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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第203話お土産

 何度も聞くけど、本当に大丈夫?


『何を心配することが? アナウンスが響き渡るわけでもなし。変に疑われたくなければ堂々としておくのが一番だ』


 そんなものかな? まぁそんなもんなんだろう。


 僕らはそのまま何食わぬ顔で受付に行き。


 いやーぁ大変でしたわーって顔で手続きを済ませる。


 ただあまりにも特徴的な格好をして入ったからか、受付のお姉さんにはお面で顔を隠していてもばっちり覚えられていた。


「あら? ずいぶん長い時間ダンジョンに潜っていたんですね。どうでしたか?」


「いやぁ。ずいぶん新鮮な経験ができました。学校とは勝手が違うもんですね」


「そうでしょう? 深くまで潜った探索者の話では、戦乙女の館が存在していて、まるで北欧神話を彷彿とさせる、神秘的なダンジョンだと言われているんですよ」


 まぁ見れないだろうけどと言うような語り口だが、申し訳ない。


 その館はポッケに収納済みなんだ。


 そんなこと言えるわけないので、無難な笑顔で話に乗った。


「へ、へー。そうなんだー。僕も好きですよ戦乙女。ゲームによく出てきますよね?」


「ええ! ええ! そうなんです! でも出会いたいならちょっと今度来る時はキチンとした装備で来た方がいいかもしれませんね。ジャージではきつかったでしょう?」


「そうですねー頑張ります。ではまた、楽しかったです」


「ええ、では。頑張ってくださいねー」


 受付のお姉さんは快く僕ら三人を送り出した。つまりセーフである。


 攻略君の言葉は嘘ではなかったとしておこう。


 ちょっとだけ速足でダンジョンを抜け、人目のないところまでやって来た僕らはようやく三人して、人心地ついていた。


「ふぅ! いやーなんか言われたらどうしようって思ったけど……行けたね」


「普通に出られたでござるな」


「……いくら何でもザル過ぎだよ。レベル鑑定くらい出る時にした方がいいんじゃないか?」


「あれ、プライバシーに含まれちゃったから希望者しかやんないもんね」


 だがもしそれをやられていたら一撃でいろんなことがバレそうだけど、そうなっていないのは問題と言えば問題なのかもしれない。


「いや、ジャージとお面もいい仕事したに違いないよ。こんな装備じゃ観光が精々だと思ってもらえたに違いない」


「……そんなジャージで、最後まで踏破したんだけどな?」


「まぁそうだけれども」


 ハバキリ君が心底呆れた顔で言うけれども、君もその共犯であることを忘れてもらっては困るわけだよ。


 でもそれも今日のところは終了だった。


 今回のダンジョンアタックを振り返ってみると、ゲスト参加ありで無駄なく目的を達成できたのは、ハバキリ君の信頼のおかげでもあった。


 攻略君の提供する攻略の唯一にして致命的な欠点だ。


 信頼してもらえず僕らのカバーの限界を越えたら、まぁ僕らはどこかのタイミングで撤退していたはずである。


「いやぁ本当に付き合ってもらって感謝だね。どう? 何か参考になった?」


 一応まとめとしてそう振ってみると心底から複雑な顔のハバキリ君は体験版ファイアーボールヘッド教室に対して微妙な心境を語っていた。


「……それを言うのか? ……正直、かなり混乱している。それに参考にしていい物かもわからない」


「あらら……」


「そりゃそうでござるよ」


「だが、得難い経験を……させてもらったとも感じているから。その……ありがとう」


 照れながら言う本物のイケメンの感謝の言葉は、僕らの胸を強く打つ。


 こいつはすごい破壊力だ。


 なるほど……連絡先を交換しただけで殺気が飛んで来る理由もなんとなくわかろうと言うものだった。


 まぁ結局こちらの都合に終始つき合わせただけということは否定はしないけれども。


 守護者とも戦ったのだし、少しはレベルも上がったんじゃないだろうか?


 特に桃山君辺り精霊を使ったバトルスタイルなんかは、攻略情報としても重要なヒントがちりばめられていると思うし、まるで役に立たないということはないはずだと信じたい。


「……どういたしまして。じゃあハバキリ君はこの後どうする? 僕と桃山君は食事でもして宿に向かうけど何か食べる?」


 食事に誘ってはみたが、なんとなくすさまじく疲れた様子のハバキリ君の答えは容易に察せられた。


「……今日はもう帰るよ。なんだか……とても疲れたから」


 ですよね!


 ハバキリ君の言葉は心からのもののようだから、なるほどと頷く。


 そして―――僕には本日最高難易度にして、最も重要なミッションが残っていた。


「そう? じゃあ。せっかくだからはい! これ、お土産」


 僕はなるべく自然に、最後にうにょんと紙袋を取り出すとそれをハバキリ君に手渡した。


「こ、これは?」


 まだ何かあるのかとハバキリ君は身構えていたが、僕は大丈夫だよと笑った。


「ダンジョンのものとかじゃなくて、僕の私物だよ。おすすめの漫画とか。まぁせっかくサブカルチャーのお祭りに来ているんだから、少しくらい触れても罰は当たらないでしょう?」


「あ、ああ。ありがとう? でもどうしてこんなもの持ってるんだ?」


「何でも詰め込める便利なアイテム持ってたら適当に放り込んでおくでしょ? 移動時間に読めるし。まぁサブカルチャー研究部っぽい贈り物だよ。ああ、別に返さなくていいから。布教用、保存用、観賞用と用意してあるからね」


「えぇ? ……ああうん。わかった」


 絶対わかってない顔で、ハバキリ君は頷いていた。


「じゃあお疲れ様。気を付けてね?」


 そしてどこかふらふらした頼りない足取りで去って行くハバキリ君の後姿を僕はしばし眺めていた。


 桃山君も今回の大冒険に思いを馳せているようで、心地よい疲れから来る沈黙は少し長かったと思う。


 大冒険。まさしくそんな感じ……だったのだろう。


 あんまりモンスター自体見る事すらなかったけど、まだ見ぬダンジョンをこんなに深く堪能したのは、世界広しと言えど僕らくらいのものだと思う。


 ただ―――僕は一つだけ心に引っかかりを残していた。


 だから、ハバキリ君の後姿が見えなくなったのを確認して、僕は口を開いた。


「……ふぅ。さて桃山氏、僕は……今になって思うんだけどさ」


「何でござる?」


「たかが漫画の布教に……ここまでする必要、本当にあったと思う?」


「…………っ!」


 おおっと? 久しぶりに桃山君から、やべぇ奴だって視線を貰ってしまったぞ?


 ここまで来るのにずいぶん死力を尽くしてしまったものだった。


 でも僕だっていくら何でもと思うんだよ? 


 でも攻略君がね? ここまでしてようやく受け取ってくれる確率5割って言うんだもの。あんまりだよね?


 どんだけ僕の信用度が低いんだって思うんだけど、上げた覚えもないから非常に複雑な心境だった。


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― 新着の感想 ―
桃山氏の(こいつそのためだけに…!?)という顔が見える見える…
どんなに美味しいと知っていても、相手が自ら手に取ってくれないと食べてくれないんですよね…w
ハバキリ君の沼耐性の高さにビックリです!w
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