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74話.ある女、疑念を抱く

子供だましのような、作戦ともいえないような、幼稚な策が成功して、結月陽葵が去っていくのを見届けると、ふぅと小さく息を吐く。そろそろ凛様と蒼羽様のところへ戻ろう。


「あ、あれ、蒼羽くんじゃないかい?」


そう思っていた時に、言われた言葉にはっと視線を上げる。窓から外を見ると、月見里さんが言った通り、蒼羽様が店から出て走って行くところだった。


どういうことだろうか。まさか、結月陽葵がいること、走っていったことに気づいたのだろうか。だから、走っているのか。そう思い、慌てていると、スマホが通知音を立てた。


中にいる探偵からだ。「追いますか?」との通知。読んですぐ、「お願い」と打っていた。打った後、即立ち上がる。様子を知りたいので、すぐ店に戻るつもりだ。


「戻るのかい?」


「はい、直ぐに。事情を知りたいですし、このままだと凛様がおひとりになってしまいます」


「君、過保護だって言われるだろう?」


「なんとでも仰ってください。小さい頃から大事にしてきた方ですから」


「まぁ、君が幸せならそれでいいか」


「早く戻りますよ」


そう言って、月見里さんの手を掴むと、立ち上がる。そのまま一刻も早くというように彼の手を引っ張って、店の外へと連れていく。


「君、時に大胆だね」


「そんな戯言いっている場合ですか?」


繋いだ手を見ながらそんなことを言う彼を、じろりと睨みつけながら言うと、彼はわざとらしく肩をすくめてから、私に引っ張られていく。これは急いでいるだけで、特に他意はない。こういう茶化すところ、ほんと昔から好きじゃない。



店に戻ると、探偵の姿はもちろんなく、凛様は席にポツンと座ってらっしゃった。凛様に駆け寄る。


「凛様、お待たせしました」


声をかけると、凛様は顔を上げて、ニコリと微笑んだ。凛様の優しく優雅な笑顔は、心から美しいと思う。凛様は私と月見里さんをみて、


「あら、アキに月見里さん。一緒だったのですね」


「先程、入口で会ったんだ」


月見里さんが言った。それにこくりと頷きながら、嘘をついてしまっている罪悪感に苛まれるが、これは仕方ないことだと結論づけ、微笑む。それから、私と月見里さんはそれぞれ元いた席につく。


「そうなんですね。アキ、スマートフォンはありましたか?」


「はい、ありました。ご心配をお掛けしました。ところで、蒼羽様は……?」


「ああ、結希なら、急用を思い出したとかで出ていきましたわ。ごめんなさいね」


「いえ。突然ですね。誰かを追いかけて行かれたとかですか?」


偶然を装い尋ねたが、変ではなかっただろうか、と一瞬思ったが、凛様は特に気にした様子はなく、微笑んだまま応えてくれた。


「そういう感じではありませんでしたわ」


「そうなんだね。用事があるなら仕方ない、では、3人でご飯にしよう」


月見里さんがそう言い、メニューを開く。その姿を横目に、先程のことを考える。凛様の言い方ならば、結月陽葵をみて追いかけたって感じではなさそうだ。詳しいことは、探偵の報告待ちになるだろう。


店員さんに笑顔で注文をしている私の可愛らしくも美しいお嬢様。


願わくばずっと幸せに健やかに。そのためなら要らないものは全力で排除してやる。

あともう1話で、3章が終了し、4章へと移ります。

よろしくお願いします。


次への原動力となりますので、是非「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けましたら、ブックマークや評価(広告の下の☆)、いいねなどよろしくお願いします。

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