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エルフの国にやってきたけど大丈夫だよね?

本日もアクセスありがとうございます。

◇◇◇

 リガルを出た俺達勇者パーティはついに国境を越えエルフの国に入った。

すると遠くで何やら女の子の声が聴こえた。

そしてすぐに男の「待ちやがれ!」と声が聴こえた。

「今の声は?」

グリッドさんに訊ねる。

「おそらく帝国による奴隷狩りだろう。エルフは奴隷として高く取引されるからな」

「「「奴隷!?」」」

すると真っ先にありさが口を開いた。

「助けなきゃ!!」

するとグリッドさんが意外なことを口にする。

「それはできない」

「なんでですかグリッドさん!」

「うむむ・・・」

グリッドさんが悔しそうにうつむく。

「ここはもう王国じゃない。だから王国の法律は通用しない」

「だからって黙って見過ごすしかできないんですか!?」

「しかたないんだ。どこの国にも属していない冒険者ならともかく、我々とお前たちはエルハンド王国に属している。下手に手を出せば帝国との戦争に発展するかもしれん」

「そんな・・・」

グリッドさんはそう言うが俺はやっぱり見過ごすことはできなかった。

とりあえず俺は現場だけでも確認しようと声のする方へ走った。

グリッドさんからは「見に行ってもいいが絶対に関わるな」と釘を刺されている。

そして到着すると俺は木の陰から様子を見る。

「たく!手間かけさせやがって!」

「すぐに首輪をつけねぇから逃げられるんだろうが」

男二人が少女を捕まえていた。緑色の髪をツインテールにした10歳くらいのエルフの少女だ。

(どうにか奴隷を解放する方法はないだろうか)

