26話.雨猫、怖い
今日から2章ですー!よろしくお願いします。あんまり人気ないかもしれんけど、とりあえず頑張っていきますー!
【これまでのあらすじ】
ある雨の日に結月陽葵はある男性(蒼羽結希)を拾う。そして、ひょんなことから同居することになる。暮らしていくうちに気持ちは近づき……同居が解消された時、それぞれ気持ちに気づく。お互いに気持ちを伝えた後、結希から驚きの言葉を聞かせられる。「僕、アイドルやってるんだ!」__
僕がアイドルであることを伝えると、目の前の陽葵はかちりと動きを止めた。大きな瞳が更にこぼれ落ちそうな程見開かれる。
そりゃそうだよね。いきなり言われても戸惑うよね。
でも……。
伝えておかなければならないと思ったんだ。君と本気で一緒にいたいなら。
そして、それ以上に僕のことを知って欲しいって思った。最初はちょっと怖かったけれど、君と関わるうちに君になら話してもいいって思えたんだ。
時間が停止しているらしい陽葵の前で手を振るが、全く動く気配ない。「おーい」と呼びかけると、ようやくビクリと体を動かした。
「大丈夫?ごめんね、驚かせて」
「あ、うん。こちらこそごめん、固まってた」
陽葵はブンブンと頭を横に振る。
「いや、僕が突拍子もないこと言ったからだよ。でも、本当のことなんだ。『Colors』って多分知っていると思うんだけど……」
この前新曲の宣伝見ていた時、名前、知っているようだったから多分知っているはず。たしか同僚さんがコウのファンだって言っていた。
僕の言葉に陽葵は、間髪入れずに頷く。
「ああ!私の同僚が好きなのよ。……でも、メンバーにゆうくんいたっけ?」
不思議そうな顔をしてこちらを見つめる陽葵。そんなに見つめられると少し照れる。
「僕達、ウイッグにカラーコンタクトをして別の格好でアイドルしているんだよ。僕は青色。アオって名前で活動してる」
そう言いつつ、自らのスマホを取り出し、写真を陽葵に見せた。それはColorsの集合写真だ。以前何かの仕事の折にそう言えば仕事以外で撮ったことないねぇと言う話になって撮ったのである。
その写真をじーっと見つめる陽葵。それから、青色の髪をした人物を指さす。
「なるほどー、じゃあ、この人がゆうくん?」
「うん」
僕が頷くと陽葵はスマホと僕を交互に見比べて、
「ほへー。あー、うん、でも、面影?あるかもー」
と言っていた。だが、それからハッとしたような顔をして、スマホから顔を上げてこちらを見る。
「でも、アイドルって恋愛禁止なんじゃないの?」
その問いに僕は曖昧に頷いた。事務所からNGと明確に言われたことは無い。だからこそメンバー達も僕の恋を応援してくれた。だが、あまり広げる話ではないとは思う。
「あー、一般的にはそうだけれど、僕達の事務所は特に言われてはないかな……。でも、あまり人には言わないで欲しいかも。本当に仲がよくて信頼できる人だけにして欲しい」
そうお願いすると、陽葵は事情を察したのかあまり深くは聞かず、頷いた。
「あまり言わないことにする。あ、でも、みゆ……。私の大切な友達なんだけれど、Colorsのファンでもあるんだよね……。この恋、応援はしてくれたけれど……」
僕は少し考える。その人がファンであることと恋愛を混同する感じの人なら言わない方がいいけれど。でも、陽葵の様子を見る限り、その人には伝えておきたいのだろう。
「その人は信頼できる人?」
そう尋ねると陽葵は真剣な顔で頷いた。
「うん、私はそう思う。少なくとも言いふらすようなひとじゃない」
「じゃあ、その人には伝えて大丈夫だと思う」
そう言うと、陽葵はほっとしたような顔をした。そんな陽葵を見つめる。穢れのない綺麗な瞳だ。
「これから色々なことがあると思うけれど、僕と一緒にいてくれる?」
そうなずねながらも、少し不安だった。恋人になった瞬間実は相手はアイドルでしたと言われては驚いただろうし、普通の恋人みたいに過ごすことが出来なくて窮屈な思いもこれからさせることになるだろう。
陽葵に拒絶されやしないか、とも思う。本当はアイドルだって伝えるの、もう少し後でも良かったんじゃないかって。
でも、それじゃあ、陽葵を騙しているみたいな気持ちになるし、大好きな人にはちゃんと僕のことを知っていて貰いたい。
ぎゅっと死刑宣告を待つかのように下を向くと、自らの手に温かいものが触れた。その感覚に顔を上げると、自らの手の上に重ねられていたのは陽葵の手だった。
ついでふわりと柔らかい声音が降ってくる。
「うん、私、ゆうくんと一緒にいるよ」
それは欲しかった一言。陽葵の顔を見ると優しく微笑んでいて。
続けて陽葵は再度口を開く。
「………好きに……なっちゃったから今更変えられないよね」
2章、今日よりスタートです!!
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なお、不定期更新です。
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