64話.うさぎ、夕食の時間
結希が陽葵さんとちゃんとお話をすると聞いてから数日が経った。あれからちゃんと二人は話が出来たのだろうか。
今日は1日自宅のアトリエで仕事をしていた。もう時間は16時になろうもしているところ。仕事がひと段落したので、机から顔を上げ、ふぅと1つ安堵のため息をつく。すると、ずっと出される紅茶。
「あき、ありがとう」
「いえいえ、お疲れですか」
「大丈夫ですわ」
あきから紅茶を受け取ると、一口頂く。美味しい。あきは昔から紅茶をいれるのがとても上手だ。あきのお母様から教わったそうで、代々いれ方を教わっているのだとか。紅茶の資格も持っていると聞いている。
「とても美味しいですわ、ありがとう」
紅茶でホッと一息つくと急にお腹が空いてきた。仕事モードから落ち着いた安心モードになったから自分が空腹だったことに気づく。
「少々お腹がすきましたわね」
「早いですがそろそろ夕食になさいますか。今からお作りするので少し時間がかかるかもしれませんが……」
「外食に行きましょう。いつものレストランがいいかしら?」
いつものレストランとは家のすぐ近くにあるフレンチレストランである。そこのシェフの料理はとても美味しく、よく利用させてもらっている。
特にラタトゥイユやキッシュなんかもとても美味しいわ。高価だから最近はあまり食べていないけれど、小さい頃はよく食べた、鴨のコンフィもとても美味しいのよ。
私の言葉にあきは右手を顎のあたりに当てて少し考えるような素振りを見せてから、こちらを少し上目に見て言う。
「いつも同じところだと飽きてしまわれるのではないかと思いましたが……」
「そんなことは無いけれど……そうね、たまには違うところにいきましょう。どこがいいかしら」
あのシェフの味はいつ食べても美味しい。食欲がなくても食べられるくらいには。だが、たまには違うものでもいいかもしれないと思い、そう問いかける。すると、あきはうーんと悩んでから、閃いたように笑顔になった。
「いつもと違うところ……以前お嬢様がご友人とご一緒したお店はいかがですか?確か……食事処 つばき様……」
あきが案として出したのは、以前結月さんと新堂さんと伺ったお店だった。確か以前はお昼に行かせていただいたが、夜もやっていると聞いている。いつもとは少し趣向が違っていいかもしれない。それに、あきに言われたらあの名物の唐揚げを食べたくなってきた。
「あら、それは名案ですわ!あちらのお店は唐揚げがとても美味しいのですわ」
「そうなのですね!私も食べてみたく存じます」
私が言うと、あきはパァッと笑顔になり、瞳を輝かせる。普段は大人っぽくてしっかりしているあきだが、こういう所は素直で少し子どものようだなと思う。
「そうと決まれば準備をして行きましょう!」
今から準備をして行けば5時くらいかな。
入れてもらった紅茶を飲み終わってから、出かける準備をする。仕事の道具で散らかった机を少し片付け、服を着替えてから軽く化粧をすれば完成だ。
ちょうど私が準備を終えた段階で、あきも終えたようだった。
「では、行きましょうか」
「はい」