81話.わたし、答え合わせ
心臓が出てきそうなくらい緊張する。ドキドキと今までにないくらい暴れている心臓を抑えるように、自らの右手を心臓の方へと置いた。
今からひとつずつ答え合わせをしなきゃいけないんだ。
少しの沈黙の後、覚悟を決めた私は問いかける。
「まずは、宇佐美さんのこと。宇佐美さんがゆうくんの婚約者だって言うのは本当?」
「………っ」
ゆうくんから息を呑んだような音が聞こえてくる。その音に顔を上げると、戸惑ったようなゆうくんの表情が見える。だが、それは一瞬だった。ゆうくんは、真っ直ぐ強い目でこちらを見る。誠実に向き合うと決めた、と目が言っている。
「それは、本当だよ。僕と凛の親が決めた」
ゆっくりと頷く彼に世界が真っ暗になるような気がした。彼らが婚約者同士なのは本当だった。じゃあ、2人は本当に愛し合っているの?
聞くのが怖い。
だけど、向き合うって決めたから。
真実を知るって決めたから。
「……じゃあ……ゆうくんは……宇佐美さんを……愛しているの?」
「それは、違う。そこは、僕を信じて欲しい。僕も、そして凛もお互いを友達としか思っていないよ」
真っ直ぐ見つめるその瞳は嘘を言っているようには見えなかった。
でも、何も言わない私をまえにして、ゆうくんは「ごめんね、信じられないよね」と申し訳なさそうな顔をする。
「ねぇ、僕の過去の話、聞いてくれる?」
「うん……」
私は頷いた。あきさんから聞いた話じゃなくて、本人の口から直接聞きたかったから。
そこで聞かされた話は、あきさんからのものと大方違いはなかった。だが、宇佐美さんとの関係だけが違った。ゆうくんの口を通して伝えられるそれは、お互いが戦友や友達だと言うことを物語っていた。
「婚約者同士だってこと、それから僕の過去の話も言うのが遅くてごめん。君に心配をかけるのが嫌だって言って、僕が逃げているだけだった。本当は僕が向き合うのが怖かったんだ。いっぱい心配かけて、不安にさせてごめん。弱い男でごめん。こんなにも大好きで愛してるのに傷つけてごめん」
ゆうくんは自分のことを後悔するように、そう言った。所々声が掠れていてる。見えないけれど、悲痛そうな叫びできっと心が泣いている。
でも、それなら、私だって。
私だって、ゆうくんのこと信用しなかった。
ちゃんとその口から話を聞こうとしなかった。
本当のことだったら怖いと、逃げた。
そして、酷いことを言った。
本当は一緒にいたいのに。
「私だって、勝手に判断して、ちゃんとゆうくんの口から聞くべきだったのに、逃げた。連絡だって無視した。ごめん。傷つけて、信用しなくてごめん。………それに、あんなメッセージを送ったのも……」
私がメッセージの話を出すと、ゆうくんはピクリと揺れた。
「じゃあ、あのメッセージは……」
「本心じゃないよ……」
今度は私が話す番だ。私がゆうくんに答え合わせをする番。
「私の話、聞いてくれる?」