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27 モブ令嬢、自覚する

お読みくださりありがとうございます!

「――と、いうことで一緒に来てもらえる?」


 そうウィルヘルム様に言われたのは、ローレンス様とフィール様の結婚式の日が世間に周知された前日のこと。


 お二人の結婚式に私はウィルヘルム様の婚約者として出席をしなければならないらしくて、そのための服を買うためにだそうです。


「必要なのは分かりますけど、すごくお金がかかりますよね?」


 この前のパーティーのドレスだって、私は金額を知らないけど高価なものだってくらいは分かる。

 我が家では到底手が届かないくらいの。


「気にしなくていいよ、必要経費だし」

「そうは言っても……。参加しないわけにはいかないんですか」


 だって、王太子と王太子妃の結婚式なわけだから色んな国の王族貴族も招かれるわけで、気軽なものじゃないのは確かだし。絶対場違い。


「無理だと思うよ」

「どうしてですか?」


 ウィルヘルム様は優しそうな笑みを浮かべて、理解の出来ない私に答えを口にします。


「一緒に参加しなくてもいいけど、その場合はフィール様が友人枠に呼ぶだろうね」

「ゆ、友人枠?」


 あ、違う。

 優しい笑みっていうか悪魔の笑みだ、これ。


 っていうかどっちしろ参加するしかないのか。運良く風邪でもひかない限りは。


「そ、どっちがいい?」

「諦めてウィルヘルム様と一緒に参加させて頂きます」


 知らない人いっぱいの中に放り込まれるなら、ウィルヘルム様といた方がいいよね。流れも全く分からないし。


 無駄な抵抗を諦め、私の出した答えに満足そうにウィルヘルム様は頷いて、次の休みの日に一緒に買いに行くことになりました。


 ☆☆☆


 ウィルヘルム様が家まで迎えに来てくださり、目的地まで馬車での移動です。


 馬車の中は2人きりというわけじゃなくて、この前のパーティーの際にもいたサリアさんも一緒です。なんとなくウィルヘルム様への視線が冷たいように感じるのは私の気のせいでしょう。


「え、仕立てるんですか?」

「もちろん。この前は時間がなかったから既製品買ったけど」


 当たり前のようにウィルヘルム様は言ってるけど、私の家とかだと正装はレンタルか古着が大抵でオーダーメイドなんて制服を作るときくらい。


「……贅沢だ」

「そうですね」


 私のつぶやきにサリアさんが相槌を打ってくれます。

 子爵家の出身のサリアさんにとってもオーダーメイドとなると贅沢なものだったみたい。


 諦めたとはいえ、そんな贅沢品を私1人のためにと思うとやっぱり参加自体を辞退したくなるんだけど……。


 そんな思いを抱えた私にウィルヘルム様は深刻そうな顔をして私に向き合います。


「実はこれフィール様にも頼まれたんだよね。レイにとびきり似合うものを着せてこいって」

「フィール様に?」

「そ、お願いっていうか命令」


 その時のことを思い出したのかウィルヘルム様は大きく息を吐き出しました。


「俺がやらないなら私がレイさんにドレスを贈りますって言い出してさ」

「た、大変だったんですね」


 そんな話があったとは知らなかった。

 いや、それよりもこれは確実に出席するしかない感じですよね。そこまで目をつけられてる理由に心当たりが全くないから困るけど。


 それにしても、お二人の結婚式が終わればこの関係も終わりなのかな?

 ふとそんなことを考えて、すぐに振り払った。だって、どう考えてもいるべき場所じゃないし、ウィルヘルム様は見張りをしてるだけなんだから。


 そうこうしている間に馬車はお店に着いて、仕立てるための採寸が始まりどんなドレスを仕立てるかの話し合いが始まります。


 私はほとんど蚊帳の外ですけどね。

 なにせ知らないことが多すぎて置いてけぼりですし、自分のことなんだけどやることはたまに聞かれる選択肢に答えることだけだ。


 ウィルヘルム様たちの話し合いを眺めていれば、いつの間にか話がまとまったようで気がつけばお店の人たちに笑顔で手を振られて馬車に乗り込みます。


 いい話し合いが出来たってことなのかな?

 どういうのが出来上がるのか私には分からないけど、プロの人の見立てならきっといいものが出来るんだろうな。


 すぐに家に帰るのかと思えば、疲れただろうからとひと休憩してから帰ることになってサリアさんがオススメだという小さなカフェでお茶を飲んでから家に帰りました。


「レイ、また学校で」

「はい、また学校で。ウィルヘルム様」


 小さく笑ったウィルヘルム様が馬車に乗り込んで扉を閉めると、馬車は走り出してそれが見えなくなってから家の中に入ります。


「お帰りなさい、レイ」

「ただいま、お母様」


 お母様が私の髪にそっと触れて、私が顔を上げるとお母様の心配そうな顔が目の前に。


「随分と浮かない顔をしてるけど、ウィルヘルム様と何かあったの?」

「何も……今日も良くしてもらって、私にはもったないほどに」

「そうだったの。どこかでまたお礼を言わないといけないわね」


 母様は手にしたお玉を顔の近くまで上げて少し考えた後、クスリと笑って言います。


「ふふ、もしかしてウィルヘルム様といる時間が終わって寂しくなった?」

「そんなわけじゃ、ないけど……」


 あぁ、そっか。

 私はウィルヘルム様とこの関係が終わるのが嫌なんだ。


 仲良くしすぎたらダメだって分かってたのに気がついたら居心地が良くなってて、引き返せないくらいになってやっと気づいた。


 バカだな、私は……。

フィールとウィルの会話にて。


「もちろんレイさんと出席してくれますよ

ね、ウィル」

「そのつもりではあるけど」


フィールの圧力にちょっとだけたじろぐウィル。


「ブーケはレイさんに受け取ってもらいたいの」


それからレイの家ではドレスが買えないよねと言う話になり、絶対に来て欲しいからウィルが仕立てないなら私が言い出すフィール。


「ちゃんと俺がやるので、落ち着いてください」

「ウィル、それなら会場の誰よりも輝くようなものに」

「いや、主役より目立つわけにはいきませんからね、フィール様」

「でしたらレイさんにとびきり似合うものを贈って下さいね」


レイの初パーティーの話も聞き楽しい思い出をと思う心と、ドレス姿のレイを見たいフィールです。

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