盗賊に遭遇したけど大丈夫だよね?
「というわけでやってきました、アルカパの街!」
「だから何が『というわけで』なんだよ。このやり取りももう何回目だ・・・」
私達は乗り合い馬車に乗って隣町『アルカパ』に到着した。
まあ、途中色々あったんだけど。
ーー到着する少し前のこと。
突然馬車が止まった。
「えっ!?」
「なに!?」
戸惑う乗客。
「み、みなさん、と、盗賊です!」
するとすぐに盗賊の声が聴こえた。
「全員馬車を降りろ!」
言われた通り馬車を降りると、まわりを10人の盗賊が取り囲んでいた。
「金目のものを全部出しな。そうすりゃ命だけは助けてやる」
「おっ、何人か若い女がいるじゃねぇか。こりゃ後でお楽しみだな」
私はお兄ちゃんに話しかける。
「お兄ちゃん、こいつら殺していい?目つきがキモい・・・」
「こら!女の子がそんなこと言ったら駄目だろ!」
すると盗賊が一人近づいてきた。
「何をごちゃごちゃ言ってんだ、ああ?」
そして盗賊が私の腕を掴もうとしたその瞬間だった。
手首から先がさようならしたのだ。
「俺の大事な妹に汚い手で触れるな」
「ぐあ〜っ!お、俺の右手が!!」
痛みでのたまう盗賊。
「てめぇ、今何しやがった!」
「お前ら、やっちまえ!」
盗賊たちが剣を抜く。
「剣を抜いたな?つまり殺される覚悟があるというわけだ。俺も剣士の端くれだ、剣で相手しよう」
お兄ちゃんはそう言いながら武器屋で購入した金貨3枚の剣を構えた。
その構えはまるで抜刀術。
「高谷剣心流・・・凪の剣!安心しろ、峰打ちだ」
「お兄ちゃん、それ両刃の剣だから!峰はないよ!」
「おっとそうだった。安心しろ、峰打ちじゃないが手加減したから死にはしない」
すると全員が腹部を切られ倒れる。
これ、ほっといたらどのみち死んじゃうんじゃ?
とりあえず全員を縛り上げ死なない程度に回復魔術をかけておく。
『私達は盗賊です』と書いた紙を貼って出発した。
「それにしてあんちゃん強いんだな。まさか全員を一撃で倒しちまうなんて」
「あいつらが弱かっただけさ」
「お嬢ちゃんもまさか聖属性魔法が使えるなんて」
聖属性魔法?なんのこと?
「あの回復魔法、聖属性魔法だろ?」
ただの回復術式なんだけどね。
「そういえばよく出るのか?盗賊」
「あんなのがよく出てたまるかよ。めったに出ないよ。噂じゃ最近帝国の兵士くずれが盗賊に落ちてるらしいが」
「帝国ねぇ・・・こないだも聞いた単語だな」
そんなこんなで私達は無事にアルカパに到着したのだった。