第228話東雲式魔法杖
「これはすごいな!」
「うん……これはどこからどう見ても……」
その武器は、とある町工場で産声を上げた。
親子二人での合作ということになるであろうそれは、科学と魔法が混じり合うことで生れ出た。
元々あった数々のアイディアと、新たにもたらされたダンジョンアイテムの精製技術を駆使して作られたそれは、形だけ整えられた試作品のようなもの。
しかしそれでも、今まで存在しなかったそれに、二人は大きな可能性を感じていた。
「「銃だ―――」」
声を揃えて完成品をそう呼ぶ。
東雲親子は目を輝かせてその瞬間を喜び合った。
「先生! 見てください!」
「……!」
是非見て欲しいものが出来上がったと、東雲さんから電話があって急遽部室で会う約束をし、見せられたものに僕は驚愕した。
新しい刀かな? なんて軽い気持ちでやって来た僕に披露されたのは木製のグリップにきっちり金属製の銃身の付いた、一般的に言うところの銃と呼ばれる武器に酷似していた。
「なんか海賊が使いそうな武器キタ!」
「はい! フリント式の銃を参考に作った、銃型魔法杖東雲式タイプ01です!」
どうだ!と披露する東雲さんの態度からもそれがただの銃ではないことが分かる。
ただしかし、東雲さんがそれを魔法杖と形容したのは純粋に気になった。
「……ん? 魔法杖? 杖なのこれ?」
「いやー……理屈で言うとそうなんですよねぇ」
アハハと笑い、銃を持ち上げた東雲さんはギミックを実際に動かしながら説明を始めた。
「構造は単純です。魔力を溜めておくタンクとしての宝石に使用者が魔力を溜めておき、引き金を引くと術式が起動して魔力を解放。バレル部分の魔法文字が物理攻撃力に変換、射出します」
「……ほえー」
一般的に魔法の杖に該当するアイテムの構造と確かに似ている。
魔力を集中させる、もしくは溜めて置ける触媒に、増幅する魔法が掛かっていたりしてスキルの威力を底上げしてくれる魔法使い専用発掘品。
そんなもの全般を魔法杖と呼ぶわけだ。
「銃の形はしていても、だいたい仕組み的には杖と同じもんなんです。違うのは、現れる効果が銃弾なことですね。龍宮院先生のようなスキルがなくても、込めた魔力分の威力を持った魔力の弾丸が使えます。弾数に制限はないですけど、魔力が枯渇したら打ち止めです」
「実際に実弾は使用していないのか……よく効果を限定できたね?」
「教えてもらった魔法文字の中から使えそうなものを組み合わせてですね。苦労のかいあって、一応銃弾のようなものは確かに使えます………でも問題は」
「問題は?」
口ごもった東雲さんを促すと、東雲さんは意を決して懸念を口にした。
「この銃が……実際にモンスターにダメージを与えられる代物かどうかってことです」
「……なるほどなぁ」
それは的に当てただけでは計れまい。
試す方法は一つ、モンスター相手に使ってみるしかなかった。
「じゃあ、少し見せてもらっていい?」
「ええもちろん!」
緊張している東雲さんから新型の銃を受け取ってまじまじと見つつ、僕は攻略君にも意見を求めてみる。
そしてそれがきっちりと形になっていることを確認して、うんと頷いた。
「いいね。じゃあ少し試してみようよ」
「は、はい! じゃあ今すぐ魔法が使える場所で試射を……」
「ああ待って」
「はい?」
腰を浮かせて今にも走り出しそうな東雲さんを僕はいったん止める。
使えると御墨付きももらえたのだし、行ってみたい場所もあった。
「いや、せっかくだから。もうダンジョンでやろうよ。最終的にはモンスター相手に試してみないといけないし。ちょうど僕も用事があったんだ」
「今からダンジョンに? それは願ったり叶ったりですけど……大丈夫だと思いますか?」
「それを確かめに行くんでしょう? あんまり人の目にさらしていいかわかんないから、特別な入り口の方から行こう」
「はい? いえ……行きましょう!」
これはまたダイヤル式転移装置の出番の予感。
東雲さんもこういう物騒なものを持ち込んだのなら、もう少し深みにはまってもらってもよさそうだった。




