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30話. わたし、真実を知る

その後、食事をしながら話していく中で、宇佐美さんは宇佐美グループという会社の社長令嬢だと言うことがわかった。宇佐美グループと言えば、フード、服飾、機械などなど、多方面に事業を展開している会社で、誰でも1度は聞いたことがある会社である。


なるほど、社長令嬢はたしかに食堂には来なさそうだ。でも、すごいなー、社長令嬢ってもっと威張ってるものかと思っていたが、礼儀正しく、でも意思もしっかりあるし、人の言葉を聞ける力もある。世の中には出来た社長令嬢もいるもんだね。


ちなみに、宇佐美さんは自分の力を試したいからとあまり父親の会社のことは言わないでいるようだった。今働いている会社も全く関係なく、自分で見つけたとのこと。自立が目標らしい。


「そうなんですねー。じゃあ、周りにも言ってないんですか?」


みゆが問うと、宇佐美さんはこくりと頷いた。


「はい。自分の力を試したいのもありますが、言ってしまうとどうしても私への見方が変わってしまいますの」


「見方……?」


私が言葉を繰り返すように言うと、宇佐美さんはなんてことの無いようにうんうんと頷いた。


「はい。私が社長令嬢だと分かると、態度を変えたり、脅してこようとしたり……あとは怖がられるというのもありましたわね」


「聞いてしまって、ごめんなさい……。私たちにも話したくなかったのではありませんか?」


私たちが、宇佐美さんのことを知りたいと思って聞きすぎたのではないかと不安になる。


「いえ、私が勝手に話しただけです。普段ならその話を振られても話しませんもの。結月さんや新堂さんはそのような方ではないのはわかっていますので」


「それは、逆にごめんなさいかもです。あたしらちょっと図々しすぎない??」


ゆるりと首を振る宇佐美さんに、みゆと顔を見合って言う。うん、社長令嬢云々ではなく、プライバシーもデリカシーもない私たちの態度問題あるかも?


「いえ、仲良くしようとして下さって、私自身を見てくださってありがとう」


そう言って微笑む宇佐美さん。とりあえず不快感はないらしい。よかった。


その後、私たちはもう少しだけデザインの話をしてから別れた。宇佐美さんは会社に帰って更にデザインを推敲してくれるらしい。


私達も頑張らなきゃ。



ひと段落つくまで仕事を終わらせて、帰り支度をする。今日は少し早めの帰宅だ。帰り支度をしていると、みゆが向かいの席から椅子に乗ったまま移動してくる。私の方を見て、よっと手を挙げた。


「ひまー、今日は暇?」


「なにそれ、だじゃれ?」


「あ、ほんとだ!ひまと暇!」


私が言うと、初めて気づいたみたいでみゆはパチクリと目を瞬かせたあと、手を叩いて笑いだした。そんなみゆを冷たい目で見つめる。絶対零度ビームだ。


「さむいねー、本当に寒いねー」


「そんな目で見るなー」


「ごめん、ごめん。えっと、なんだっけ?あ、今日か。今日はね、ゆうくんとご飯を食べる約束をしてる……ごめん」


「あー、そーかー。そりゃ残念、一緒にご飯でもって思ったけど先約があったなら仕方ない」


「ごめんね」


「いやいや、いーよいーよ。彼氏との時間、楽しんで」


みゆはひらひらと手を振って、それからパチリとウインクをした。それから、みゆはさらに近づいてきて、ちょいちょいと手招きをした。私はそれに合わせて少しかがみ、みゆの方へ寄る。すると、みゆは耳元で小さな声で呟いた。


「自分からちゅって頑張るのよ」


「ばーかっ!」


慌ててみゆの傍から飛び退く。何言ってんだ、この人は!自らの顔がきっととても赤くなっているだろうことが分かる。


そう、あれから何度かゆうくんに会っているのだが、隣にいるのが耐えられなさすぎてオドオドしてしまう。そろそろ慣れなきゃってのは分かっているのだけれど。


「お先に失礼しますっ」


「お疲れー」


恥ずかしくなって、そのまま挨拶して会社を出る。まだ顔は赤いかもしれない。みゆはそんな私を見て笑いながら見送ってくれた。

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