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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第123話カフェがレベルアップした

 今現在セーフエリアでは、浦島先輩が僕特製ダンジョン素材による小屋建築セットを使って、小屋を建設中である。


 素材はすでに加工済み。パズルのように組み上げるだけで小屋が完成する構造はとても初心者に優しいはずだ。


 それでも地上では重機の類も必要かもしれないが、僕ら探索者のパワーをもってすれば本当にパズルも同然だった。


「よし完成! どうよこれでワタヌキ君! なかなかうまく出来たんじゃないかと……お? おお! 行けそうだよワタヌキ後輩! カーペンター!」


「おめでとうございます。それじゃ……次はこっちの番ですね」


 そして僕はと言えば、一つ一つ家電をダンジョン仕様に改造するという苦行を卒業すべく、重い腰を上げた。


 というのも、浦島先輩が工作系のサポートジョブに手を出すと言うので、これを機に僕の方でもカフェ全体を改造することにしたのである。


 浦島先輩が作った小屋に前もって作っていた機材を運び込み、コードを伸ばしてカフェにどんどん接続。


 そして僕は設備を順に動かしてゆく。


「発電機OK……変圧器OK……コンセントは施工済み。精霊式発電システムワット君……正常作動中。対精霊結界オールグリーン……いつでも行けますよ」


「もはや訳が分からんね。どんなスキル使ったのさ? 大工じゃ無理じゃない?」


「錬金術師やら、魔法付与師やら、魔工技師やら……色々ですかね?」


「おう……リアル資格取得みたいになってきてるなぁ。私も頑張ろう……だけど―――これでいけるんだね?」


「はい、行けます。これでカフェでも家電がコンセントで気軽に使えますよ」


「いやっほう!」


 歓声をあげる浦島先輩と同じように、僕もソワソワしてきた。


 サブカル部にも近代化の波がようやく届いたと言ったところか。


 昭和……くらいにまでは辿り着いたかな? なんにしてもこれでまた一つ、我々はダンジョン内部にてサブカルチャーを研究してしまえるという事実はとても革新的だった。


「すごい進歩だ。レトロゲームなら今でも全然やれるよね?」


 浦島先輩もワクワク目を輝かせていたが、当然だと言わせていただこう。


「それどころか。カフェでスマホの充電位まで出来るようになりましたよ。電話は無理ですけど」


「流石にそこまではか……でも近い将来ワタヌキ後輩ならやってくれそうな気がするよ」


「あんまり期待されても困りますけど……我々の活動に、ネットワークは切っても切れませんもんね」


「だよなぁ……スマホも更新出来なきゃログインボーナスも途切れちゃう。……まぁちょうどいいけどね。私はずぼらな人間だからさ、完璧だといよいよダンジョンから出なくなっちまうよ」


