11 モブ令嬢、学校案内をする
お読みくださりありがとうございます!
「それは……」
やましいことは一切ないんですけどね。
聞き方一つでこっちもやましいことをしているみたいに錯覚しかけるのでやめてもらいたいです。全く、もう。
だけど、昨日の失態の連続からか少し怖いものでもなくなったわ。
「単に人気のない場所で落ち着きたいからです。学校にいると常に大勢の人に囲まれてますから」
ウィルヘルム様たちのようにゆったりと出来る場所でもあればいいんですが、下級貴族となるとそうもいかずです。
「そーいう……」
「それに人の多い場所では、この前のようなことになりかねませんから」
そう、人にぶつかってローレンス様の前に転んだりとか、気がついたらトラブルに巻き込まれたなんてことがあるから下手に近づけないんだ。
「なるほど。ローと会った場所以外は?」
「え、まだいくつかありますけど……」
逃げ場はいくつかないとね。
「時間のあるときに案内を頼んでも?」
「ウィルヘルム様の頼みとあれば断れませんから」
教えないわけにはいきませんが、ウィルヘルム様が来ることはないと思うのでまぁいいか。
それから昼食を食べてからまだ時間があったのでウィルヘルム様を私のベストスポットに案内をする。
いくつか案内をして最後に行ったのはローレンス様と出会った場所で、つい苛立ってしまう。フィール様って言う素晴らしい方がいるのにって。
「よくもまぁ、こんなに見つけられたもんだね」
「半分は兄さんから教わったものです。兄さんも校内を散歩するのが好きだったみたいで」
まあ兄さんの散歩は純粋な散歩ではなかったみたいだけど。
私が学校に入学するときに教えてくれたんだ。人に見つかりにくい便利な場所だって。
「それなら、フリッツ兄さんの方かな?」
「そうですけど、なんで……」
「昨日の感じでそうじゃないかと思った」
あの短いやり取りでよく分かるなぁ。
さすが万能って言われるだけあるのか。
ウィルヘルム様は辺りを見回し、私の話からローレンス様たちがいた位置を確かめてから周囲の確認をしています。
「なるほど、確かに人目にはつきにくい、か」
あのバカと言い切ったウィルヘルム様は頭をかいてため息をつかれました。
「君もとんだとばっちりだね」
「えぇと……はい、そう思います」
――じゃない!
これ認めたらローレンス様を責めてるみたいになるじゃない。もー、また失態を。
「正直だね」
「も、申し訳ありません。つい本心が――って、あぁもう」
喋れば喋るほど墓穴を掘ってるようなって、完全にそうだよ。
青ざめた顔でウィルヘルム様を見れば、ウィルヘルム様はおかしそうに笑っていたけれど、私は自分の発言を謝り倒すのでした。