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〇番外編2. 体調不良 2

だって、その侵入者は……


「え、あっ、おっと……!」


「ゆうくん……?」


私の猫柄のエプロンをし、お盆を持って、驚いた顔をして立っているゆうくんだった。お盆の上にはホカホカと湯気の立ち上るお粥が乗っているが、そのお粥がゆうくんが驚いた拍子に落ちそうになる。


呆気にとられた表情をするゆうくん。きっと、私も同じようなものだろうから、間抜け面でお互いを見合っていると思う。


「なんでここに……?」


「陽葵から風邪ひいたって連絡あったから……?」


問われたゆうくんはこてりと首を横にかたむけてそう言った。可愛いな、おい。


「………っ……」


相手が見知った相手で、張り詰めていた糸が切れた瞬間、思い出したかのように身体が重くなる。グラりと揺れる身体。


「え、陽葵!?」


お盆の上のお粥を落とさないためかちょっと足を曲げて踏ん張りながら、私を支えるゆうくん。体幹しっかりしているなぁなんてふわふわした頭で考える。


「大丈夫!?」


「うん……なんとか……。ありがとう」


お礼を言うと、いつまでももたれている訳にはいかないので、立ち上がろうと、足に力をいれる。だが、思うように力が入らない。


「そんな身体で立ち上がるのは無理だよ……!」


「でも、風邪、うつっちゃうよ……。早く帰った方がいいと思う」


慌てたように言うゆうくんだが、そんなことをしていたら風邪を移してしまう。多忙アイドルに病気をうつすヘマは出来ない。していいはずがない。ゆうくんから何とか離れようとするが、力が入らなさすぎて動けない。


「大丈夫。マスクしてるし!」


ゆうくんはいつの間にかお粥を、廊下にあったチェストに置いたのか両手で私を支えてくれていた。動こうとする私の顔を覗き込んで、ニコッと微笑んでみせる。その口元には確かにマスクがされていた。


「病人は余計なことを考えないでよく食べて早く寝る!病院にも行かなきゃね」


そう言ってから目を三日月型にして微笑んだゆうくんはひょいっと私を抱き上げる。危なげなく抱えあげられた私は、いわゆる姫抱き?お姫様抱っこ?とやらの体勢のまま部屋へと運ばれた。


こんなの物語の中でしかなくない?アイドルにこんなことさせていいの?そもそも近づきすぎて風邪をうつさない??なんて色々思考が巡っている間に、ゆうくんは私をベットの前へと連れてきた。


それから、ゆっくり私をベットの上に下ろす。その後、ゆうくんは、起き上がろうとして、ベットの上から少しだけ落ちていた布団に躓いた。


「おわっ!?」


「きゃっ!?」


「……ごめん!」


私に覆い被さるように転んできたゆうくんだが、すんでのところで手で支えたのか、押しつぶされずには済んだ。ゆうくんはばっと顔を上げてこちらを見ながら謝る。


間近に琥珀の瞳が見える。キラキラしたように見える彼の瞳はとても綺麗だと思う。だが、間近に見えたのは一瞬で。というのも私がばっと勢いよく彼からはなれたからだ。自分の頬が瞬く間に林檎色になるのがわかる。


急に近くなるのほんと無理。顔がいい。


私がそんなことを思っていると、つんつんと私の頬をつつくゆうくん。まだ近くに体温があって、緊張する。暑いのは熱のせいもあるかもしれないけれど、半分くらいはきっとこの人のせい。


「なんでそんなに顔、真っ赤なの」


「……急に近いから……」


「なにそれ〜。可愛いなぁ……」


また、近づいてくる琥珀に、思わずギュッと目をつぶる。

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