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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第219話わずかな変化

「うーむ」


 確かに客は来ないね。


 僕は珍しく売店の売り場にて店内の改良に精を出しているわけだが、休みはいつもに輪をかけて暇と言うのは本当の様だ。


 ダンジョン学校で休暇の間にもダンジョンに潜る生徒はいる。


 ただおおよそは実家に帰る選択をする者が大半である。


 ゆえに生徒自体の数は減っていて、かつ普段から閑古鳥が鳴いているんだから、より活気がなくなるのは自明の理だった。


 ただ本日、松林君は実家に帰った……というわけではない。


 せっかく長期の休みなのでいままでの功績を讃えて精霊の名前を看破できる指輪を渡し、精霊階層で商品搬入を任せて見ることにしたわけだ。


 それを可能にしたのは、天使を仲間にした影響でもあった。


 天使を1パーティでも護衛につければ、精霊の階層くらいならば問題ない。


 とはいえ、心配がないわけではないし、不安だってある。


 今後天使達との付き合い方を模索しなければならないのは、僕とて同じことなのである。


 思ったよりも作業に手がつかなくて、僕はカウンターに突っ伏していた。


「……僕もついて行けばよかったかな?」


 ぼんやりと呟いてみたが、任せると決めた以上は天使達を信頼して頑張ってもらうしかなかった。


 うん、切り替えよう。


 しかしぼんやりはしていたが、僕も店番を楽しめていない訳でもなかった。


 ダンジョンの改装はちょっとずつであるが確実に進んでいた。


 順路は気が付いたらぐちゃぐちゃになってしまって失敗していたらしいが、攻略ヒントの掲示板なんかは設置成功してダンジョン内はちょっとだけテーマパーク感が増していた。


「皆頑張っているみたいだし、僕も頑張らないといけないな……」


 僕はまったりとした時間に未練はあったが、どうにか重い腰を上げて、他の階層にでも行こうとしていたのだが、人の気配を感じていったん思いとどまった。


「……お客さんかな?」


 それは願望から来た気のせいと言う事でもないっぽい。


 足音が徐々に近づき、僕の前に現れた人物はあまりなじみのないクラスメイトだった。


「……服部さん?」


「……」


 名前がすんなり出てきたのはミラクルだが、昔懐かしい某忍者アニメ視聴経験ありの僕としては印象的な名前であるからだろう。


 猫背で、大きなメガネとそばかすが印象的な彼女。


 とはいえ僕も服部さんについて見た目以上に、知っているわけでもない。


 常に気配が希薄で、話をしているところすら見たことがないのだから当然と言えば当然である。


 しかしだからこそ僕は、とても物静かな彼女に密かに近いものを感じていたわけである。


 ただ気になるのは長い前髪の奥から覗く彼女の瞳はお世辞にも穏やかなものとはいいがたい事だった。


「……」


 とはいえ彼女はお客さんである。


 僕はンッンッと喉の準備運動をしてから、若林君に倣うことにした。


「らっしゃいあせー」


「……ふざけていますか?」


「……いえ。すごく真面目に接客中です」

 

 ちょっと慣れないのでソプラノボイスになってしまった。次頑張ろう。


 天使達は大爆笑なわけだが、そんな笑い声の中ボソリと呟くような服部さんの声は妙に耳に残った。


「…………あの、少しお話があります……」


 しかしそんな風に切り出した服部さんは、せっかく来てもらったというのにタイミングの悪いことだった。


「すみません……松林君は今外出中でして。……何か御用がありましたら僕の方で伝えておきますが?」


 当然わざわざ用事というと、もはやこの店の店員として知名度がある松林君にだろうとそう予測したのだが、服部さんは首を横に振ってすっと人差し指で僕の顔を指し示す。


「違います……! わ、わたしは……あなたに用があって来ました」


「え? 僕?」


 なんだろう? あんまり話さないクラスの女の子に声を掛けられると、ドキドキしてしまうのだけれど?


 流石に身構えたら、その時頭の中の攻略君は僕にこう告げた。


『激しい怒りの反応アリ』


 おっと攻略君? もうちょっとくらい妄想に浸らせてくれてもよさそうなもんだけど、僕は中々適切な助言だと評価した。

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