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84話.わたし、意趣返し

私たちは店を出て、帰途についた。私の隣にはゆうくんがいる。コウさんとみゆとは分かれたが、私とゆうくんは離れがたくて、2人で私の部屋に行くことになったのである。今後のことを話し合うことにした。


そこで話題になったのは、宇佐美さんとあきさんのことだった。2人で私の部屋のソファに座りながら話す。前にあるテーブルの上には先程私がいれたお茶がまだ湯気をたてている。


「凛は僕と陽葵のことを応援してくれているんだ。実は相談にのって貰っていた」


そうなんだ。凛さんはやっぱりとってもいい人だったし、優しい人だったんだな。今度会えたらお礼を言いたいな。


「そうなんだ。じゃあ、あきさんは……」


「多分それを知らなかったんだと思う。だから、凛が僕のことを好き……だと思って……」


私とゆうくんを引き離そうとした。宇佐美さんのことを守るために。宇佐美さんが辛い思いをしていると思って。


「あきさんは宇佐美さんを本当に大切に思っているんだね、きっと」


「2人は凛が小さい頃から一緒だから」


「私ね、あきさんのこと、なんでこんな酷いことをするのかなって思ったし、最初ゆうくんから真実を聞いた時、怒りが凄かった」


「うん」


「でも、必死だったんだ、きっと。大切な人を傷つけない為に」


そう思うと、あきさんがとても愛情深く優しい人に見えた。子を思う母のような、はちょっと年齢的にあきさんに失礼か。妹を思う姉のように、かな。


でも、でもね。それであきさんがやったことを全部許す、全部仕方ないって思うのは、少し腹の虫が収まらない。納得いかない。


そう思っていると、ゆうくんも同じことを思っていたらしい。


「でもね、ちょっとだけ腹立つから、ちょっとだけ、意趣返し、しよっか」


ゆうくんはそう言いながらいたずらっ子のような表情をこちらに見せ、パチリとウインクをした。


何がいいだろう、と考えて、


私たち2人が仲直りしている姿を見せること、それから、宇佐美さんに私たちのことを認めて貰う……と言ってはなんだが、あきさんの前で私たちを心から応援する様子を見せること。


小さいけれど、自分が違ったんだなって思ってくれたらなって。私たち、あなたがしたこと、全部知ってるんだからねってちょっとだけ見せられたらなって。


これくらい、いいよね。



ちょっとした意趣返しと宇佐美さんが相談にのってくれていたり応援してくれていたりするお礼を込めて、私たち2人は宇佐美さんの家を訪ねることになった。


あの後、ゆうくんがお礼を言いたいと連絡したところ、宇佐美さんから家へ招待されたのである。


宇佐美さんの家を訪ねるその日、私とゆうくんは、恥ずかしいけれど手を繋いだ。ピンポンと呼び鈴を鳴らすと、出てきたのはあきさん。


「どうぞ……」


「お邪魔します」


「凛様はリビングルームでお待ちです」


私たち2人をみたあきさんは気まずそうにふいっと視線を逸らした。その顔を見られて少々溜飲が下がった。その感情は決して表に出さず、なんでもないように微笑んで見せる。


部屋に上がらせて貰うと、リビングルームへ案内される。案内された先にはソファに座った凛さんがいた。ただソファに座っているだけなのに優雅に見える。彼女が醸し出す雰囲気だろうか。


「いらっしゃいませ。どうぞおかけになって」


私たちをみとめると、彼女は優しく笑ってそう言った。

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