勇者召喚
◇◇◇
俺の名前は『篠山太一』。どこにでもいる普通の高校一年生だ。
しかしその普通の高校生活は突然終わりを告げた。
その日の朝もいつものように寝坊して幼馴染の『水城ありさ』に怒られていた。
「もう!太一がなかなか来ないからこんな時間になっちゃったじゃない!」
ありさが叫ぶ。
「だからさっきから謝ってるじゃないか」
「ん。謝って済むなら警察はいらない」
友人の『要恵』が呟く。
「いやいや、ケイも遅れてきたじゃん」
そうケイにつっこむのは同じく友人の『鹿苑寺渚
』だった。
いつも俺たちはこの4人でつるむ事が多かった。
そしていつものように通学路を歩いている時だった。
突然足元が白く光りだす。
「わっ!なんだ!?」
それはまるで魔法陣のようだった。
「これはまさか異世界召喚?」
ケイがつぶやく。
「んなばかな!とりあえず逃げ・・・」
言い終わる前に視界は真っ白になった。
次第に光が落ち着き、目を開くとそこは見たこともない建物の中だった。
「おおっ!成功だ!」
目の前には知らない外国人がたくさんいた。
「ここは・・・?はっ!みんな!大丈夫か!?」
振り返ると3人とも無事だった。
「う、うん。私は大丈夫。太一、ここはどこ?」
「いや、俺もわからない」
「だから異世界召喚だって」
ケイが呟く。
すると渚も信じられないという表情で呟く。
「そんなまさか・・・」
そして外国人たちの一人が近づいてきた。
「よくぞいらっしゃいました、異世界の勇者様達。私はエルハンド王国宰相のザック・クリストでございます」
「異世界の勇者!?」
思わず叫んでしまう。
「はい、ここでは何ですので応接室にご案内いたします」
ザックさんにそう言われ、俺たちは城?の中を移動し、応接室にやってきた。
「これが本物のお城・・・」
ケイが呟く。
そして俺たちは席に着いてメイドさんが入れてくれたお茶を飲む。
「ん、美味しい・・・」
昔飲んだことがある高級な紅茶の味がした。
すると、一人の男性が入ってきた。どうみても王様の格好だった。
「よくぞいらっしゃいました、異世界の勇者様よ。わしはこの国の国王、エリック・フォン・エルハンドである」
「「「国王様!?」」」
ケイ以外の俺たち3人は同時に席を離れ片膝をついた。
「そんなことはしなくてもよい、公式の場ではないのだから」
王様にそう言われ、俺たちは席に戻る。
ケイは何事もなかったかのようにお茶をすすっている。
そして王様は事情を話し始めた。
「実は我々人族と魔人族との戦争が近くてな。魔人族は我々人族とは比べ物にならないほどの魔力を持っており強力な魔法を使うのだ。このまま戦争になれば人族は確実に滅ぼされてしまう。そこで我が国に古くから伝わっている勇者召喚の魔法を使い強力な力をもつ異世界の勇者様、つまりそなたらを召喚したのだ」
「俺たちただの高校生、学生ですよ!?俺たちにほんとにそんなチカラが・・・?」
「そうよ!私達ただの子どもだし」
「もうお母さんに会えないの・・・?」
「ん、メイドさん、お茶おかわりいい?」
なんか一人だけおかしい呟きがあったような。
「とりあえず自分のステータスを確認してみてほしい。ステータスを念じながら『ステータスオープン』と言えば見れる」
王様が言うとおりに叫んでみる。
「「「「ステータスオープン!」」」」
すると目の前に半透明の画面が現れた。
名前 タイチ・シノヤマ
レベル1
体力 300
魔力 400
称号 勇者 異世界より召喚されし者
スキル 鑑定 限界突破 聖剣技Lv1
「わ、ほんとに出た!ね、太一のも見せて?私のも見ていいから」
そう言われたのでありさのステータスを確認する。
名前 アリサ・ミズキ
レベル1
体力 200
魔力 300
称号 剣士 異世界より召喚されし者
スキル 鑑定 剣技Lv1
ありさは小さい頃から剣道をやっているため『剣士』はぴったりだと思った。
そしてお互いに全員のステータスを確認し合う。
名前 ケイ・カナメ
レベル1
体力 150
魔力 800
称号 魔法使い 異世界より召喚されし者
スキル 火属性魔法Lv1 水属性魔法Lv1 風属性魔法Lv1 土属性魔法Lv1
名前 ナギサ・ロクオンジ
レベル1
体力 180
魔力 1000
称号 聖女 異世界より召喚されし者
スキル 聖属性魔法Lv1
そしてさらに全員のステータスを王様とザックさんが確認する。
「おおっ!レベル1で全員3ケタとは!さらにナギサ殿にいたっては4ケタだと!」
どうやら本当に俺達のステータスはこの世界の人と比べて優れているようだった。
「それで、魔人族を倒したら俺達は元の世界に帰れるんですか?」
「もちろんじゃ。戦争に勝った暁には思うのままの褒美を与え、送り返すと約束しよう」
「それなら・・・。なあ、みんな。俺はこの人達に力を貸そうと思う。困ってる人たちは見過ごせないし、俺達と同じ人族が殺されるのも嫌だし」
「まあ、太一ならそう言うと思った。いいよ、あたしも太一についていくよ」
「うぅ、私はすぐにでも家に帰りたいけど・・・ありさちゃんがそう言うなら・・・」
「ん。私はぜひとも魔法を極めてみたい」
とりあえず全員この国に力を貸すことが決まったのだった。