第218話我が軍とかどうすんの?
天使の階層を管理することになっている以上、テイムモンスターは欲しい。確かにそうだ。
「……」
ヴァルキリー達は頑張っていた。
戻って来た時も心なしかちょっと楽しそうに? 罠にかかった天使をスコップでタコ殴りにしていた。
何だか気のせいか一部私怨も混じっていそうだと感じてしまったのは僕の心が汚れているからに違いない。
テイムに関しては僕のジョブも関係しているのか、成功率が高いのが気になる。
ひょっとするとヴァルキリー自身が天使属性であることも無関係ではないのかもしれない。
テイムしているモンスターが倒してもテイムできるという事実は驚きと言えば驚きだが、攻略君がやらせている時点で可能だろうとは思っていた。
結果として実に効率的に僕の軍勢は完全に仕上がってしまった。
「……えー君らが僕のテイムモンスターかな?」
「あい!」×たくさん
「……無駄にいい返事だ。確かに本物らしい」
「そりゃそうでしょ。翼の生えたちびっ子が天使じゃなかったら逆に驚きだよ」
「先生……そうは言いますけど。結構な違和感ですよ?」
まさかここまで同時にあの挨拶をコーラスで聴けるとは思わなかったよ本当。
そして渡したスコップをザクザクと地面に叩きつけ、高く掲げるヴァルキリー達。
更にチェスのコマのように役割に合わせて隊列を組む中位天使達。
そして最後に妙に存在感のある上位天使が三体。
下級天使は百超えが確定した時点で怖くなって数えるのをやめてしまった。
こう言っては何だが……なかなか個性豊かな仲間が揃ったものだった。
「……これで手勢も十分じゃないかな?」
何を思ってこの眺めを見ているのか、自分の口元を押さえて呟くように言った龍宮院先生の言葉に、僕は頷いた。
「ええホントに。ホントに……」
「あれ? なんか不本意?」
「そ、そんなことないですよ? ただ……順調すぎてビックリしてるだけです」
「自分でやったんだろうに」
「……いやー。ホントですよねー」
でもね先生? たとえ自分でやったことだとしても頭が混乱することってのはあるんです。
例えば人手が手に入るだけじゃなくって、裏技スキルまでまとめてゲットしてしまったりすると、攻略君が僕をまだまだ育成するつもりだと察せられてやべぇなって感じである。
ただしそれは僕と攻略君との話で、それとこれとは別の話だった。
今回手伝ってくれた龍宮院先生には、深々と頭を下げて感謝の念を伝えておいた。
「先生も今日はありがとうございました」
「あーまぁそれはいいんだ。で―――この子達をいくらか借りる事ってできるのかな?」
「……先生。本当に大丈夫ですよね? ウチの天使に変なことしません?」
「そんなことしないから! 君は人を何だと思ってるんだ! これでも一応今は教師だからね!? いや……癒されるんだよあの天使ちゃん。せっかくなら手を貸してもらいたいなと」
「……冗談ですよ」
「目を見て言ってみなさい?」
……冗談はともかく、その気持ちはよくわかった。 なんか癒されるよねこの天使。
「もちろん今回のお礼に最優先で天使達は貸出しますよ。何せ……たくさんいるので」
元よりそのつもりで集めたこともあって、GOサインを出す。
先生はまぁ普段は先生をしなければいけないので、僕ら学生ほど頻繁にダンジョンの中には潜れまい。
潜れたとしても生徒の指導が主になるから、別動隊は多い方がいいかもしれない。
僕が思ったより簡単に貸し出したのが意外だったのか、龍宮院先生は上機嫌でありがたいと僕の手をとって握手する。
「素晴らしい……話が分かる。手を貸せるところがあったら言って欲しい。私の方からも龍宮城の仲居さんを貸出すよ」
「……そのうち料理を振舞えるスペースには手を出そうと思ってるんでその時はぜひ」
「分かっているとも。じゃあ、私はこの辺で。ちょっと真面目に疲れちゃった」
「はい、本当にありがとうございました」
僕の言葉に応えて背中越しにひらひらと手を振る龍宮院先生は、本当に歩き方が疲れているのが見てとれる。
しかしかく言う僕もなんだかんだ色々と今日は疲れた。
「……ロードか。また一つパワーアップしてしまったかな」
『大きな飛躍だとも。テイムモンスターの力を借りる系の強化だからね。パラディンロードの誕生だ』
「何それかっこよ」
その呼び方のかっこよさだけで、なんだかちょっと元気になってしまったよ。
僕ってやつは、本当にちょろいやつだった。




