表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/150

82話.雨猫、答え合わせ

僕の話を、した。過去の話を。


僕は無価値な人間だと思っていた、君に出会うまで。でも、君と一緒にいて、普通みたいに過ごせて、自分も普通なんだなって思えた。


君を傷つけたくないから中々言えなかったって思ったけれど、きっと僕は逃げただけ。弱い人間だから。


傷つけてごめん。

この想いに、この愛に嘘はないから。

信じて欲しい。


「私の話、聞いてくれる?」


そう言って話された、陽葵の話。


あきさんから聞かされた話。

それを聞いて、自分は要らないんだって思ったこと、感じたこと。もう僕から離れた方がいいと思ったこと。


それから、メッセージの話。


「自分はもう要らないって思ったから、これ以上ゆうくんのそばにいちゃダメだって思った。離れなきゃって思ったの」


でも、説得をされて、ちゃんと話を聞くまではそのメッセージを送らないつもりだったらしい。なのに、いつの間にか送っていたらしく、あんなことになった、と言っていた。


自分はこんなにも心優しい子を傷つけたのか。

自分より相手を思いやれるこんな子を。


陽葵はこちらを見ず、目を伏せたまま自らのことを語った。声や身体も少し震えているようにみえる。それから、つーっと陽葵の涙が零れるのが見えた。頬を伝うその雫に胸が苦しくなる。


「陽葵……」


「……ゆうくん、そっちに行ってもいい?」


陽葵が顔を上げながら言った。その目は真っ赤だった。とめどなく溢れる涙が目尻から頬へと落ちていく。


「うん……」


僕が頷くと、陽葵は立ち上がり、それから僕の方へと飛び込む。久しぶりに触れたその体温。あたたかくて居心地のよい体温。


陽葵は僕の服をぎゅっと握ったまま言う。


「本当は、別れたいなんて思ったこと、1度もない!ゆうくんとずっと一緒がいいって思ってる」


「僕も……僕もだよ」


心から僕の気持ち、伝えるから。

心ごと全部伝えるから。

君が大好きだってもう1回伝えてもいいかな。


「僕は陽葵が好きなんだ。君がいないと苦しいくらいに、君が好き」


僕は陽葵の背に自らの腕を回し、ぎゅっと強く抱き締めた。陽葵が自らの腕の中にいることを再確認して、心があたたかい。


ああ、やっぱり、離したくない。

君がいなきゃ、僕はダメだ。

好きで、大好きで。


「好きだよ、陽葵」


「私も、好きだよ、ゆうくん」


安堵と愛おしさが込み上げてきて、僕の目から気持ちとともに涙が溢れ出した。


「ごめん……ごめん……」


「私の方こそごめん」


2人で謝り合う。その2人ともが涙で顔がぐしゃぐしゃだ。ぼやけて前が見えない。


「弱い僕でごめん。君への心は、気持ちは誰にも負けない」


「私だって負けないもん」


その後、僕達はいっぱい泣いて、それからちょっとだけ笑った。


でも、このままじゃダメだ。ちゃんと決着をつけなきゃ。


僕と陽葵の未来のために。


「僕、この休みにイギリスに行ってくる。行って、ちゃんとお父様と話してくる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