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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第16話僕の秘策

「具体的に言うと、まず一週間後の成果提出にはポーションを用意しようかなって思ってます」


 ポーションとは? 言うなれば魔法の傷薬である。


 その薬の即効性は他の追随を許さず、医療現場ではいつも品薄。


 人類に怪我がなくならない限り、需要の尽きないダンジョン産アイテム筆頭だった。


 そして怪我が多いダンジョン探索者には必須アイテムと言っていいこれは、学園に提出することで成果として認められる。


 だがこのポーション。ダンジョンに自由に出入り出来れば入手は簡単なことに思えるが、ポーションの獲得にはとても大きな問題があった。


 その問題を浦島先輩は知っているようだった。


「あーポーションかー。でもあれ11階から下しか出ないよ? 私はまだ10階攻略なんて出来てないし……というか卒業までに行けるのは一握りだって話だよ」


「ああ、ダイジョブです。僕行けるんで」


「え? またまた、見栄をはっちゃダメでしょ。一年でしょワタヌキ後輩」


「そうでござるよ。だいたい一年で10階層踏破なんてまだ聞いてないでござる」


 さらっと僕が秘密をバラすと、何言ってんだこいつと言う表情が返って来た。


 まぁ無理もないよね。それはそう。


 だって10階に待ち受けているのはあの鉄巨人だ。


 あいつは半端な実力の探索者なんてペチャリと捻り潰す超強力モンスターだと、直に見て良く知っていた。


 ほとんどの人間はこいつに阻まれ攻略をあきらめる、そう言われるほどの難関を突破出来るのは卒業まででも一握り、それこそ3割にも満たないと言われている。


「冗談でござるか? 拙者……まだ3階でござるし」


「冗談じゃないよ。とりあえずこれ……あるにはあるんだよね」


 そう言ってポーションをまず一つ差し出す。


 すると気持ちのいい驚き顔が僕のポーションに向けられた。


「もうあるんでござるか!?」


「どうやって……あ! 買ったのか。 高くなかった?」


「……取って来たんです。ダンジョンで。ちなみに自前です」


「「!」」


 そんなまたまたーみたいな顔しても、前言撤回しませんよ?


 しかしそんなに驚いてくれるなら、僕としても提供した甲斐があると言うものだった。


「まぁ頑張りまして」


 実力だと言い切りたいところだが、すべては効率のいいナビゲーターと努力の賜物である。


「とりあえずこれを10ダースくらい提出しとけば、今回は見逃してもらえると思うんですよね」


「それは……ポーションは貴重だから可能性はなくはないかも。でもいいの? 普通に売ったら結構稼げるよ?」


 浦島先輩の言う通り一般に流せば需要はいくらでもあるだろう。


 しかしだからこそ、このポーションを提出すれば多少の無茶は効くくらいの成果が期待出来ると思うわけだ。


「いいですよ。そのために集めるんですから。報酬だって出ないことはないでしょ?」


「まぁ多少はね」


 考えてみれば、結構学園もめちゃくちゃなことやってるなとは思う。


 しかし結局自分達で使うんだから、自給自足みたいなものなのかもしれない。


「で、一週間あれば今言った分くらいは何とかなります。でもそれで終わりじゃ次が来た時困るんで、先輩達にも協力して欲しいなって思うんです」


 あの生徒会先輩を見る限り、もうサブカル同好会は目をつけられている。


 このポーションを全員で集めることが出来たなら胸を張って同好会の成果だと主張も出来るだろう。


 そのための手順を僕はみんなに説明出来て、実行してくれさえすればこれは誰でも達成出来るはずだった。


「先輩と、桃山君……僕の言う通りにダンジョンで鍛えてもらうことって……出来ますか?」


 でも言葉にしてみると、正直無茶苦茶だとしか思えない世迷いごとになってしまった。


「鍛えるでござるか?」


「いやまぁそれは……うん」


「絶対損はさせませんから、まずはこの一週間……お願いします」


 疑われるのは当然だから、僕は頭を下げる。


 僕はこのポーション集めで少しだけでも信頼を得なければならなかった。




 その日、夜な夜な机に向かう僕に攻略君が語り掛けて来た。


『同好会の友達を巻き込むとは思い切ったね?』


「ホントに。やってしまったけど……後悔はしたくないな。それに部室は無くなって欲しくない。ホント……あそこがなくなるとか……無理」


 思わず暗い天井を見つめて呟く。


 僕は学校で唯一のオアシスを何としても死守したかった。


 この監獄のような学校生活でも、楽しいと思えるわずかばかりの場所なのだ。


『……どんだけ部室を愛してるのさ』


「そりゃ心から? 寮だと色々と……制限があるんだ」


 僕にも負けられない戦いがあった。


 そんな熱い思いを、攻略君にも汲み取って欲しいものだった。


「でも巻き込んだ以上は、攻略君にもフルで協力してもらいたいんだけど……」


 しかしそこは不可欠なので、念押ししておくと攻略君は上機嫌で任せろと請け負ってくれた。


『遠慮などいらないよ。私は君の権能だ』


「……相変わらずよくわからないけど。感謝するよ」


 最初の成果はほぼ勝ち確定だが、それで終わるつもりは毛頭ない。


 そう、信じてさえもらえれば……まぁそれが一番難しいわけだけれども。

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― 新着の感想 ―
サブカル同好会の活動報告としてはどうかとは思うけどね笑
提出といって学校が徴収するのはマズいのでわ 生徒と生徒会が合意してても、親と世間と警察と裁判所あたりが敵になるヤツ。 主に横領とかイジメあたりに該当しそう
ようやくあらすじに追いついたね!さぁここからだ!
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