モブ令嬢の舞台裏2
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「どう思うよ、兄さん」
行儀悪く机に足を上げたフリッツが尋ねた。
アルトは全くと呆れながらも小言を言うことなくフリッツの問いに返す。
「どうもこうも一目惚れという話だろう」
「馬鹿正直に信じられるかってんだよ」
フリッツはウィルヘルム様がレイに一目惚れという話を最初から信じていなかった。
むしろ、簡単に信じてしまっているというのが信じられない。
「そりゃ、俺たちにとっちゃ可愛い妹であるけど、平凡だぞ」
「クセがないとも言える」
人の好みを否定するつもりもないのだが、フリッツにはウィルヘルム様が平凡な妹に一目惚れをするとはどうしても思えなかった。
アルトもその理由を全て信じているわけでもないのだが、否定をできるほどではなかった。
「そもそもどこで見かけたんだって話」
「お披露目会じゃないのか」
アルトが言えば、フリッツが否定をする。
「いやいや、お披露目会は熱出して寝込んでるし、それ以降は出席もほぼしてないつーかゼロだろ」
「ああ、そうだったな。では、いつレイを見かけたというんだ?」
「いやだから、それを考えてんだろ」
いたって真面目な様子で素っ頓狂なことを言い出すアルトにフリッツは呆れながら突っ込む。
「普通に考えれば学校か」
「仮にそうだとして、レイがウィルヘルム様の視界に入ることがあると思うか?」
「ある、とは言い難いな」
アルトの言葉にだろとフリッツは同意をする。有象無象の一人であるレイを気にすることはウィルヘルムにはないはずだ。
それに人混みが苦手なレイは基本的に人が多い場所は避けて通る。
年頃の乙女が黄色い声を上げ一目見ようとする王子に関しても、興味よりそこに集まる集団を避ける方が大事というのがレイだ。
「伯爵家からの話だからと詮索はしないようにしていたが……」
「なーんか裏がありそうだよな」
「お前の勘は妙に当たるからなぁ。間違いであってほしいが」
そう言ってアルトは頭を抱えた。
全くなかったわけではない不安がここにきて膨らんでしまった。
両親には言ったところで真実の愛は一目見ただけでビビッとわかるものだと言われるのがオチなので伝える気もない。
「変なことに巻き込まれてなきゃいいけどなー」
「少し調べた方がいいかもしれん。心配になってきた」
「だな」
庶民に近い弱小貴族に大して調べる能力もないがそれでもとアルトが言い、フリッツもそれに同意をし、知り合いにあたってみるかと大きく伸びをした。
この家を支援すると言う話がウィルヘルムからあったようですが断ったみたいです。
主に母様が断ったのですが、その理由についてはそのうち。