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誕生祭記念!陽葵と結希編 2

キッチンから出てインターホンの元に行く。インターホン鳴らされたら放っておくわけには行かない。


映像を確認すると想像した通りの人物がいた。笑顔のままブンブンと手を振ってくれている。


その笑顔に落ち込みも少し癒される。笑顔が素敵な人だ、としみじみ思った。そして、多分私はこの笑顔が大好きなんだ。


「陽葵〜、来たよー」


「ゆうくん、いらっしゃい」


少々現金なというか調子いい自分自身に苦笑しつつ、玄関の扉を開ける。


「こんばんはー!なんかいい匂いするねぇ!」


ふわふわと笑うゆうくんにチクリと胸が痛い。ごめん……料理は上手くいったけれど、ケーキは失敗しちゃった……。


多分きっと美味しいケーキ、期待しているはずなのに。だって誕生日だもん。そんな日に焦げたものだなんて嫌だよね、普通。


落ち込ませちゃうけれど……でも、本当のこと、言わなきゃね……。それで、謝って……ケーキは後日最高のものを贈ろう……。


先に言っておいた方がいいよね……多分。


「あのね、ゆうくん」


玄関を抜け、そのまま廊下を突っ切ってリビング兼ダイニングに入ってから切り出す。


「ん?どした?」


首を横にコテンと傾けてこちらを見つめるゆうくんに少し戸惑いつつも、


「あのね、ケーキ……焦がしちゃったの……!ごめんなさい」


正直に白状する。次いでガバリと頭を下げた。ゆうくんの顔見るのが怖かったから頭を下げることで視線を外せたことに少しホッとしてしまう私もいる。私、最悪だ。


床をじっと見つめる。数秒の沈黙。


反応が返って来なくてゆっくり顔を上げるとポカンと言う言葉がピッタリなほど呆気に取られたような顔をしている想い人がいた。目が少し見開かれ、口が半開きになっている。


それから彼はほっとしたような顔をした。


「なーんだ、そんなこと?良かった!」


「ゆうくん……?」


見るからに安堵したようなゆうくんに、不思議に思い問いかける。もしかして、ベイクドチーズケーキは焦げた方がお好みとか?ちょっと苦いのが好き的な……?


「ああ、ごめんごめん。実はね、玄関のドアを開けた時、凄く神妙な顔をしていたから何か苦しいのかなってちょっと心配してた」


ゆうくんはこちらを見てニコッと笑った。あ、苦いのが好きって訳じゃないのか。


「だからね、何ともなくて良かった!火傷とかしてない?平気?」


ゆうくんはこちらの顔を覗き込む。……この人はほんとに優しい人だ。


「うん、それは平気。でも、ケーキは……ほら……」


そう言いつつ、キッチンに向かう。後ろからゆうくんも着いてきている。


キッチンに入ると手にマトンをつけ、オーブンの中にまだはいったままのケーキの残骸を取り出し見せる。まだ焼けてから少したったから少しだけ冷めている。


オーブンから出すと、電気の明かりに照らされてさらに、焦げているのがよくわかるようになって、いたたまれなくなる。


ゆうくんにケーキをみせたまま俯いていると、


「ほうほう、どれどれ……?」


そう声が聞こえたと思ったらカチャンと食器のぶつかるような音が聞こえる。その声にバッと顔を上げると、フォークでケーキをひとすくいしているゆうくんの姿。驚いて止めようとするが、ゆうくんはそのままケーキを口へと入れた。


「え、ゆうくん!?」


「あちっ……!」


と言いつつももぐもぐと口を動かす。熱いに決まっている。まだ粗熱も取ってないのに。だが、ゆうくんは口を止めず、そのまま飲み込む。


「うん、これはこれでいいと思うよ!美味しいよ、ちゃんと」


そして、パチンとウィンクまでしてみせる。


「お、美味しいわけないでしょ!口、苦いよね!えっと、どうしよう!?」


あわあわとし始めた私に、右手の人差し指をピンと立てて、左右に揺らす。ウインクしたまま。


「そんなことないよ。君の作ってくれたものはなんでも美味しいよ?」


ああ、温かいなぁ。優しいなぁ、この人は。胸がじんわりと温かくなっていくのを感じる。ゆうくんはそのまま言葉を続ける。


「だからね、落ち込まないで、ね?ほらー、俯かない!スマイル〜」


自分の口角をクイッと両人差し指でそれぞれ上げて見せるゆうくんに思わず吹き出してしまう。


「それでよーし、笑顔1番!」


「……ありがとう」


誕生日なのに相手に気を使わせてしまったかな。ダメだね。誕生日会、しっかり楽しんでもらわなきゃ!


