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65話.雨猫、憂鬱と夕食会と

ゆうくんの名前が本名になっていましたので修正しました。失礼しました。

あれから陽葵からの返信はない、電話をしても出ない。音沙汰がないのである。


心配のまま、どうすることも出来ずに歯がゆい気持ちのまま、時間だけが過ぎていく。ひたすら目の前の仕事をこなして行く日々。


時間があるなら陽葵のところに行くのに。

会いたいよ……。


そんな忙しい中、『迷探偵Aの珍道中』の撮影が始まった。今日は顔合わせだ。


顔合わせが行われる予定の会議室へ向かうと、早めに着いたのにも関わらず、もう誰かがいた。黒髪でダンディな顔つきのその俳優さんは今、奥様方の間で人気の月見里 悠悟である。


仕草の一つ一つが大人っぽく、夫にしたい男ランキングや抱かれたい男ランキングなんかでも1位を獲得している。僕は初対面だが、よくドラマに出ており、彼の演技を勉強させてもらうことがよくある。


「初めまして、月見里 悠悟さんですよね。僕、Colorsのアオと申します。不束者ですがよろしくお願いします」


彼のいる席へと挨拶に行くと、彼は立ち上がり優しく笑って返事をしてくれた。


「初めまして。月見里 悠悟、よろしく」


さわやかだが、低めのバリトンボイス。黒い艶やかな髪と少し垂れたような瞳の彼は大人の男性といった出で立ちである。歳は30後半と聞いているが遥かに大人っぽくみえる。


Colorsで大人っぽさ担当はコウだが、彼とはまた違ったかんじ。コウはどちらかと言うと大人っぽいお兄さんで、月見里さんはイケおじ、みたいな。


「ドラマは初めてですので、ご指導の程よろしくお願いします」


「君らしく頑張りなさい。フォローは周りがするから」


「は、はい!ありがとうございます」


そう言って手を出してくれたので僕も手を出し、握手をする。思いのほか強い力で握れた手は決意の強さの表れなのだと思った。


その後は、スタッフさんや他の俳優さん達もやって来て、定刻通り打ち合わせが始まった。それぞれの紹介と、今後のスケジュールについての説明などがあった。


スケジュールを見て思ったことは、思ったよりタイトなスケジュールだな、ということだ。僕が初めてドラマにでるからか、周りは有名な方が多くいて、スケジュールが合う日にまとめて撮りたいということらしい。


僕自身もライブの準備や他の仕事もあるから上手にスケジューリングしてくれたスタッフさん、本当に凄い。パズルゲーム絶対上手だよ。


「では、今日は顔合わせなので、これで終了となります。このスケジュール通りに撮影を行いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました」


「ありがとうございました」


そんな風に顔合わせは終了した。終了時刻は16時半を少しすぎたところ。


顔合わせが終わると、三々五々帰っていく。僕も帰ろうかなと立ち上がった時、声をかけられた。声の主は月見里さんだった。


「夕食の予定はもう決まっている?」


「お疲れ様です。まだ決まっていないです」


そう伝えると、彼はスマートな笑顔を浮かべる。優しげでジェントルマンとはこんな感じなのかななんて思う。


「この後一緒にどうかな?」


「は、はい!」


「そんなに緊張しなくていいよ。行こう」



誘われて来た店は、僕もよく来たことがある店だった。食事処 つばきはこの近くのスタジオで収録や撮影があった時によくメンバーと来る。昼は食堂で夜は居酒屋になる店で、唐揚げが絶品なのだ。


店に着いたのは5時を少し回った頃。


店はいつものように繁盛していた。楽しそうに話すお客さん達と忙しく働くおばさんの店員さん。夫婦でやっている店の奥さんの方である。


「いらっしゃい!2名様かい?」


「はい、そうです」


月見里さんが返事をし、席に案内された。


「ここの唐揚げがとても美味しいんだ」


「実は僕も来たことあって……」


ニコニコと笑う月見里さんに嘘を言うのもと思い、申し訳なさそうにそう言うと、月見里さんはおやっと声を上げてから、また笑顔に戻る。


「そうなんだ。それは素敵な偶然だね」


「そうですね!よく仲間たちと来るんです」


「Colorsのメンバーたちだね」


うんうんと僕の話に相槌をうちながら聞いてくれる月見里さんに僕も少し嬉しくなっていつもより話をしてしまう。


「はい。昼も夜も、仕事終わりとかによく来ます」


「本当にColorsは仲がいいんだね。君の話を聞いていると楽しそうで、俺まで楽しくなる」


「それは良かったです」


先に知っていたことも怒らず、僕の話も優しく聞いてくれてホッと安心する。優しい人でよかった……。


なんて思っていると、月見里さんは僕の後ろあたりを見て少し驚いたような顔をした。それにつられて僕も後ろを見た。


「あ……」


向いた先にはちょうど店に入ってきた2人の人物。


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