギョッとしていた。
「「銃!?」」
「そうでござるよー」
「あっはっはっ。厳密に言うと杖らしいんですけどねー」
声をそろえる仲のいい女子達は、本当にいいリアクションをしてくれるものだった。




