モブ令嬢の舞台裏3
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「つーわけで、頼んだぜ」
昼食どきにアポ無しでやってきて、一方的な約束を取り付けて帰ろうとする迷惑すぎる友人を男は疲れた顔で引き止めた。
気のおけない友人であり、その性格もよく分かっているからこそ無礼だのと言うこともないがそれにしてもである。
久しぶりに会ったと言うのに頼みごとだけしてさっさと帰ろうとしているのだ。
「お茶くらい飲んでいけ。それと詳細を教えろ」
こちらが忙しいのを理由に、ろくな説明もないままウィルヘルム様とその家について調べて欲しいとだけしか言わないのだ。
いくら友人の頼みとはいっても、それだけで調べてやるほど男は優しくもない。
男は近くにいた使用人にお茶と、ついでに軽食を用意するように伝える。この時間にやってきたのなら、昼食はまだだろうから。
「あー、うちの妹がウィルヘルム様と婚約したってのは耳に入ってるよな?」
リードは頷く。
よほど情報を遮断している者でない限りは興味のあるなしに関わらず一度は耳にする話題だ。
まして呆れてしまうほど友人が心配している妹となれば記憶には残る。知らない顔でもないのだし、なにより彼女は少しばかり普通でない。
「ああ。あのわりと突出したところのないお前の妹と非の打ち所がないと言われるウィルヘルム様が婚約したことならな」
「平均点なのは否定しづれぇが、なにか言いたいことがあるなら聞くぞ、リード」
他人が聞けばレイをバカにしたように聞こえたかもしれないが、フリッツにはそうでないことは分かっている。それにリードのレイの評価はただの平均点ではないとフリッツは知っている。
「トラブルに巻き込まれるのと運の強さは非凡だと思うぞ。一目惚れよりそこに目をつけられたと言われた方が説得力はあると思うが」
「お前に言われるまで俺も気がついてなかったけどってかそれこそ、どこで知るんだって話だろ」
「まあそうだな」
小さく笑ったリードは喉を潤わせると静かに口を開いた。
「しかし、あの家は元々王家の身代わりを務めていた歴史もあるらしいが、あくまでも噂の域をでないものではあるがな」
「んじゃ、何かに巻き込まれたとでも言うのか」
食ってかかるような言い方をするフリッツにリードはため息をついてフリッツを宥める。
「あくまで可能性の話だ。それに古い文献にもそう記されてるものじゃない。眉唾とでもいうべきものだぞ」
「だから、やっぱお前に任せるわ」
「字面だけならうちの方が上だが、実際は向こうの方が格上だ、期待はするなよ」
呆れた風にリードが言えば、フリッツは期待しているとでもいうようにリードに笑顔を見せる。
それから、用意された軽食をちゃっかりおかわりしてからフリッツは友人の家を後にした。
レイをリードの家に嫁がせるという話もあったようですが、手に負えないことを理由になしに。
フリッツも無理だろうとは思っていたようです。




