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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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202/229

第201話ダンジョンを攻略するということ

「あいつの属性は二重属性で、水と風! 遠吠えには衝撃と、怯みの効果あり! 低温注意! 噛みつき含めてすべての攻撃には氷の魔法が乗ってると思っていい! いわゆるフェンリル狼っぽいモンスターだ! あと―――」


 注意事項を叫び、僕は最後に付け加える。


「次は手を出さないから、存分にやってくれ」


「……了解でござる」


 スラリと刀を抜いた桃山君はもう50階層のボス、フェンリルしか見ていない。


 そしてガリッと地を蹴る音を置き去りにして、桃山君が飛び出すとソニックブームが吹き荒れた。


 桃山君の刀が閃き、フェンリルがギリギリで斬撃を避けたことに驚きながら、僕もすぐさま行動を開始した。


「よし、安全地帯作るからこっち来てハバキリ君!」


「て、手伝わないのか? 50階のボスだぞ!」


「前に不満そうな顔をしてたからね。ヤバそうなら手を貸す。相手も僕の想定した以上に強そうだし」


 前回の猿鬼の時は僕も慌てすぎてずいぶん野暮なことをしてしまった。


 考えてみれば、桃山君もこれから新しい相棒となるモンスターなら、自分で見極めたいと思って当然だった。


 一旦僕は周囲の床を魔法で切り取り、防壁として前面に設置して守りを固めた。 


 持っててよかった建築スキル。


 そこにヴァルキリーとハバキリ君を隠してシェルターとする。


 僕は自分で作った防壁の上に飛び乗ると、一歩引いた位置からじっくり戦いを観察した。


「……やっぱ想定より強いな。桃山君なら瞬殺できるかと思ってたけど」


 推奨レベル50であるのなら、本来レベル100以上の桃山君の敵ではない。


 だというのに、最初の斬撃はフェンリルの毛皮を削るに留まり、戦闘が継続しているだけでも驚きだった。


「ハハッ! いいでござるな! まぁワタヌキ氏の事でござるから、桃太郎モチーフの犬ってことでござろう! あまり弱いと不採用でござるよ!」


 ……まぁ、だいたいそういうことだとも?


 桃山君はまだまだやれるようだし、ここは信じて待ちである。


 フェンリルの前足が通り過ぎると、掠っていなくても爪の奇跡に氷の刃が現れて、桃山君に襲い掛かる。


 クロハナサクヤと桃山君が枝と刃でそのたびに砕いているが、うまく立ち回っているようで氷にばかりに気を取られるのはマズかった。


 長期戦になれば過剰な冷気は徐々に戦士の動きを悪くしていって、時間が経てば経つほどに不利になって行くだろう。


 この冷気は状態異常の呪いも含まれるが、さっきのスープで多少は無効化できるはずだった。


 ただフェンリルが桃山君に張り合っているのは気にかかる。


 地上戦が得意なようで巨体に似合わない俊敏な動きは、桃山君にもそう劣っているようには見えず、十分に拮抗しているようにさえ見えた。


「やっぱ強すぎるな……どういう事だ?」


 僕は目を細めて、いらだたしく腕を組むと攻略君は答えた。


『最終ボーナスってところだね。相応に強化されているのさ』


「最終か……じゃああのフェンリルを倒せば本当に……」


『そうとも、このダンジョンは完全攻略おめでとうだよ?』


「……完全攻略か」


 そう。そしてこの戦いの結果はダンジョンの完全攻略に繋がる。


 それはまだ人類が誰も到達していない偉業である。


 ただ気になるのは、僕の感覚で言うとそれが50階なんてずいぶんと早い階層で起っているという事だろう。


 どうにも実感が持てない僕の言葉はつい困惑が混じってしまった。


「何かの間違いなんじゃない?」


『それはあいつを倒せばわかることだね』


「ちなみに完全攻略したらダンジョンはどうなる?」


『別に何も変わらないさ。君達が報酬をもらって帰るだけ』


「そ、そっかー。それならいいんだけど」


 もしいきなり消えるとか言われたらどうしようかと思った。


 そんなことになっていたら、外はイベントどころじゃない大パニックになったことだろう。


 僕はすでにやらかしているという自覚はあったが、もうここまで来て引き下がる気はない。


「学校のダンジョンもいつか底にたどり着くのかな?」


 だがそんな疑問を僕は何の気なしに口にする。してしまう。


 すると攻略君は―――答えた。


『君達の学校の地下にあるダンジョンは”当たり”だ。……底なんて存在しないよ』


「……?」


『まぁ周回で稼ぎたいなら、こちらの方が当たりだろうけどね。何せダンジョンのクリア報酬はおいしい』


「……へー、なるほどねー」


 こいつは深堀しない方がいい奴だな! 


 まったく僕としたことが迂闊だった。


 フゥといったん息をついて深呼吸。


 今のは聞かなかったことにするのがいいやつだと判断して、僕は胸の中にしまっておくことを決めた。


 それに今一番注目すべきはダンジョンの秘密よりも、友人の勝負の行方である。


 ああ、そんなことを言っている間にも、戦闘が動きそうだ。


 僕は警戒の段階を引き上げて、アックスを構えた。


「……さぁどうなる?」


 桃山君の刃は確実にフェンリルを切り裂き、ダメージを与え続けている。


 数々の鍛錬を越えて必殺に近づきつつある桃山君の猛攻は、フェンリルの命に届く寸前に見えた。


 だが簡単にフェンリルも終わらないのは間違いない。


 フェンリルの魔力が異常に高まっているのを感じて、僕は叫んでいた。


「ハバキリ君! やばいのが来る! 防御忘れないで!」


「わ、分かった!」


 返事を聞いた僕はオーラを全開で防御に回し、防壁の前に立ちふさがると、フェンリルの動きに集中した。


「桃山君! 撤退推奨だけど判断は任せた!」


「……」


 そして頷く桃山君を確認して僕は魔法の防壁を追加で展開、前方の空間を断絶する。


 低レベル帯のハバキリ君を無理やり誘ったのだ、彼のダメージはその1メモリでも恥だと思えと、僕は自分を強く戒めた。


「フゥ……」


 精神を集中してその時を待っていると、遠吠えと共に爆発したフェンリルの魔力は涼やかな音を立ててフロア全体に広がり、瞬時に空間を凍てつかせていた。


 こちらまで冷気が届いたのは数秒後だったが、届いた瞬間にあらゆるものが白く凍結してゆく光景は悪い夢のようだった。


「……こりゃヤバい」


 桃山君は、これをどう防いだのか?


 最悪蘇生薬の出番かもしれないと身構えた視線の先に、凍り付いているのは見覚えのある巨大な猿だった。


「猿鬼!」


 しかし大猿は中身が消えて、氷像が砕け散る。


 破砕した氷を蹴散らして飛び出した刃は、力を使い果たしたフェンリルの喉笛を鮮やかに切り裂いた。


「……御免。隙だらけでござったもので」


 桃山君はヒュンと刀を振って血を払い、フェンリルは崩れゆく。


 これにて決着である。


 桃山氏かっけー。


 僕は思わずその手並みに拍手を送った。


 凍てついた白い息を吐いているが桃山君は健在。


 刀にフェンリルが吸収されると、守護者の完全消滅をもってダンジョンの攻略は成った。

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― 新着の感想 ―
学校ダンジョンが無限回廊は草w 序盤のダンジョンが最終コンテンツなんか…
ワタヌキ氏も熊をテイムしないと。
雉枠はファニックスかな
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