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○番外編1.ぎゅってして、デザートより甘くして1

最近甘さが足りないので、番外編は甘くしたくて!

寒暖差にご注意ください苦笑

よろしくお願いします。

こんにちは、結月陽葵です。突然ですが、今現在の私はとても不機嫌です。というのも、最近!ゆうくんに!会えていない!!


そう、単純に好きな人不足です。なんてわかりやすい人なのかと思いますよね、私もそう思います。大好きな人にぎゅって抱きしめられたい、ただそれだけです。


内心物凄く機嫌が悪いですが、お仕事はちゃんとしないといけないのでします。パソコンをカタカタと打ち、書類を仕上げていく。


会社の自分の席で無心で書類を作っていると、ポンと右肩のあたりを叩かれる。肩の方を振り返るとみゆの姿。


「あんた、大丈夫?」


「何が?」


思った以上にその音には不機嫌さがのっていた。その声音にみゆはひえっと小さく声を上げた。それから、いわゆるジト目でこちらを見やる。


「あたしに凄んでも意味無いでしょうよ」


「うん、ごめん」


悪気はなかった、許してくれ。今ものすごく不機嫌なのだ。素直に謝ると、みゆはふふっと笑った。


「そーゆー、素直なとこはあんたのいいとこだと思う」


「ありがとう」


なぜか褒められた。少しだけ気分上昇。私はなんて簡単な奴なんだ、一体。なんて思っていると、みゆは私の顔を覗き込み、私の眉間の辺りをぐいっと人差し指で押す。その弾みで頭ごと少し後ろに倒れ、背もたれにコツンと軽くぶつかった。どうやら眉間にシワがよっていたらしい。


「で、ほんと、どうしたの?」


「………なんでもない」


言うのは少し恥ずかしく、視線を逸らす。そして、押された眉間を揉むように抑えながら返事をした。そっぽを向いた形になった私に、クスクスと笑う声が聞こえた。


「彼氏不足とか?」


「……!?」


「図星か、あんた、分かりやすっ!」


「みゆが鋭すぎるのよ」


思わず振り向いた私に更に笑い声を大きくするみゆ。むーっと少しむくれてみせても笑い声が止むことは無い。そんなに笑うことないじゃん。


「次、いつ会えるの?」


「それが、今日……会えるって」


「それは良かったじゃん。これ以上不機嫌を振りまかれたら気が気じゃないよ」


ヤレヤレといった風に大袈裟に肩をすくめるみゆに申し訳なく思う。自分が思ったよりわかりやすい人間であることに苦笑する。


「ごめんて……」


「しーっかり彼氏成分補給来てくること」


「は、はい!」


謝る私に、みゆはビシリと指を突きつけ、厳しい顔を装って言ってからニコッと笑った。思わず姿勢を正し返事をしてしまった……。




問題の夜。やって来たゆうくんをそのままソファの所に連れてくる。来て早々無言のまま、問答無用で連れてきたので、少し驚いているゆうくん。


「………」


「そんなじーっと見つめて……」


「………」


じっとその少し驚いた瞳を見つめると、ゆうくんは少し戸惑ったような姿をみせるが、素直に言いづらい。


だって、恥ずかしいじゃない。ゆうくんに会いたすぎて機嫌が悪いなんて、抱きしめてほしくてゆうくんにそばにいてほしいだけでこんなに不機嫌だなんて。どれだけ子どもみたいなの。これだけ素直になれない時点で子どもかもしれないけれど。


そのままじっと見つめると、ゆうくんは少し考えること数秒。あっと閃いたように目を少し見開いてから、意味ありげに微笑んだ。それから、少しこちらに顔を近づける。


「言いたいことがあるなら言わないとわからないよー?」


「………う……」


大きな瞳が目の前でくるりと揺れた。顔がいい。イケメンに見つめられた状況、しかも久しぶりで最近耐性がなかったから怯み、口から変な声がもれた。その声とともに、ずいっと近づいてくるゆうくんから離れるように身体を後ろに反らせる。


目の前の顔がいい猫はその私の様子にクスッと笑った。そのまま後ずさった私の頬をつんつんとつつく。


「あ、喋った。ほらそのままおっしゃいなさいな、「ゆうくんに会えなくて寂しかった。ぎゅーってして」って」


「……な、なんでバレて……!?」


ゆうくんに言い当てられて驚いて、ビクッと飛び上がった私に、ゆうくんは意地悪げに微笑んだ。


「僕にわからないとでもー?ほら、どうぞー?」


「え、そんな……むり」


「ちゃーんと言わなきゃ僕は何もしないよー?」


意地悪なことを言っていても、くそイケメンだな、この男は。無理と言っても、嬉々として動いてくれなさそうなこの男に、どうしようかと逡巡する。何度顔を見上げてもただ、かっこいい顔がこちらの言葉を待っているだけだ。


覚悟を決めるしかないらしい。この、言わせたがりの焦らし男め!


「う……、ゆ、ゆうくんに……会えなくて寂しかったです……」


恥ずかしくて顔を見れなくて、うつむいたままポツリポツリとゆっくり言葉を紡ぐ。声も小さいけれど、恥ずかしいから仕方ないじゃないか。きっと、今、私の顔はりんごなんかよりも更に真っ赤だろう。


「うん」


優しい声が落ちる。慈しむようなその声はこちらの続きを待ってくれているように聞こえる。顔を上げられなくてゆうくんのお腹の辺りを見ながら言葉を続けた。


「その……あの……ぎゅ……ぎゅってして!!」

番外編2につづく!

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