第213話数の暴力で全力でごまかす
「さて天使狩りの方法を説明します。一番の協力者は彼! インプ君はもう今回大活躍の未来しか見えません!」
「……ものすごい怯えているみたいに見えるけど」
カタカタ震えるインプ君が天使階層の聖なる気配に参ってしまうのはいつもの事である。
しかし―――彼は僕のテイムモンスターの中でも1位、2位を争うほどに優秀なイケモンスターだった。
「……その通りなんですが、彼は天使ホイホイとして最高の働きをした実績があります。舐めてはいけませんよ?」
「そ、そうなんだ」
レベルが低い時は、天使を誘導して体を張って退路を開いてくれた最高の存在である。
そして未だ消滅していないという事実が彼の有能な猛者っぷりをなにより証明していた。
彼さえいれば勝ち確定だと確信するからこそ、僕は安心して彼を実戦投入できるのだ。
そして準備が整ったらそろそろ今回全員連れて来たヴァルキリー達の初仕事を始める頃合いである。
「えーでは。天使型モンスターは厳密にいうと下位、中位、上位の三種類です」
「あれ? もっとバリエーション豊かじゃない?」
天使階層を探索したことのある龍宮院先生は首をかしげていたが、天使タイプのモンスターに見た目はあまり関係ないのは、僕もよく知るところだ。
ちなみに最初にテイムした天使はベースが下級の天使。
それでも相当の力を秘めているのだが、さらに上位の天使はより厄介なスキルを獲得している可能性が高く、敵対するには厄介なモンスターだった。
「彼らに見た目はあまり意味がありません。ちびっこい天使達だって元はマネキンみたいでしたし……他にも周囲の環境や、持っているスキルなんかの与えられた役割に最適化されます」
「役割りって、モンスターに?」
「そうです。まぁ、下位の天使複数テイムした感じ、ある程度傾向はあるみたいですけど。……下位はコミュニケーション能力が高いことは分かっていますから一番数が欲しいところですね。今回はヴァルキリーと数を合わせていく予定です」
「そんなに沢山か」
「だから手分けします。ヴァルキリー達を連れて来たのはそのためです」
実力が足りないのは分かったから、数を揃えて手堅くいく。
ヴァルキリー達のレベル上げにもなって一石二鳥である。
「じゃあ……私達は何を?」
「はい。更に今回は中位、上位の天使もテイムしていきます」
「……そんなに?」
「……そんなにですね」
ただ計画の全貌を披露すると龍宮院先生は心配そうな表情を浮かべていたけど、不安になるからやめておいてほしかった。
「いや、僕もちょっとやりすぎじゃないって思わなくもないですが……」
「そうなのか……ダイジョブそう?」
「む、無論。大丈夫ですとも」
だがもう頭では割り切っている。今更天使を狩るのに躊躇ったりはしないので。
僕とて天使達のいる階層を整備すると約束しちゃったんだから、最善は尽くすつもりだった。
「ではまず簡単なおとり罠から。インプ君とヴァルキリー達、頼んだよ? ハイこれ」
そして僕は連れてきていたヴァルキリー達に大きなスコップとサバゲー用の迷彩用ギリースーツを配り、空間魔法で大きめの穴を掘る。
そして穴に精霊水を満たして草を浮かべると、落とし穴を一つ作って見せた。
「よし。じゃあここに天使が飛び込んだら、全員で沈めるように。一体一体丁寧にね」
下級の天使は無尽蔵に寄って来るし、沈めれば倒せる。数をこなしていくにはちょうどいいだろう。
そしてインプ君を魔法の結界で包みこんで穴の真ん中に設置すれば、盤石なトラップは完成した。
「全員まんべんなくぶん殴るんだよ? じゃなきゃ経験値も熟練度もおいしくないからね? 事故で穴が壊れたら、スコップでしっかり補修すること」
そんなことを念入りにヴァルキリー達に言って聞かせているわけだが、暇だったのか龍宮院先生はそんな僕を見て、目を細めていた。
「指示がこれまでで最悪レベルで物騒だなぁ」
「でも安全なんですよ?」
なにせヴァルキリーより敵の方が圧倒的に強いのでね? 数と知恵でその差を埋めるのは、立派な勝つための工夫だと思う。
既定の人数が揃った暁には、少なくともヴァルキリー達は70階で戦えるようになっているに違いない。
いわばこれは通過しなければいけない試練とも言える。
というかヴァルキリーを戦闘要員と考えると70階くらいじゃ全然足りないので、僕にテイムされたが最後、もうちょっと頑張ってもらわねばならなかった。
「よし。じゃあここはヴァルキリーに任せて先に行きましょう。次は中位です」
「……そうだね」
ギリースーツに花をまぶして楽園に消えるヴァルキリー達の仕事は中々鮮やかである。
しかし今から池に飛び込む天使達を、迷彩お化けが寄ってたかってスコップで叩くという楽園にあるまじき地獄のような光景はあえて見る必要はあるまい。
そいつはちょっと前に自分でやっただけで十分だ。
ああ……背中から、ひどい警戒音が沢山聞こえる。
インプ君は今日も入れ食いのようで、僕は彼とヴァルキリー達の奮戦を心から祈っておいた。
それにあれだ、僕らは僕らでここからが本当に地獄だってことを僕はもうすでに知っているのである。




