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〇番外編2. 体調不良 3

クスクスとした笑い声が聞こえた。それから、マスク越しだが、唇に唇があてられる。


「……っ」


「あ、直接がよかった?」


「だ、だめ!風邪うつるから!!」


いたずらっ子のように笑いながら言うゆうくんに、慌てて首を振る。アイドルに風邪移すの反対!断固拒否だ。


「今はこれで我慢か……」


私は彼に翻弄されっぱなしだ。むくれた私にゆうくんは私の上から退くと、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。くしゃくしゃになった髪の毛を抑えながらゆうくんを見上げると、またクスクスと笑われた。


「ご飯食べたら病院に行こうね」


「ありがとう……」


「いえいえー。座れる?」


「うん、多分」


ゆうくんが優しく言うから、私は素直に頷き、起き上がってベットの上に座ろうとする。だが、力があまり入らず、ぐらりと揺れる身体。私は思ったより動けないらしい。すると、慌てた顔をしたゆうくんは私の背に手を回し、支えてくれる。


「大丈夫?」


そう言いながら、ベッドにあったクッションで背を埋めるように並べてくれた。これから、寄りかかって座ってられそうだ。ゆうくんの問いかけに小さく頷く。ゆうくんは心配そうに眉をひそめたらまま、私の額に手を当てた。私より幾分か体温が低いその手が冷たくて心地よく感じる。


「熱、上がってるかもね……」


「そうかなぁ……?」


「だって、こんなに熱いから……。辛いよね……」


「大丈夫だよ」


こんなに心配かけて申し訳ない……早く良くならないとだね。


その後、ゆうくんはお粥を再度持ってきてくれた。温め直そうか?と言われたが、少し冷めたくらいの方が食べやすいので断った。


「じゃあ、はい」


ゆうくんはお粥をベットの横のテーブルに置くと、そう言いながら、スプーンで一口掬ってこちらに向ける。あまりにも自然に差し出されたそれに口を開きかけて、驚く。そのまま口を閉じ、スプーンから離れる。


これは俗に言う「あーん」では!?


この歳になってまで食べさせてもらうのは流石に恥ずかしい。


「1人で食べられる……」


「ダメだよ。……1人で苦しむのは辛いからね」


熱を出しているのは私だけれど、どこか辛そうにそう言うゆうくんに何も言えなくなる。眉が寄せられ、どこか切なげで儚く遠くを見るような、何かを思い出しているかのような表情。なんか、実体験みたいだ、なんて思ってしまった。


でもその表情は一瞬で、直ぐにニッコリと笑顔に変わる。こちらを思いっきり甘やかしたい、という思いが伝わる笑顔だ。


「こーゆー時は思いっきり甘えなきゃだよ。ほら、口開けて、あーんして?」


「………」


その言葉と圧に耐えきれず、私は口を開ける。恥ずかしいので恐る恐る開いたが、ゆうくんはよく出来ましたと言わんばかりに優しげに微笑む。そらから、丁寧な手つきで私の口にスプーンを運んだ。


「……美味しい」


ゆうくん手ずから作ってくれたお粥は、美味しかった。たまごの風味の優しい味で、出汁がよくきいている。濃い味ではないのにしっかり味がついていて、お腹にも喉にも負担にならない。そして、ほっとする味だ。


「ほんと?よかった!僕、お粥ってあまり作ったことがなかったからこんな感じでいいのかなって不安だったんだ」


「私のために作ってくれて、ありがとう」


「さぁ、いっぱい食べようね」


「やっぱり自分で」


「ダーメ」


食べさせてもらうのはやっぱり恥ずかしいので有無も言わさず却下されてしまう。


そして、結局完食までスプーンに触らせて貰えなかった。お粥全てを人気アイドルから食べさせてもらうというファンが知ったら激怒されそうなイベントを完遂したのだった。


その後、ゆうくんに連れていかれた病院で「風邪」と診断された私は、抗生剤と解熱剤を処方された。こんなに悪化する前に来なさいとちょっと怒られた。


家に帰ってきたら、そのままベッドに逆戻り。


薬を飲んでちょっと元気になったから家の事をしようと思って立ち上がったら、仁王立ちをした目の前の恋人さんに凄い剣幕で寝てなきゃダメだよと怒られた。


今日、怒られてばっかりだな。


「君が心配なんだよ。ほら、もう寝よう?」


ゆうくんはそう言うと、私の額に手をのせる。その自分より少し体温が低くて心地よい温度に、眠気がやってくる。


「おやすみ。いい夢を」

ゆうくんはきっと、熱の時お粥は食べたことないと思います。

味はこんな感じでいいのか、上手く作れるているかわからないから、不安。

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