俺は帝国の印が書いてある馬車に少女が乗せられるのを黙って見ているしかできなかった。

そして俺達はエルフの町『ウィード』にやってきた。

「うわ、ほんとにみんな耳が長いのね」

「これぞまさにエルフ」

町の中を耳が長く容姿端麗なエルフたちが行き交っている。

「とりあえずまずは宿の確保だな」

グリッドさんが言う。

この町唯一の宿屋に部屋をとり、さっそく俺達は食堂に向かった。

「米だ!」

「やっとお米が食べられるのね」

「うまうま、もぐもぐ」

「ちょっとケイ!何一人でさきに食べてるのよ」

出てきたメニューは焼き魚に味噌汁、小鉢、お米だった。

「まさかこの世界にも醤油と味噌があるとは・・・」

「このお醤油と味噌もエルフの国の特産品ですわ。コメコージとかいうものを使い作るそうですわね。わたくしもいただくのは初めてです」

まあ、お姫様に米や味噌汁みたいな庶民の料理はあまり似合わないけどな。

そしてみんなで食事をしていると、ふと隣の席の会話が聞こえてきた。

「まだ見つからないのか?」

「ああ、ギルドに捜索の依頼は出しているがまだ手ががりはない。一応リディアにも手紙で知らせてはいるが」

「心配だな・・・ミディアはまだ小さいから自分で遠くに行くとも考えられないしな」

少し気になる会話だったため俺は二人に話しかけてみた。

「あの、何かあったんですか?」

「ん?なんだ、人族の子か。いや、俺の娘が昨日から行方不明になっていてな」

「良かったら特徴とか教えてもらっても?」

「身長はこれぐらいで、髪は緑で普段は2つに結んでいる」

やはりそうだった。

「俺、その子を見たかもしれません!」

「なに!?詳しく教えてくれ!」

俺は森の中で目撃した一部始終を説明した。

「くそ!よりにもよって帝国とは・・・」

「早くしないとミディアは売られてしまう・・・」

二人がそう言って頭を抱えていたその時だった。

「ようやくやってまいりましたエルフの町ウィード!」

なんと店に入ってきた聞き覚えのある声の少女は同じクラスのクラスメイト『小鳥遊ひなた』さんだった。

◇◇◇

「ようやくやってまいりましたエルフの町ウィード!」

「ひなた、待てってば!」

私達はエルフの国に入り、ウィードの町へとやってきた。

そして待ちに待ったお米を食べるため食堂に入った。

すると意外な人物に遭遇した。

「小鳥遊さん!?」

「え?篠山くん!?」

クラスメイトの篠山太一くんだった。

とりあえず私達は焼き魚定食を食べながら話をすることにした。

「なるほど、勇者召喚か」

「そっちはそっちで大変そうだねぇ。私とお兄ちゃんは突然誰もいない平原に移動させられたけど」

「は?平原!?それでよく無事に生きてこられたね・・・魔物とかいたでしょ?」

ありささんが訊ねる。

「そうそう!来てそうそうゴブリンに出くわしたよ。あの時は魔石なんて知らなかったから跡形もなく焼き尽くしちゃって」

「「「焼き尽くした!?」」」

「ひなた、それは・・・て別にもう隠す必要もないか。実は俺とひなたは魔術協会日本支部に所属するれっきとした魔術師なんだ」

「まじゅふし!?」

最初に反応したのはさっきから無言で和食を堪能していたケイさんだった。

「ケイ汚い!食べながら叫ばないの!」

ケイさんを渚さんが叱る。

「うん。私達は魔術師協会の依頼で街に蔓延る不可思議な存在、悪霊や妖怪『怪異』を駆除する仕事をしてたの」

「なんと元の世界にもそんな楽しそうな存在が!ぜひとも魔術を見てみたい」

「別にいいよ。はい」

私は空になっていたケイさんのコップに魔術で水を注いだ。

「詠唱とかいらないんだな」

「詠唱?まあ、強力な魔術を行使する時は詠唱することもあるけどめったにしないよ」

「なんと羨ましい・・・」

ケイさんが呟く。

「ーーで、帰る方法を探すために冒険者をしながら旅をしているんだ」

お兄ちゃんがここまでの経緯を説明していた時だった。

「ユータ様!?」

突然店に入ってきてお兄ちゃんの名前を呼ぶ金髪縦ロール女。

「この匂い・・・王都でお兄ちゃんが助けたとかいう女の匂いだ」

「ひなた・・・目つきが怖いんだが」

「はい、わたくしはエレオノール・フォン・エルハンド、エルハンド王国第三王女ですわ」

「まさかとは思ったがやはり王族だったか」

「そうだ。今回ヒメ様は外交としてエルフの国へ参られたのだ」

一緒に入ってきた騎士さんが説明した。

すると突然カンカンカンと鐘の音が町中に鳴り響いた。

「何事だ!?」

お兄ちゃんが叫ぶ。

すると店に入ってきた男の人が叫ぶ。

「魔物の襲撃だ!みんな逃げろ!!」

「お兄ちゃん!」

「ああ!とりあえずギルドに行くぞ!」

すると篠山くんが口を開いた。

「待ってくれ!俺達も行く。グリッドさんはエレオノール様の護衛をお願いします!」

「ああ、分かった!だが気を付けろ!」

「私達なら大丈夫です!強くなりましたから!」

ありささんが言う。

そして私達と篠山くん達は冒険者ギルドに急いだ。

すると中は騒然としていた。

「みなさん!この依頼は強制ではありません!危ないと思ったらすぐに逃げてください!」

受付のお姉さんが叫んでいた。

お兄ちゃんが近くにいた冒険者に訊ねる。

「いったい何事だ?」

「スタンピートだよ!魔物の群れがこの町を目指して進行中らしい」

「数は?」

「偵察によるとおよそ5000匹だそうだ」

「「「5000!?」」」

篠山くん達が叫ぶ。

「おい、篠山」

「な、何ですか?」

「あんたら勇者パーティってことはそこそこ強いんだよな?」

「え?はい・・・多分?」

「だったらお前たちにはこの町を防衛する役割を任せる。せっかく米を求めてはるばるやってきたんだ。滅びてもらっては困る。俺とひなたで魔物は倒してくる。それでいいか、ひなた?」

