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6話.雨猫、話す

 街を歩き、仕事現場へと向かう。時間は昼頃である。陽葵さんを朝に見送ったあと、片付けをして、ひとまずお風呂をお借りして、家を出てきた。持ち物は財布とスマホのみ。燃えたからね。


 外では、昨日の崩れた天気から一転してすっかり落ち着いた天気になっている。暖かい風が頬を撫でる。


 今はまだ心地よいくらいの気温だが、もう少しすれば、茹だるような暑さの夏がやってくる。暑くなったらマスクとサングラス嫌だなぁ。


 アイドルしている時は薄い青色のヘアウィッグをするし、水色のカラーコンタクトをしているから大丈夫だと思うんだけど、なんて。


と言ってもマスクとかするのは仕事に行く時だけだけれどね。普段は装いや髪の色まで違うからしないけれど、仕事の時は念の為。


 その話は置いておいて、今日の仕事は雑誌の撮影だ。楽屋に入ると、僕が1番最後だったようで、もうほかの3人は楽屋に着いていた。


 僕が入り、「おはよう」と挨拶をしつつソファに座ると、


「おはようございます、アオくん。家が燃えたって聞いたけれど、大丈夫ですか?」


『Colors』のメンバーで、ユカリという名で活動している紫月(しづき) (かおる)が声をかけてきた。


 振り向くと腰までの薄い紫の長い髪をふわりと結わえた男性がこちらを心配そうに見つめている。白い陶器のような肌をもった、一瞬女性かと思えるような美しい男性だ。


「大丈夫だよ。ありがとう、ユカリ」


「ボクも!!心配したんだよー!!??」


 ぴょこぴょこと跳ねながら言っているのは、メンバーの朱宮(あかみや) (いつき)ことアヤである。心配そうに眉を下げており、子犬のように見える。


「ありがとう、アヤ」


「家はどうしているんだい?」


 メンバーの黄里川(きりかわ) (ゆき)、コウと呼ばれている、が尋ねる。


「ああ、実は、ある人のところに居候してる……。昨日フラフラしていたら助けてくれた……」


「え!それ、大丈夫なの!?」


 アヤが驚いたように目を見開く。ぱっちりとした大きな瞳がこぼれ落ちそうなくらい開かれている。くるくる変わる表情はその身長が低いのも相まって子供のようだ。流石年下系可愛いアイドル。


 それから3人に昨日あったことを聞かせ、しばらくお世話になることを言うと、アヤは目を白黒させ、ユカリは眉を下げてこちらを見つめ、コウは目をパチリと1度瞬かせた。3人とも驚愕と心配という言葉が顔に書いてある。


「バレなかったんですか?」


 ユカリが尋ねる。僕がアイドルだってこと、だろう。その言葉に僕はこくんと頷く。


「大丈夫だった」


「まあ、ボクたち、ウィッグ被ってるしねぇ」


 アヤは自分のウィッグをつんつんとつつきながら言った。ウィッグとは思えないほど地毛に近い髪質だ。


「何者かって聞かれなかったのかい?居候するのに」


「うん、聞かれなかった。普通聞くと思うんだけど……。多分僕が言いづらそうにしているから聞かなかったんだと思う。そして、言った方がいいかな?って思った時、タイムアップになっちゃった」


「お人好し……?」


 ユカリが首を傾けながら言う。それには全力で賛同する。見ず知らずの人が道に落ちてても普通拾わないよ。しかも自分の家に住ませるなんて。僕としては有難いけれど。多分僕、今、あの子の中で不審者だよ。


「これからも言わないのかい?」


「うん……。できれば言いたくないかな……。というか言わない方がいいかなって思う。居候させてもらっているのに、ちょっと自分勝手かもしれないけれど、騒ぎになったら困るし……。それに、せっかくあんな風に接してくれているのに、アイドルって知ったら多分恐縮されちゃうだろうし……」


 僕、こうやって言ってみて思ったけれど、だいぶ勝手なやつじゃない?!めっちゃ申し訳ないことしてない!?僕、性格悪くない!!??


「やっぱり言った方がいい!?」


「聞かれないんなら言わなくてもいいんじゃないですかね?多分……」


 ユカリが言い、それにコウも頷く。


「言いたくなったら言えばいいんじゃないかな?」


「ねぇ!それはそうと、どんな子なの?」


 アヤが興味津々といったように目をキラキラと輝かせて問う。


 陽葵さんを思い浮かべる。昨日会ったばかりだけれど、すぐに思い浮かぶ。真っ直ぐな黒髪に闇夜のような漆黒の瞳。白い肌にぷっくりとした桃色の唇。ふわふわと優しげなのに強引で、笑顔が素敵な人。


「いい子だよ。笑顔が素敵な……」


 そう僕が言うと、3人の視線がじーっと僕に集まるのを感じた。


「そうなんだ」

「ふーん」

「なるほどね……」


 3人が意味ありげに言う。ちなみに上から、コウ、アヤ、ユカリである。3人に見つめられてたじろぐ僕。


「え、何?!」


「そんな顔するの、珍しいです」


 ユカリが言う。え、顔!?


「え、どんな顔?」


「なんだろ……?幸せだーって顔?」


 アヤが答えてくれる。え、僕、そんな顔してた!?


 そして、3人とも、なんでそんな生暖かい目で見るの?!

一応新しく出てきた登場人物を改めて紹介致します<(_ _)>


✤登場人物紹介

黄里川(きりかわ) (ゆき) / コウ

Colorsのメンバー。大人の魅力溢れる最年長。

メンバーカラーは黄色。

紫月(しづき) (かおる) / ユカリ

Colorsのメンバー。儚く美しいイメージ。

メンバーカラーは紫。

朱宮(あかみや) (いつき) / アヤ

Colorsのメンバー。あざとさも可愛さ!みんなに可愛がられる最年少。



面白いと思って頂けましたら、ぜひ、評価とブックマークをお願い致します<(_ _)>

よろしくお願いします。



次回の投稿は【9月12日8時】です!

よろしくお願いします<(_ _)>

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