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3.女騎士の集い

イリス

————

 奥様がすぐの所にいて良かった……


 エミリアお嬢様の婚約者殿もすぐにこっちに気づいて下さったから、一応、2人に挨拶したし、余計な移動が無くって何よりだったけど。

 この腕が触れてるか触れてないかの微妙な距離感を保つのに神経使いすぎて、おめかししてるはずのお嬢様の姿が一切記憶に残ってない……


 奥様に付いていれば、こんな事にはならなかったのに。


 そういえば、このシスコンの婚約者(って呼び方は納得できてないけど)、それになるって事は奥様の女騎士はどうなるの? 私はあの家で何を楽しみに生きていけばいいの? コイツと仮面夫婦を一生しろと。そういうこと?


「やっと来たのかお前たち。エミリア達の所へ行って一緒に踊ってきなさい」


 あ、旦那様再登場。

 今なんかオカシなこと言いませんでした?

 おど、おどる?


 こんな腕すらまともに(さわ)れないのに、あんな事できる訳ないでしょ。

 もしやったら、あなたの大事なこのシスコンを葬り去ろうとする私の手を止めることなんて、出来ませんよ?


「あー、仕方ない一回だけ……」


 なんかアイツがボソボソ言い始めた時、


「イリス? イリスじゃね!?」


 なぜ私の名前がここで呼ばれる?

 そう思って振り返ると、赤毛のロングヘアを揺らして騎士服を着た女性がこちらに向かってやってきた。


姉御(あねご)? 姉御のロザニア?」


 彼女は騎士学校時代に同級生だった、成績もトップクラスで美人だけど、サバサバした性格でとっつきやすく皆から姉御と呼ばれていた。


 うわー、懐かしい! すっごい色っぽくなってる。


 確か彼女はテドロ公爵家の令嬢の女騎士としてスカウトされて、早々に就職先を決めていた。

 そんな大貴族ならこのパーティーにも招待されてる訳だ。


 私は自然とヤツの腕から自分の腕を解いて、彼女の方へ駆け寄った。


「ちょっと、どうしたのよその格好! もしかして騎士やめて、そこのイケメンと結婚したの?」


 やめろ! やめろ! でっかい声を出すな!


「もうちょっと声抑えてっ そんなんじゃないし……」


 小声で私が制しようとすると……


「みんなー! 来て来て! こんな所にイリスがいる!」


 ロザニアは斜め後ろに振り返って片手をあげると、その手を振り始めた。


 すると、わらわらと色んな騎士服を着た女の子たちがこちらに向かって集まってきた。


 あれはサルーシェ伯爵家の女騎士に雇われたウィーナ、あっちはコルバルト侯爵家の女騎士に入ったルイーゼに……

 みんな成績優秀ですぐに名門の家に雇われた同級生たちだ!


「イリスー! 学校にいた時と全然変わらないじゃん」


「その格好、可愛い〜」


 みんな楽しそうに声を掛けて来てくれる。

 まさか、ここでプチ同窓会ができるなんて想定外だったわ。

 だけど、なんかオカシくない?


「うわー、みんな久しぶりー! だけどご主人様から離れちゃって大丈夫なの……?」


 そんな私の疑問に、ロザニアが教えてくれた。


「いまは唯一、私たちがご主人から離れられる“ダンスタイム”。

 さすがに踊ってるところまで付いていく訳にはいかないから、この時間は女騎士仲間で集まって情報交換するのがお決まりになってるの」


 なるほどー! 私はエスニョーラ家の女騎士になったとはいえ、舞踏会に出席したこともない名ばかりの女騎士。ご主人をサポートするには、やっぱり横のつながりも重要よね。


「ロザニア、何をしている?」


 女子学生みたいにワイワイやってると、突然後ろからドスの効いたおっかない声がした。


 見てみると、ロザニアと同じ紋章が縫い込まれた騎士服を着た50代くらいの厳しそうな顔をした女性が立っていた。

 でもロザニアより服の装飾が派手な感じだ。


「あ……先輩、申し訳ありません。学校時代の同級生とお会いしたので、つい」


 さっきまで明るく楽しそうにしていたロザニアが急にしゅんとして、先輩と呼んだ女騎士に頭を下げた。


「もしや、普段もそのような振る舞いをしているのか? 大奥様の前で無礼であろう!」


 えっ、何この人。怒るにしても、こんなに大勢いる場所でやらなくたっていいじゃない。

 学校ではいつも優等生だったロザニアが怒られている姿は初めて見た。


「クロリラ、最近の女騎士というのはこういうのばかりなの? 帝国が誇る女騎士文化も地に落ちたものですね」


 今度は何? すっごい嫌味っぽいセリフが聞こえてきたけど……

 偉そうな女騎士の後ろに、かなり高齢に見えるけどヒラヒラのレースがたくさんついたゴテゴテのドレスを着たご婦人が立っていた。


 これは……話には聞いていたけど実際に今まで見ることはなかった、

 女騎士を持つことにステータスを感じる“社交界で自分の地位がどれほど高いのか自慢するような高飛車な貴族女性”のご登場だ。

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