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37話.わたし、照れるやら苦しいやら

家に帰り、パチリと電気を付けてそのままソファにダイブする。今日も疲れたよ、本当に。おつかれ、私!なんて自分を褒めたたえながら、ソファにぐでんと溶けそうな氷よろしくだらしなく寝そべる。


「なーんもやる気おきない……でもお腹すいたぁーー」


こういうのが一人暮らしだと大変なことだよね、なんて思いながらもグデクデダラダラと寝そべったまま動かない。一向に立ち上がる気にならない。


でも、とりあえず動かなきゃ。

ご飯とお風呂かぁ……。


なんて思いながら立ち上がると、自らがソファにダイブする前に置いたカバンが目に入る。そう言えば、みゆにDVDを借りたんだっけ。そう思い、カバンを見てみると、カラフルな表紙のDVDケースが目に入った。


「ちょっと見てみよっかな……」


お風呂もご飯もとりあえず脳の端の方へ追いやって、紙の箱のようなものからDVDケース本体を取り出す。中のケースにも紙の箱と同じようにカラフルなクレヨン調の文字とメンバーの写真が載っているが、箱とは少し違うデザインになっている。


パカりとケースを開けると、2枚のDVD。開けてすぐが『1』、DVDが入っている部分だけ動かせるようになっていて、そこに入っているのが『2』だった。


1は本編映像で、2は特典映像である。2にはメイキングと舞台裏、行われる前にテレビなどで流れたCM各種などが入っているらしい。


「よし、そうと決まれば早速さーいせい!」


先程までの疲れはどこへやら、ワクワクした気持ちに突き動かされて、DVDをデッキに入れると、再生ボタンを押す。


すると、画面が白くなって、『Flower pop crown』という文字とともに小さな彩りどりの 花が舞い降りるように映し出されたと思うと、スタート画面が出てくる。


「とりあえず、All playでいいかな」


みゆは渡してくれたあと、おすすめポイントを沢山話してくれたが、とりあえずは全部見てみようと思う。さんかくの再生ボタンをポチリと押すと、真っ暗な中にペンライトが輝く映像が映し出されて、こちらまでワクワクする。


「Colors!Colors!」


のコールの後、飛び出してきたのは、キラキラで王子様みたいな衣装を纏ったアオくんたち4人。


キラキラした衣装。

キラキラした瞳。

そして、キラキラした笑顔。


全部がキラキラしている。


そのまま彼らは歌を歌い始める。歌われるのは、光り輝くようなラブソング。


それに合わせて会場のファン達も楽しそうにペンライトをゆらめかせ、キラキラ動く。


どこか夢のようで、そして楽しい空間。


カメラが踊るアオくんに焦点をあてる。歌を歌いながら、パチリとウインクをしてみせる彼。


そんな彼が映った途端、思わずリモコンに手を伸ばし、赤色、電源ボタンを押した。その動作を受けて目の前のテレビはパチリと音をたててその動作をやめた。


途端に静かになる世界。


何故か私は、そのまま映像を見続けることは出来なかった。


三角座りをして顔を足の間に埋める。そうしていないと自我が壊れそうだった。


顔が暑くて。

多分私は今、顔が真っ赤だろう。


そのままの状態で考える。


お姫様だとか

僕には君だけなんだとか

ずっと大好きだからとか

君が僕の全てだとか


そんな言葉、陳腐なものだと思っていた。


だって、何万回何千万回と使い古された言葉だもん。そんな歌詞だって世界中で溢れているんだ。今だってきっとどこかで誰かが呟いている。


でも、君から囁かれたらどうして?

こんなにも胸が高鳴るの。


君だからなの?


そして、高鳴る気持ちと同時に現れるのは、胸が締め付けられるような気持ち。言葉にするなら、悲しいや苦しいかもしれないが、それよりももっと複雑な気持ち。


ねぇ、あまつさえ彼の相手が私だって言いたいなんて気持ちになるなんて。


歌詞とかで言われるのさえ他の人に聞いて欲しくないだなんて。


私はどうしたのかな?

私はどういう気持ちなのかな?

嬉しいのに苦しくて。

苦しいのに嬉しくて。


私、どうしちゃったんだろう。

不安定で何とも形容しがたい曖昧な気持ちが、苦しい。


その時、『ピコン!』と私の意識を呼び起こすように鋭く音が鳴った。それに反応するように顔を上げるとテーブルの上に置いてあったスマホが光っていた。


スマホを持ち上げると、それはSNSアプリの通知で、名前の欄には『ゆうくん』の文字。瞬時にまた顔が赤くなる。恐る恐る顔認証をして、通知を開くと「今電話いい??」と書かれていた。


普段なら二つ返事で大丈夫の言葉を送っていたと思うが、さっきの今で、まだ心の整理がついていないからか、少しばかり送りづらい。


「どうしよう」


数分、いや数十分だったかもしれない。そのゆうくんのメッセージを眺めていたその時、返事を打つより先に持っていたスマホが震えた。ついであの独特な着信音がなる。


「え、あ、わっと!」


驚きすぎて、スマホを取り落としそうになる。その弾みに手が触れたのか、


「もしもし?」


電話からそう彼の声が聞こえた。

リア友にこの小説の存在を伝えました|ω・)

伝えておいてなんだが、ちょっと恥ずかしいっっっ!!

み、見てますか……!?


あ、あと、文中に出てくる『Flower pop crown』は『Colors』のレーベルです……。(※実際には存在しません)

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