表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/150

31話.わたし、いざ勝負

半ば逃げ出すようにして会社を出たあと、帰り道を歩きながら考える。今日のご飯、何にしようかなーと。今日はゆうくんが比較的早く仕事を終えることができるため、私の家でご飯を食べようってことになったのだ。


夜ご飯なににしようかなーなんて考えるのはとても楽しい。食べてくれる人がいるのだから尚更だ。腕によりをかけるよ!


家にあるものを思い浮かべて、献立を考える。卵がたくさんあったから、オムライスなんてどうかなー。ケチャップいっぱいあったっけ?この前買い物に行ったばかりだから結構食材は揃っているはず……。


なんて考えながら歩いていると、もう家の前だった。エントランスで鍵を差し込み、エレベーターに乗って、鍵を開け、自らの家に帰る。


その間に作るものは、オムライスとオニオンスープ、それからたまたま買ってあったサーモンとアボカドでカルパッチョに決めた。喜んでくれるだろうか……?



お気に入りの赤色のエプロンをして料理をしていると、ピンポーンとインターホンが鳴る。


「はーい」


返事をしつつ出ると、映し出されたのは大好きな人。サングラスとマスクをしているが彼だろうということがわかる。


「今あけるねー」


「ありがとうー!」


響いた声も待ちわびていた大好きな声で。たった一言言葉を交わしただけなのに幸せな気持ちになる、鍵を開けると、彼を部屋の中へと招き入れる。ふわりと流れるミルクティ色の髪に、サングラスを取ったことにより顕になる琥珀の瞳。いつ見ても美しい人だ。その彼が優しく微笑んでいる。


「ただいま」


「お、おかえりなさい!」


同居していた時の名残からか彼はよく「ただいま」と言う。そんな彼に言葉を返しつつ、目は彼から離せない。彼に見惚れている自分がいる。かっこいいよな、本当……。


「そんなに見つめられたら照れるよ?……ほんと可愛い!よし……!」


彼に見惚れていると、ゆうくんはふふふっと笑ってから私の腕を自らの方へ引き寄せた。バランスを失い、そのままの勢いで彼に飛び込む形でその腕の中へ抱き寄せられる。


「……っ!ゆ、ゆうくん!?」


「ただいまのハグ〜。陽葵不足だったから、充電、充電!」


慌てた私にゆうくんはクスリと笑って、私の肩のあたりに顔を埋めるように近づける。首に触れた彼の髪が少しくすぐったい。包み込むように抱きしめられているからか、ふわりと香る爽やかな香り。


近すぎる彼との距離に、ぶわっと自分の体温が上がるのがわかる。それに呼応するように、ドキドキと高鳴る心臓。彼に触れたところが熱い気がする。熱がぐるぐると周り、顔に集まってくる。


近い、近すぎる!

このうるさすぎる心臓の音は果たして彼に聞こえてはいないだろうか。


「陽葵、顔真っ赤だよ?」


私の肩口から顔を離したゆうくんはクスクスと笑ってそう言った。顔は離されたが、腕はまだ自らの腰に回されたままで。至近距離に見える彼の顔に更にドキドキが増した。正面からみていられなくて、ふいっと視線をそらす。


そんなアタフタした私とは反対に、ゆうくんはとても落ち着いているように見える。余裕さえ纏った彼に少しだけ腹が立つ。


私ばっかり……!

なんてお門違いかもしれないが、腹立つものは仕方ない。可愛くはないだろうけれど、ぷくっと頬が膨らむのが抑えられない。


「むむむ……」


わ、私だって!!ゆうくんのこと、照れさせたい!!ゆうくんばっかり余裕そうでずるい!


その時、脳裏に思い浮かんだのは、帰り直前、みゆが言った一言。


『自分からちゅって頑張るのよ』


そ、そーよ!私だって!!頑張れば!!


そう決意し、いざ勝負!と顔をあげる。すぐ近くにある美しい顔に怯みそうになるが、ここで怯んではいけない、陽葵!頑張るんだ。


自由になる両手をゆうくんの肩に置く。


「なーに?」


不思議そうに顔をかたむけたゆうくんの、その唇目がけて、背伸びをしながら唇を寄せた。合わさる直前はみていられなくてキュッと強く目をつぶる。唇に触れたのは柔らかな感触。ついでなるのは控えめな「ちゅっ」という音。一瞬しか触れていないが、それは何故か甘い気がした。


してやったり!と思ったが、反応が返ってこない。不思議に思って、目を開けてみる。すると、希望通り少し顔を赤くしたゆうくんがいた。まぁ、負けず劣らず私の顔も赤いのだろうが。


でも、顔は赤いが反応はない。ただ、無言。え、なに!?怖いんですけど……!?


と思っていたら、腰にまわっていた腕がさらにキツく私を引き寄せる。腰から右腕だけを外して、驚く私の顎のあたりを右手で持ち上げるようにして上を向かせる。


あった視線は、どこかギラりとしているようにさえ見える。その目に射止められて、動けない。流れるような動作で近づいてきたのは、彼の美しすぎる顔。


「……んっ!?」


荒々しく、どこか噛み付くようなその口づけが、いつもと違う。何度も角度をかえるようにして、幾度か口づけられる。


驚きに目を見開いたままなので、その瞳と真正面からかち合う。蜂蜜を溶かしこんだようなその瞳は、どこか揺らめいていて、いつもよりか熱を帯びて見える。キラキラとしていて、星を散りばめたみたいだ、なんて思う。


その後、ゆっくりと名残惜しそうに離された唇。すっと離れていくゆうくん。顔の全部が見えるようになる。


「ねぇ、……陽葵……僕を誘ってる?」

R15ってどのくらいまでOKなのでしょうか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