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僕は世界一正直者です  作者: ふれい
第二章 『業を背負って』
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34話 『優先される世界線』

「んーん......私の可視化ではエネルギーが残っていたとしても、新田くんがエネルギーを使い切った感覚がある場合、どちらが優先されるか。それが重点だろうねえ」


 エネルギー残量を巡る両者の齟齬。


 新田は嘘によってエネルギーを消費した感覚があるが、仁の可視化による数値は変動無し。

 つまり、仮に先程の嘘でエネルギーを五消費したと仮定するならば、両者の間に五の差が生まれている。


 そして、仁から見て、残量が五になった時。

 新田の残量はゼロとなる。


 そうなった場合、優先されるのはどちらか。

 それが今の論点である。


「そうですね......ただ、仁さんから見えるエネルギーが優先されるのであれば、少々おかしいことが起きるような」


「......聞かせてくれるかな」


「仁さんの視点が優先される場合、実質的に嘘によるエネルギー消費が無いことになります」


「そうなるねえ」


「ーーだとしたら、莫大なエネルギーを使って、嘘でヘルメスを殺すことが可能になってしまいます」


「ーーーー」


 現時点での人々の第一目標、というより前提は、アストレアの子の全滅を避けることだ。

 だが、アストレアの子は人間であり、寿命が存在する。寿命で死んだ場合はセーフ、なんて仮定をしてはいるが、不安材料には変わりない。


 つまり、我々人間が本当に目標とすべきは、全ての元凶であるヘルメスの殺害だ。


「けれど、嘘を使って殺すことは不可能なはずです」


 エネルギーがゼロになった時、人間は死ぬとされている。この現象を実際に目の当たりにしたことはないのだが、魔導書にそう記されていた。


 ーー加えて、自身の容量の二倍以上のエネルギーの放出は、そもそも不可能だという記載もあった。


 分かりやすくすれば、エネルギーの借金には、限度があるということだ。

 それに関しては信憑性がある。


 ーー目の前に佇む、仁 新は、一度死にかけたことがあったという。

 詳しい当時の状況は教えてくれなかったのだが、それはヘルメス軍によるものだったらしい。


 その際、どうせ死ぬなら、と、莫大なエネルギーを消費して、周囲に大爆発を起こして散ろうと考えたそうだ。


 だが、その大規模な光魔法は不発に終わった。

 当時、仁は何が起こったか分からなかった。

 そして、魔導書を読み漁った結果、先のような記載があった、という経緯だ。


 ーーつまるところ、新田の死と引き換えにヘルメスを殺す、という荒技は禁止されているのだ。


 というより、禁止されてなければ色々とおかしなことが起きる。


「禁止されてないなら......そもそも、ヘルメスが嘘で僕らを、というより、アストレアを殺してるはずですから」


 人に外傷を与える嘘ーー特に生死に関わるものーーは、尋常でないエネルギーを消費する。


 新田はそのような嘘を吐いたことはないが、何故か生死に関わる嘘を吐いてはいけないと、本能が叫んでいた。


 幸耀だって、やろうと思えば不老不死にだってなれたはずだ。だが、彼はそれをしなかった。

 幸耀にも、同じような感覚があったのだろうと思う。


 話が逸れたが、いずれにせよ、ヘルメスの存在が、莫大な量のエネルギーを一気に使用することが不可能であると示していた。


「なるほどねえ。確かに、その通りだろう。新田くんの感覚を信用すべき、ってことだねえ」


「そうなりますね......今回の件で一つ思ったんですけど、やっぱり一度、この能力にしっかり向き合った方がいい気がしました」


「......不明瞭すぎると?」


「ええ。この能力、言ってることかなり滅茶苦茶ですし」


 世界の記憶を書き換える能力。

 端的に言えば、それはチート能力である。


 チートであるはず、なのだが。


「やっぱり人々の記憶に関する作用の仕方が、どうも気になりますね」


 それが必ずしも良いとは限らない。

 例えば、今この場に敵襲が来て、新田が仁をどこか遠い場所に転移させたとする。


 そうなった場合、この会話の記憶は仁に残るのか。


 仁は、新田は嘘の能力を手にしていることを知っている。

 だから、嘘を使ったという可能性を考慮した世界線に繋がる可能性もあるし、逆にそれらは綺麗さっぱり消え去り、転移した場所に行った経緯が記憶として入り込む可能性もある。


 それらは悪魔の証明であるが、どうにかして解き明かさねばならない問題に思える。

 そうでないと、いずれ、この記憶の齟齬が引き金となって、内部分裂が起こるような、危険な前兆を感じる。


 解決に向かうためには、有識者の意見が必要である。


 現状、嘘の能力を使用できると判明しているのは四名。

 新田、気分屋、アストレア、ヘルメスだ。

 だが、後半の二名と話すことは難しい。

 気分屋に聞いても恐らく大した収穫は得られない。


 ともなれば、一つの望みに賭けることが一番の近道であるように思える。


「ピーズ......」


 ーー異形の存在であり、唯一、新田らの前に顕現した神。


 彼の在り方は、自身が神であることを全面的に押し出すかのような、身勝手なものである。

 実際にそれを目の当たりにした以上、新田は神という存在を疑わまい。


 そして、ピーズとの関わりを持つ、ライズワールド転移後の仁家四代目、仁 彼方。

 彼曰く、ピーズはヘルメスとの関わりがあり、ヘルメスとの戦争において、ピーズが圧勝したとの発言があったという。


「ピーズは、何か嘘の秘密を知っているのかもしれない......」


「ーーそのピーズについてなんだが、話がある」


 縋る可能性に思考を広げていると、背後から中年の男の声が聞こえた。

 聞き馴染みのある、渋さを孕む声色。


「んーん。話、とな。君にしては珍しいことをするじゃないか、気分屋」


「ああ......急用なもんでな」


「ーーーー」


 聞き馴染みがあるからこそ、分かることがある。


 彼は、気分屋は。

 ーー間違いなく、怒りを湛えていると。

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