9 モブ令嬢、友人に詰め寄られる
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ウィルヘルム様との放課後デート(正確には違う)の翌日。
教室に入るなり友人に捕まった。
昨日休んでいたミディが食いつき気味に聞いてくる。
ちょっと休ませて欲しいんだけど、教室に来るまでに大量の視線に晒されて精神的ダメージを食らい過ぎたんだ。
「昨日はウィルヘルム様とデートだったんでしょ、どうだったの?」
ミディの発言に周囲が聞き耳を立て始めたのが感じ取れた。(聞き耳を立てたのは主に令嬢である)
「え?あ、ああ昨日は……」
一瞬、そんなことあったっけと思って言葉が出なかった。
まさか本当のことをいうわけにもいかないし、そもそもそんなことしたら今度こそ消されかねない。
「きっとウィルヘルム様のことだから素敵なデートだったんでしょ。エスコートも完璧な」
言葉に詰まっているとミディが勝手な想像を膨らませて喋り始めた。
実にありがたいわ。
考える時間が出来るんだもの。
「そりゃあ、話したくもなくなるわよね。私たちじゃ後ろ盾もないし、別の方と婚約されたってなっても何も言えないものね」
昨日のウィルヘルム様の話を聞く限りは、そういうことはローレンス様が何かしでかさなきゃなさそうだけど。
この関係はいつまで続くのやら。
「それで、どうだったの?」
「……美味しいお茶の出るところだったとしか」
下手なこと言ってボロが出るのも怖いし、これくらいしか言えないんだけど納得してもらえるかどうか。
「それだけ?もっとあるでしょ、あんなに素敵な方なんだから」
ミディが詰め寄ってくる。ウィルヘルム様のファンだって言うし知りたいんだろうなぁ
だけど、昨日は殺されるかと思ってたし、そうじゃなくても緊張とやらかしでそれどころじゃなかったし。
でも本当のことは言えないから、こう言う時はウィルヘルム様を見習わなくちゃ。
「あのウィルヘルム様よ。緊張しすぎてどうしようもないわ」
「へー、レイでも緊張するのね」
失礼ね、ミディは。
私だって緊張はするわよ。相手は王家に近い家の方だし、命の危険があるんじゃないかって恐怖に囚われてたんだから。
「雲の上の方なんだからそうなるでしょ」
「えー、夢のような時間だって心に刻み込むものでしょう。一生の宝よ、たから」
ウィルヘルム様ファンのミディにはそうでしょうよ。
それにしてもミディよりウィルヘルム様のことを詳しくなる日の想像はつかないな。
それからまたミディにウィルヘルム様のことを尋ねられて、反対にミディからウィルヘルム様のことを教えられることになった。
今回はさすがに聞き流すのは少しにしてしっかりとミディの話を聞くことにしたけど、昨日のウィルヘルム様とどうにも印象が違うのよね。
ミディはウィルだけのファンというよりかは、箱推しといった感じです。ただし、バレットは除く。