「うん、もちろん!お兄ちゃんがいれば大丈夫だよね」

「分かりました。この町の人たちは俺達が必ず守ります!」

というわけで私達は魔物を倒すため森へと急いだ。

「探索!」

確認すると無数の魔物がこちらへやって来ていた。

「お兄ちゃん、どうしよう?」

「そうだな・・・ならまずは・・・」

お兄ちゃんの指示を受けて私は配置につく。

「こんな大規模な魔術使うのは初めてだけど・・・」

私は両手を天に向けて伸ばした。

「Freeze the whole world・・・Freeze everything with all my power・・・」

私は久しぶりに詠唱を始めた。

すると空に魔法陣が現れる。

極凍地獄ニブルヘイム!」

私の魔術により絶対零度になった上空の空気を魔物の群れめがけて一気に降ろす。

そして魔物たちは完全に瞬間冷凍された。

・・・はずだった。

凍りついた魔物の間から鬼のような魔物がこっちに向かって歩いてくる。

「ぐぐぐ・・・まさかこの数の魔物が全滅させられるとは・・・」

「ひなたの魔術を防いだだと!?」 

「楽に死ねると思うなよ、人間が」

すると一瞬のうちに鬼はお兄ちゃんの間合いに入ってきた。

「くっ!」

鬼の拳は間一髪で防御結界で防がれた。

「こいつ、強い!」

お兄ちゃんは後ろに飛びながら真空波を放つ。

しかし鉄をも切り裂く真空波は体表面を軽く傷つけただけだった。

「お兄ちゃん!このっ!」

私は鬼めがけて水球を飛ばす。

「はん!そんな魔法このオレサマには効かん」

鬼は水球を手で弾いた。

火属性では森ごと焼いてしまうから使えない。

「これなら!」

私は空中に岩の弾丸を形成するとそれを高速で回転させる。

「ストーンバレット!!」

弾丸は鬼の右腕に命中するがあまり効いていない様子。

「ちっ、鬱陶しい。まずは貴様からあの世へ送ってやろう」

すると鬼は私めがけて一気に近づく。

「ひなた!」

鬼の攻撃をまたもや間一髪でお兄ちゃんが防ぐ。

「おいおい、お前の相手は俺だろう?」

「ふん、まあいい。まとめて殺してやろう」

「お兄ちゃん、10秒だけ稼いで!」

「わかった!」

お兄ちゃんと鬼が鬩ぎ合う間に私は魔術を構築する。

「闇のブラックホール!」

重力魔術で作り出した簡易ブラックホールを鬼にぶつける。

「ぐあっ!な、なんだこれは!?」

鬼の左腕がブラックホールに吸い込まれる。

「ぐっ、こ、こんなもの!」

するとなんと鬼は自分で左腕を千切ると体が吸い込まれる前にブラックホールから逃げ出した。

「さて、お遊びはこれくらいにしてそろそろお終いにしようか」

お兄ちゃんがそう言いながら魔術を構築する。

そう、お兄ちゃんは全然本気じゃなかったのだ。

うん、知ってたけどね。

すると一振りの刀が出現する。

「こいつは妖刀、八十枉日太刀やそまがりのひのたちいくつもの悪霊妖怪を斬ってきた刀だ」

お兄ちゃんは抜刀術の構えを見せる。

「そんなものでこのオレサマがーー」

鬼が言いかけたその時だった。

一瞬でお兄ちゃんは鬼の背後に移動していた。

チャキン。

お兄ちゃんは刀を鞘に収めていた。

「高谷剣心流、そうの太刀」

鬼は縦に真っ二つになっていた。

「終わったね、お兄ちゃん」

「だな。しかしこいつは一体なんだったんだ?」

(しかし斬った手応えがいまいちだったんだよな・・・)

すると後ろから声が聴こえてきた。

「大丈夫ですかー!?ってうわ!なんだこりゃ」

冒険者の人だった。

私達は町に戻るとギルドマスターに説明した。

「ふむ、その鬼のような魔人族が魔物を操っていたということか」

鬼は魔人族だったみたい。

「というかたった二人で5000匹の魔物を倒しただと!?」

ギルドマスターが叫ぶ。

「正確にはひなたが一人でだけどな。俺は黒幕の魔人を倒しただけだ」

「いやいや、魔人を一人で倒すだけでもすごいことなんだぞ?」

そして篠山くん達が入ってきた。

「あの、結局俺達は何もしてないんだけど・・・」

「だね・・・。魔物は一匹も町まで来なかったし」

「ん。楽できてラッキー」

「いやまあそうだけどさ」

翌日、私とお兄ちゃんはギルドの応接室みたいなところに案内された。

「今回の功績で、君たちの冒険者ランクをAランクにあげておいた。あと、王都シュバルツから君たちにお呼びがかかっている」

「は?王都?なんで?俺達は別に王都に用事なんかないぞ」

「だよね。この町に来たのもお米を食べに来ただけだし」

「まあそう言うでない。王様が褒美をくれるというのだから」

まあせっかく褒美をくれるならもらうしかないよね。

「で、そのシュバルツへはどうやって行くんだ?乗り合い馬車か?」

「いや、わがエルフの国は都市間で転移魔法陣が設置してある」

転移魔法陣!?なんて便利なの!

そして私達はウィードの町の転移魔法陣から王都シュバルツへ旅立った。


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