「あ、ケーキは失敗しちゃったけど、お料理はきっと美味しいはずだからね!」


「おー、それは楽しみだね」



夕食の後、お風呂を終え、そのあと2人でゆっくりとリビングのソファで、他愛ない話をしながら過ごす。


夕食はちゃんと美味しく出来ていた。好きなものをいっぱい作った甲斐あって、ゆうくんはとても喜んでくれた。良かった、良かった。


ソファに座って話をしていたが、ちょうど話が途切れたので脇においてあったプレゼントを持ち上げ、それからゆうくんの方へ差し出す。


「はい、これ……」


ゆうくんは目をキラキラと輝かせる。それは子どものようでちょっとかわいいななんて思ってしまった。


「くれるの?」


「うん。気に入ってもらえるとうれしいな」


ゆうくんの周りの人からもらったであろうプレゼントとは違って大したものじゃないかもしれないけれど、頑張って選んだから気に入ってもらえるととても嬉しい。


「開けていい?」


「うん」


私が頷くと、ゆうくんは包装紙を丁寧に外していく。ちゃんとテープにそって。あ、包装紙破る派じゃないんだ!と新たな発見。


手に乗るほどの小さな箱に入っているのは名前の彫られたボールペン。全体の色は濃い青色で、ボールペンのインクの色は黒。くるりと下半分を回すとシャーペンとペン先が入れ替えられる仕様となっている。


何がいいかとても迷ったんだけれど、ボールペンなら使い道あるかなって。


「えへへ、ありがとう〜。あ!」


ふわりと笑ったゆうくんは、なにか思い出したように声を上げた……と思ったらゆっくりとこちらに顔を近づけてくる。


整った顔が真近に見える。瞼にゆっくりと隠れる琥珀の瞳。伏せられた長いまつ毛。通っているであろう鼻筋は近すぎることによって全然見えない。近づいても美しい絹のようなきめ細かい肌が見える。


その光景に視線を奪われているとついで、優しくチュッという音が聞こえた。唇には柔らかい感触。でも、それは一瞬で。おもむろに離れていくそれ。


「……え、な、え……」


キスされた。そう理解すると、少し遅れてじわじわとあたたかい何かが顔にやってくる。驚きすぎて意味の無い言葉の羅列が口から勝手に漏れていく。


「プレゼントのお礼だよ〜?」


その言葉にゆうくんの方を見ると、イタズラが成功した少年のような顔をしていた。と思ったら、今度はその顔のままこちらを覗き込んでくる。


「あ!顔真っ赤だねー?」


「い、いちいち言わなくてよろしい」


そう言い返すと、口をわざとらしく尖らせて、


「えー、言いたいなぁ。だってこんなに可愛いんだもん」


とさらなる爆弾を落としてくる。


「だから、そういうことサラッと言わない!」


「なんでー?」


ケロッとしたような、純粋な子どものような顔でコテンと首を横に傾けるゆうくん。


なんでって!?理由聞くか!?


「てれるから!!」


「せっかく可愛いんだから、言わなきゃもったいないよー」


ふふ、と笑いながら言うゆうくん。


なんで、この人はこんなに爆弾ばっかりしかけるの!!なに!?爆弾魔なの!?


「ばか!ゆうくんの誕生日なのに私を喜ばせてどうする!!」


そう言い返すと、


「僕も喜んでるよ?だって、僕は陽葵が喜んでくれたら嬉しいもん」


これは……本当に……


「ダメだ、ほんとこの子は……」


ボソリと呟く。すると、ゆうくんはよく聞こえなかったようで、


「え、何か言った?」


その言葉に首を横に振る。これ以上こうやって言っていても何も変わらない。。……匙を投げたとも言う。


「ううん、なんでもない!ゆうくん、誕生日おめでとう!!」


「うん、ありがとう」


そうやって見せてくれたのは史上最高に大好きな笑顔だった。

ありがとうございました!

ゆうくんは素でサラッと照れることを言っちゃう人なんですよねぇ。それで陽葵は振り回される……と。


さて、そんな陽葵と結希の誕生日会のお話、いかがでしたか?楽しんでもらえたなら嬉しいです。


今後もキャラたちの誕生日は何かしていきたいなぁと思っています。(次だれだっけ……?)


今後も良かったら付き合ってやってくださいな!


そして、さらに!この結希と陽葵が誕生日会をする前のお話をRTキャンペーンで公開!『誕生祭記念!Colors編』を是非ゲットしてください!

(対象ツイートは朝8時に投稿予定!)


詳しくは花川優奈のツイッターまで!!

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