「それはまぁ……授業がなかったら、僕もずっとダンジョンに入り浸ってる気がしますよ」


「ここでネット使えたら最高ではあるけどね。ほら見て見なさい。ネットに繋がってなくても、大人はこの利便性に気がついてる」


 僕らが小屋からカフェに戻って入り口を開けると、そこには優雅に食事を楽しむ先約がいた。


 クロワッサン片手に、ラテアートの施されたカップを堪能している龍宮院先生は、こちらに気がついて手を振っていた。


「順応しておられる」


「もはや一番使いこなしているまである」


「お疲れ様。本当に電気を使えるようにできたのかい?」


 脚を組み、あまりにも優雅にふるまうその姿は絵になりすぎて、カフェのオーナーのようだった。


 そしてこちらの作業はもちろん完了していた。


「終わりましたよ。机にコンセントついてますから、試してみてくださいよ」


「……仕事が早いなぁ。そういうスキルまであるんだったか。……個人の研究だろ? それをまとめて発表するだけで大学からお呼びがかかりそうだ」


 ぶつぶつ何か言いながら、龍宮院先生がコンセントに充電器を差して、スマホを突っ込んでみると、普通に充電が始まったらしい。


 実験は成功である。


「……本当に充電できてるぅ」


「よし! よかったぁ……大変だったんですよ本当に!」


「……だろうね。まずここまで便利にしようって発想が出てこないよ」


 あきれ顔の龍宮院先生に、浦島先輩は少し意地の悪い笑みを浮かべて言った。


「そう言いますけど。先生だって完璧にカフェを使いこなしてるじゃないですか」


「そりゃあ……するでしょう。注文すればすべて出てくる魔法のカフェだよ? 最近は味も良くなって来たというか……まぁ私が豆を買ってきているんだけど、その上電気が使えるようになったってことは……音楽だって流せるって?」


「流せますよ。ああ、でもダウンロードは上でやってくださいね」


「ふむ……いっそレコードでも買ってこようかな?」


「ああ。それいいかも」


「じゃあ、それは私が買っておくよ。曲はまぁ最初だから、適当にチルいやつを選んでおくさ」


「そうですね。僕らに曲の好みを聞き始めたら……絞れませんし」


 その点は、万人受けするやつをチョイスしてもらいたい。


 たぶん僕がやったらアニメの主題歌メドレーとかになりかねない。


 僕らとて、オタクだからこそ好きなジャンルにこだわりがある。


 そんなところでやり合ったって、不毛の極みだった。


「確かに……誰かに合わせたら誰かに刺さらないのが音楽ってものだしね。まぁ聞きたい時はその時、ちょうどいい方法で聞けばいいよ」


 浦島先輩は頷く。


 龍宮院先生はそれを聞いて苦笑いしていた。


「いろいろ聞きたいって言うなら……いっそジュークボックスでも買ってくるかな? 興味はあったんだけど場所を取りすぎるから足踏みしちゃうやつ……ここでならそんなこと気にしなくていいだろう」


「いいんですか?」


「当然ありだろう。私の趣味で、私も使うんだから」


「ジュークボックスって何です?」


「私だって世代じゃないけど、レコードを選んで聞ける再生機? みたいな奴だね。しかし……導入したら、好みのレコードを聴きながらコーヒーを入れてくれるマイカフェなんて豪華すぎる。職場にあるなら有効に活用したい……というか戻りたくない」


 僕らにはわからない息苦しさが、職員室にもあるんだろう。


 今日だってバターの強烈に香るクロワッサンを持参している龍宮院先生だが、自分の机では匂いが強いだけの食べ物一つ食べるのにも気を使うに違いなかった。


 いけない。さっそく地上に帰れない懸念が表面化してきている、先生がいるよ。


 でもレコードはちょっと気になるので僕としては止めない方向で行こうと思う。


 さて僕らも電気を堪能してみるかとカフェに散ろうとした時だった。


 龍宮院先生は僕を呼び止めた。


「ああ。じゃあ。私も一つワタヌキ君に提案があるんだった」


「提案ですか?」


「そう。君、ちょっと私の個人レッスン受けてみる気はない?」


「「個人レッスン!?」」


 何それと僕と浦島先輩が同時に驚くと、龍宮院先生は軽く笑って僕の胸に指先を突き付ける。


「そうだよ。割と真面目な話、君、武術の経験ないだろう? だからこその今のビルドなんだろうけど……それが私としてはかなり危なっかしく感じてね。割と急務だなと思ってるんだよ」


「……」


 何やら龍宮院先生の言う個人レッスンは、結構僕にとって切実な課題の様だった。

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― 新着の感想 ―
確かにレベルやジョブスキルが増えてもPSは鍛えてませんでしたね。 いうて攻略君の案を実行するために無茶を重ねてますからそれなりに出来るでしょうが、野生的というか。 体系的に学べるのは願ったり叶ったりで…
今更だけどカメラくんだけで大学どころか世界的な企業、政府から声がかかる、というより下手すれば誘拐とか技術目当ての強行手段まで想定内になるんだが 本当に今更過ぎないか、というか危機感持たなきゃダメじゃな…
あれ?竜宮城でテレビゲームしてませんでしたっけ
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