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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第199話極寒の階層

 極寒の銀世界には凍り付いた針葉樹が茂って森を形成していた。


 そこには夥しいほどのモンスターがいる……という話なのだが、躱して行けばいないも同然である。


 しかしモンスターがいなくても雪山の強行軍であることに変わりはない。


 更にはっきり言って今の僕らの装備はずいぶん舐めた装備であることに疑いはなかった。


「あ、オーロラだ」


「おおー。拙者初めて見たでござるよ」


「……思ったよりも寒くない。どうなっているんだ?」


 そしてこの緩さのせいか、ハバキリ君は不安そうだ。


 僕はヴァルキリーに抱きかかえられて飛んでいるハバキリ君に、安心させるように走りながら手を振って答えた。


「僕がスキルで守ってるから安心してよ。それと……そのインナーのおかげかな?」


「……このtシャツにもすごい効果が?」


「いやいやいや。冗談でござるよ? 万が一の気休めでござるからね?」


「……」


 白ランを脱ぐと面白い事になっていると思うけど、やらせた方にしてみたら言わぬが花という事もある。


 僕はごまかすように注意を促した。


「ま、まぁ、見ての通り危険な階層だから色んな手段を講じておくに越したことはないよ。この寒さは正直脅威だ」


 ただ本当にダンジョンの中では環境に適用する方法はかなり重要だと、こういう過酷なところに来るとすごく感じる。


 何の備えもなくツッコめばアッという間に凍結待ったなしというのは、正直実感するまでは想像しにくい環境の変化だと思えた。


 ハバキリ君は頷く。


「それはそうだ……普段なら間違いなくいったん撤退している。それに――――」


 遠くにはすごい足音を響かせて歩いている巨人の姿が見えたりしていて、ここにきて一気に大きさのスケールが上がっていた。


 レベルで勝っていても、あれだけデカいと僕でも恐怖を感じたくらいだった。


「……あんな巨大なモンスター、ボクは見たことがない」


「まったくだ。おっかないもんだね。巨人のモンスターとは戦いたくないよ」


 僕は頷いたけど、桃山君はしかしどこか楽しそうに声を弾ませていた。


「拙者は割と戦いたいでござるよ? 今なら、こいつでうなじを削り取ってやれそうでござる」


「実際やれちゃいそうなんだよなぁ……あ、でも桃山君まだ空中戦きつくない?」


「……そうなんでござるよねえ。ジャンプするしかないからさっきのヴァルキリー戦なんかはソロだと絶対苦戦してたはずでござるよ」


 飛んだり跳ねたり工夫してる桃山君だが、やはりジャンプという手段は動きが単調になりやすい。


 何かもうひとひねり飛行する相手に対する手段が欲しいところのようだった。


「まぁ僕らも勉強が必要ってことだね。こんなところはさっさと抜けるに限る。―――飛ばすよ?」


「同感でござるな」


「……!」


 しかし足としてヴァルキリーを仲間にできたのは本当に大正解だったかもしれない。


 ハバキリ君の速度が飛躍的に上昇したおかげで、踏破スピードは一気に増した。







 僕らはそのまま快調に階層を駆け抜けて、目標の50階層。つまりボス部屋の前に到着するといったん床に腰を下ろした。


 この階層は寒くない。


 いわゆる迷宮に近い石畳の空間で休むのにちょうどよい。


 僕らは各々体の氷を雑に払って、鼻水を啜り上げていた。


「はあ……さすがに冷えた。少し休息して。ボスに挑もうか」


「いいでござるね。実は途中で戦った蛇の肉を持って来てたんでござるが、これでも食べないでござるか?」


「階層の守護者? ……ってその蛇、石化とかするやつだから慎重に扱ってね?」


「うへぇ! 食べられないんでござるか?」


「大丈夫。食べられるよ。扱いに気を付ければ状態異常耐性のバフまで盛れるから、さっそくスープにでもしてみようか」


「いいでござるな!」


 ではさっそく準備しよう。


 桃山君がコンロでお湯を沸かしている間に僕は蛇の切り身をさばいて肉にしてゆく。


 とにかくまずはしっかり解呪。モンスターのでかい蛇だけに肉の厚みはとんでもなくて、食いでがありそうだ。


 うにょんと空間を歪ませて常備していた材料から追加するのは、ニンニクとコンソメ、そしてついでに春雨も入れてやろう。


 軽くガスコンロで火を入れて、下味をつける。


 そして更に、いくつかの薬草と混ぜてやると状態異常耐性が上がるらしいので、試してみるとしよう。


 下処理を終えた頃にはもうすでに湯は沸いていて、材料を投入。


 まぁ雑な料理だが、少なくとも体を温める効果はあるだろう。


「……」


「……」


「……」


 しばし、沸々とお湯の熱される音を聞く静かな時間が続いていた。


 そしてこの割かし穏やかな静寂の時間を破ったのは、ハバキリ君だった。


「その……ゴメン。ボクは君達を見くびっていた」


 突然のそんなセリフに僕らはそろってきょとんとして顔を上げた。

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