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33話.わたし、ほのぼのする

なにあれ!?なにあれ!?なにあれ!?


私、結月陽葵は動揺していた。それはもうわかりやすいくらいに。逃げ込むようにしてキッチンに入った私は、ゆうくんがいないのを横目で確認してから、キッチンに手をつき、はぁぁと大きなため息を吐く。まだ、顔が熱い。身体中の血液という血液が顔に集まっている気がする。


あの時、ゆうくんのお腹が鳴らなかったらどうなっていたのだろうか。紅潮した頬。近づいてきた、捕食者のような目。思い出しただけで大きな声を上げたくなる。


「……うう……」


その時、カチャリと開く扉。どうやら手洗いうがいを終えたゆうくんが入ってきたらしい。こうしてられない、平常心だ。だって、なんか、腹立つもん。


オニオンスープを温め直し、その間にオムライスの為の卵を焼いて、既に作ってあったチキンライスに乗せる。カルパッチョはもう出来ていて冷蔵庫の中だから、出したらOK。


「あ、ゆうくん、先に席についておいてー。すぐ持ってく!」


キッチンに入ってきたゆうくんにそう声をかけながら、それぞれ皿に盛り付けて完成だ。


「よし!完成ー」


出来た料理をお盆に乗せてテーブルへと持っていった。ふわふわ笑顔の彼が座っている前へ、料理を並べる。すると、彼はわぁっと声を上げた。その声音がとても嬉しそうで、こちらまで聞いていて嬉しくなる。


「美味しそー!」


「ほんとに!?良かったー」


私の分もゆうくんの向かいの席に置いて、自らも座る。すると、ゆうくんはあっ!と何かを思いついたような声を上げた。


「ねぇ、オムライスと言えばケチャップでメッセージが定番だよね?書きあいっこしない??」


満面の笑みをこちらに向けてくる。どうやら、お互いのオムライスにメッセージを書きあって、せーので見せよう、ということらしい。なんて可愛い人なのだろう。さっきとのギャップがすごいね。


いいかな?と子犬のようにうるうるした瞳で訴えかけるゆうくんに、私はこくんと頷いた。すると、ぱああと破顔する。頭の上に犬の耳が見える気がするよ。


「じゃあ、僕から書いてもいい?」


「いいよー」


「見ちゃダメだからね!」


ケチャップとオムライスを私から受け取ったゆうくんは、そう言うと、すっすっと何やら書き始めた。見てはいけないとの事だったので、見ないように視線をそらす。


「できた!……はいっ!」


「ありがとう。じゃあ、書くね」


ゆうくんにケチャップを渡され、次は私の番だ。何を書こうかなぁ……。


よし、決めた!


書く文言を決めた私は、迷いなくケチャップを動かす。ちょっと文字がよれてしまったが、それもご愛嬌だと思う。


「かけた?」


「うん、何とか……」


「じゃあ、せーの!」


ゆうくんの掛け声に合わせてお互いの方へオムライスを渡す。書かれていた文字は、


___だいすき


おそろいだった。お互いのオムライスに書かれた愛を伝えるメッセージ。もっとも、ゆうくんの方が文字は上手だったけれど。それを見てどちらからともなく笑い合う。


「同じだね」

「同じこと考えてたね」


と同時に言って、そんなところまでお揃いでふふっと笑ってしまう。私とゆうくんは実は似たもの同士なのかもしれない。


「ありがとう、陽葵」

「こちらこそ!」


愛のメッセージが書かれたそれはいつもより美味しく感じた。



その後、夕食を食べ終え、2人で並んでソファに座る。お互い仕事が忙しかったし、ゆうくんの場合は仕事の終わる時間帯がバラバラだからこうしてゆっくり会うのも久しぶりだ。


何をして過ごそうかなぁ。そう思いながらゆうくんの顔を見る。すると、ゆうくんもこちらを向いていたらしくパチリと目が合った。その途端、琥珀がすっと細められ、優しい三日月をつくる。ゆうくんはいつも優しくて素敵な人だ。でも、そーいえば、私、ゆうくんのことあまり知らないなぁ……。好きな物とかもっともっと知りたい。


そうだ、決めた!好きなものを知ろう大会を開催します。


「はい!」


「はい、陽葵さん!どうぞ」


そう思った私はゆうくんの方を向きながら、生徒よろしくはいっと手を挙げる。すると、ゆうくんは少し驚いたように目をぱちぱちと瞬かせてから、生徒をあてる先生みたいにすっと右手をこちらに差し出す。


「私、ゆうくんのこと、もっと知りたいです!」


「うん、僕も陽葵のことはいっぱい知りたいよ」


そう言って微笑む彼の声音はとても優しげだ。サラッとそういうことを言ってくれる、同じ気持ちを返してくれるところ、好きだなぁ。そんなことを思いながら、先程思いついた企画を投げる。


「そこで!『お互いのことをもっと知ろうぜ!質問会』を開催したく存じます」


「なにそれっ」


「ルールは簡単!お互い交互に質問をし合います。質問をした人は自分もその質問に答えなければなりません。でも、どうしてもこれだけは答えたくないってことは、パスしていいってことにしましょう。どうでしょうか」


ふふっと笑ったゆうくんに、私は意気揚々とルール説明をする。私の説明を聞いて、ゆうくんはさらに笑みを深くした。


「おっけー、りょーかい!いいよ!!」

ほのぼのしたのを書きたかったのです……

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