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41話.わたし、からかわれる

声を発したあと、2人とも黙ったまま。どこか居心地悪そうに目を泳がせているように見えた。そして、周りの誰も言葉を発しないその場の空気を変えたのは、私の横にいたみゆだ。


「お知り合いですか?」


そう声をかけるみゆに、2人は一瞬驚いたような顔をした。でも、それは本当に一瞬で。すぐ笑顔になる。


「前に仕事でご一緒させて頂いたのですわ」


宇佐美さんの言葉に、ゆうくんはこくんと頷く。デザイナーとアイドルなら確かに仕事で一緒になることもあると思う。ふんふんと納得していると、みゆが「では宇佐美さんもこの後の打ち合わせ、もしご用事がなければご一緒しますか?」と聞いたことにより、宇佐美さんも一緒にすることになった。



場所を移して、会議室。『Colors』の皆さんには先に席に着いてもらい、私たちは準備のために少し席をたつ。カラフルな髪の毛が殺風景な部屋に並んでいる姿はどこかミスマッチだ。


「みゆ、『Colors』に話しかけなくていいの?打ち合わせの後にでもさ」


会議室の端の方で、資料を再度私とみゆでまとめる。どこかソワソワした様子で横にいたみゆにそう問いかけると、彼女はぶんぶんと首を横に振った。


「ダメだよ。だって、これは仕事だもん」


「せっかくなのに?」


「うん!これはけじめなの!仕事場にまでファンがいて、あれやこれや言われたら気が休まらないじゃない?………本当は話しかけたいし、ファンだって言いたいけれど、喉から手が出そうだけど………ダメダメ!!ダメなの!!」


私の問いかけに、途中心が揺らいだらしく、怪しいところもあったが、その後ぶんぶんともう一度首を振る。そのファンとしての心意気に感心する。


「あんたすごいねぇ、ファンの鑑だわ」


「でしょ?……って強がってるだけだけどね」


「結月、これ、手伝ってくんね?」


そうやってみゆと話していると、お茶を入れていた倉本がそう声をかけてきた。


さっきから、倉本、ずっとお茶をいれているわね。さすがに申し訳ない。


そう思って資料をまとめ終えると、倉本がいる給湯室へ行く。給湯室と言っても会議室兼応接室のすぐ近くにあるため、部屋を変えるという感じはあまりないが。


給湯室にはいると、倉本がケトルでお茶を注いでいる。そんな倉本に近づくと、空のコップをそっと頭に乗せられた。


「あ、間違えた。あまりにもチビだから、机かと思った」


「わざとだよね!?」


しらっとした顔で言った倉本に私が言い返すと、倉本はニヤリと笑いながら「どうだろうなぁ」と言った。なぜ机と私を間違う?!絶対うそだ。確信犯だ。


それに、私は確かに身長は低いかもしれないが、そこまでじゃない!!机と間違うほど低くはない!


むぅとむくれている私の横で、倉本はお茶をどんどん注ぎ、隣に置いてあったお盆にコップを並べていく。半分ほどのお茶が載った時、私へとお盆を差し出した。


「熱いから気をつけろよ?」


「ありがとう」


「いえいえ〜。小学生にはちゃんと言っておかなきゃダメだろ〜?」


私がお盆を受け取りながら言うと、倉本はまたニヤリと口の端だけを上げて笑った。


どっちが、小学生だよ!倉本の方が発想、小学生だわ!


プンスカと怒りながら、でも零さないように慎重にお盆を運ぶ。給湯室の出入口を出ようとする少し前、パタパタと走り去るような音が聞こえた。誰かいたのだろうか。いたとしても給湯室を使いたい誰かで、きっといっぱいだから後にしたのだろうけれど。


お茶をそれぞれの前に置き、その後席に着く。机の長辺に私たち会社のメンバーと『Colors』が向かい合い、短辺に宇佐美さんが座っている。


最後に給湯室からお盆をもって部屋に入ってくる倉本。残りのお茶を配りきった彼が席に着いたのを見計らってそれぞれ自己紹介をして、打ち合わせが始まる。コンセプトやCMの構成など話し合うことは様々だ。


今回の商品のコンセプトは『見えないところにも華やかさを』だ。スキンケア関係の化粧品だから、表に出ることはないけれど、使ってくれる人の内から湧き出る美しさを、さらに輝かせ華やかにする手助けをするものでありたいと、私が、そしてメンバーのみんなが魂を込めた作品だ。


その後、打ち合わせは順調に進んだ。きっとCMも商品も上手くいく、そう私は確信したし、きっと周りのみんなもそうだと思う。

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