第211話天使の家を作ろう
カフェのあるセーフエリアに戻って来た僕らは、離れた場所に浮島を設置してみることにした。
ひとまずその場に展開。
巨大質量が目の前の空間と入れ替わって出現し、ゴウッと風が吹くと浮島はゆっくりとだが確実に高度を上げてゆく。
「じゃあ整備して来ますね。ありがとうございました! 完成品にご期待ください!」
僕は心から感謝を込めて、部のみんなに頭を下げる。
そして今度は存分に喜んでもらうためにさっそく工事に取り掛かるべく浮島の上に転移した。
「ふぅ……」
でっかい物を移動させるのは中々魔力を使うが、外での長距離移動と疲労感は同じ程度か。
やはり空間魔法は便利である。
そしてまず天使達の生活空間を確保するために、僕は浮島の一部を切り取って、白い館と入れ替えた。
浮遊島に館を移設するだけの簡単改造だけど、まぁ本格的な改造はゆっくり時間をかけて進めていけばいいだろう。
それよりもとりあえず住めるようにする。これ大事なことである。
迅速に用意できたヴァルキリーと天使達の住まいにちょっとだけ満足感はあったが、しかし完全に満足するにはまだ早すぎる。
言ってしまえば現状なんて基礎が終わっただけに過ぎなかった。
「次の工程は……連れて来たヴァルキリー達を解放」
そして僕が口笛をピィと吹き鳴らすと、この階層に待機中の天使達も飛んで来た。
「うんうん。よく来た我が僕達よ……なんちゃって。いやぁ、増えたなぁ」
我がテイムモンスター達も中々数が増えて来て壮観である。
天使達は次々着地。これだけいれば労働力として十分期待できそうだった。
「よし! 整列! 今から君達には自分達の住処の整理をしてもらいます! 範囲はこの島の上限定! 白い屋敷を拠点に住みやすい環境を構築すること!」
「「「「「はいでち!」」」」
やたら元気のいい返事の後、天使達は散って行く。
そしてヴァルキリー達も白い館に向かって飛んでいくのを見送って、僕は思わすポツリと呟いていた。
「ふーむ。……やっぱり数を増やし過ぎたかな?」
ついそう口にすると攻略君は割とテンション高めに声を上げた。
『何を言っているんだい! まだまだ全然足りないくらいだろう? まず下級天使の数をもっと増やさないと! そしてもっと上級の天使をテイムして来るチャートを組み立てるよ!』
「ちょいちょいちょい? 待って? 最後の上級天使の件……それいる?」
『そりゃあ……いるだろう?』
「そ、そうかなぁ。いらなくない? さすがに?」
もうすでに結構な数モンスターを仲間にしてると思うのだが、構想から考えるとまだまだ人手不足だと攻略君は言った。
『何を言っているんだい? ここから一足飛ばしで攻略してきた階層をすべて整備するならどう考えても人手が足りないだろう? 皆頑張っているし、君もそう思っているんじゃないか?』
「確かに、それはそうなんだけど……まぁそうだなぁ」
さも当然と疑問符がついた声が返って来て、僕はそこで何か違和感があった。
いや、流石にテイム系の攻略をする時、妙に攻略君のテンションが高すぎるんじゃないだろうか?
そうは思ったのだが、攻略君の言う通り準備が整って来て、部の面々も盛り上がってきているところだ。
生徒会を含めた様々な人も巻き込んでいるし100階近い階層を強化、発展させるには迷っている時間もそうないと僕も納得した。
「……まぁいいか。ここまでやって片手落ちもないよね」
『その通りだとも。では―――天使狩りの時間だ!』
「わぁ字面が最悪だぁ」
言葉のチョイスって結構大事なんじゃない? 攻略君よ?
こういう言葉の端々には違和感を持っていきたかったが、正直僕は他にも細かい部分に無頓着過ぎたのだろう。
細部の細かいところこそが大事だってことは多いのに……自分のキャパシティを越えると途端におざなりになってしまうのは、我ながら忌むべき悪癖だと僕は後に思った。




