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〇番外編1.コウくん講座開講

これはアオこと蒼羽結希が陽葵に出会う前のお話__


この日、Colorsは音楽番組の撮影の為にテレビ局に来ていた。結希は今日の撮影も楽しいといいなぁと思いながら、待機のための楽屋に入る。


扉をガチャりと開けると、中にはまだコウこと黄里川透しか来ていなかった。中にある椅子に座って紅茶を飲みながら何やら本を読んでいるようだった。


「おはよー、コウ!」


結希が扉のところで、コウの背中に声をかけると、コウはどこか優雅にさえみせる動きで結希の方を向く。一つ一つの所作が洗練されている。


「おはよう、アオ。今日も元気だね」


コウは男でも惚れ惚れするような笑顔を浮かべて挨拶をする。その声は少し低めで、囁かれればともすればゾクゾクと身体が震えるかもしれないような、それでいて優しい落ち着くもの。それからおまけとばかりにパチリとウインクをした。


流石はColorsの大人っぽさ担当だ。これを通常運転でやってのけるのだから。


そんなコウはまだ衣装には着替えていないようだった。彼の今の姿は非常にラフで、肩の少し上くらいまである黒髪を軽く髪ゴムで結び、着ているシャツは前のボタンが2つほど外れている。普段はしないメガネも本を読んでいるからか、かけたままになっている。


いくつか会話をした後、コウはまた読書に戻っていく。すっと流れるように手元に落とされた視線。下を向いているため、髪ゴムから外れた何本かの髪がはらりと顔にかかる。


その姿に結希は少しドキッとさせられる。ただ本を読んでいるだけなのにどこか色気を発しているのである。


こんな姿ファンの子がみたら、発狂するだろうと思う。男の結希でもドキッとするのだから。結希にとって、コウは男が憧れる大人の男性の代名詞である。いつか僕も大人の魅力溢れる男になりたい、と結希は切に願っているのである。


結希はコーヒーをカップに入れるとコウの斜め向かいの席に座り、コウの姿を眺める。


自分と1つしか変わらないのに、この色気や大人っぽさは一体どこから来ているのだろうか、と結希は不思議に思う。どうしても気になったので尋ねてみることにした。読書を邪魔するのはしのびないが好奇心が勝ってしまった。


「ねぇー、コウー」


そう呼ぶと、コウは嫌な顔一つせず、本から顔を上げてこちらを向く。


「ん?どうした?」


「コウってさー、行動一つ一つが……何だろう?色っぽいっていうか、大人っていうか……」


「そうかな?」


結希が思ったことをそのまま言うと、コウは首を少しかたむける。その角度も傾けすぎす真っ直ぐすぎずちょうどいい塩梅だ。意識してしている訳じゃ無いだろうけれど。


「それとか!」


「これ?」


不思議そうな顔をし、ぱちくりと一度目を瞬かせるコウに、こくんと頷いてみせる結希。


「うん、何かね滲み出てる。カッコイイって思う。どうやったらそんな風にできるの?仕草とか!」


「そう言われても困るな……」


ズイッと身体を乗り出してきく結希に、コウは少し困ったように眉を下げた。結希はそんな様子にんーっと悩むような声を上げた後、ピンッと人差し指を立てる。


「んじゃあ、例えば、もし仮に好きな女の子がいたとして。一緒にいる時、どんな事に注意する?」


結希が言うと今度はコウがうーんと悩む。


「どうだろう?大人っぽさが関係あるかは分からないけれど、相手の目を見ることは大切だと思うよ。こうやってじっと見つめて話を聞く」


「おおー!なるほど……」


それからコウは、まあ、それは大人っぽさ云々よりも誰かと話す時のマナーかもしれないけれど、と付け加える。


まあ、そうか……。でも、コウなら目を見つめただけでも発狂されそうだけれど、あと、メンバーのユカリもアヤも多分発狂される側の人間だ、そう思い、言うと、「それはアオもじゃないの」と返された。


それから、コウはふわりと笑って、


「ファンの子達と一緒にいる時は出来るだけ全員と目が合うように頑張ってはいるよ。全員に楽しんで欲しいからね。……これも大人っぽさは関係ないか……案外難しいものだね」


「うむむ……」


すると、コウは、あ!と声を上げて、


「一般的には髪をかきあげたりするのが格好良いとは聞いたことがある様な気がするかな。……でも、俺自身がって言われるとよく分からないな」


とそれから少し申し訳なさそうに眉を下げて、自分じゃ分からないことも多いからね、と言った。そうか、自分ではわからないものかと納得し、そして、それならば……!僕が盗めばいいのではないか!と思い立つ。


「よし!じゃあ、これからコウのこと見て、大人の魅力溢れる男になるぞ!」


結希がぐっと拳を顔の前あたりで握ると、


「でも、アオはアオなりの魅力があるんだからそれを生かすのが大切だと思うよ?だってそれは、アオにしか出せない魅力だからね」


「そういうもん?」


「うん。少なくとも俺はそう思うよ?」


だが、そんな他愛ない会話の記憶は時と共に薄れ、本人たちもそんな会話をしたことすら忘れていた。


かくして時は流れ__


結希は一世一代の場面と対峙していた。目の前にいるのは結月陽葵その人だ。雨に濡れ、どこを見てもびしょ濡れの濡れ鼠だ。濡れた前髪が邪魔だったので撫で付けるように上に上げている。


一応かきあげる、に入るのではないだろうか。仕草ではないが。


「……ん?陽葵さん……?」


その様子をみて固まった陽葵を不思議に思い、頭の上に疑問符を浮かべながら近づく。そして、じっと陽葵を見つめる。陽葵はその瞳に縫い付けられたように動けないでいる。


一応じっと見つめて話を聞く、に入るのではないだろうか。


そんなことはつゆ知らず結希は陽葵に顔を近づける。その黒い瞳を覗き込むと


「大丈夫?」


大きな声でそう叫ばれてしまう。


「それ、しまってーーー!」


「何を?」


「そ、その色気!」


そう言われて納得する結希。どうやら今の結希は色気があるらしい。今度は少し意地悪そうな顔でニヤリと笑う。


「もしかしてドキドキした?」


「す、するに決まってるでしょう!離れて!」


「どうしよっかなー?君がそんなふうに可愛い顔してくれるならもうちょっとこのままでいようかなー?」


そう言う陽葵に、結希はスマホを取り出し陽葵にみせる。そこには陽葵が送ったメール。それをヒラヒラとふってみせる結希に、陽葵は更に顔を赤くする。目がくるりくるりと動き、落ち着きがない。


「普通、こんな可愛い事いう子、離したくないよね?僕のことが頭から離れないんでしょう?」


「う……」


「僕もね君のことが頭から離れないんだ。あのね、陽葵さん……」


その後、じっと見つめ合う。琥珀の瞳と黒色の瞳の視線がが絡まる。見つめ合うこと数分。自分の想いを告げるために口を開き掛けた結希だったが、直後に顔を背けることになる。


「……ふぇっくしゅん!」


「え、大丈夫!?お風呂、入ろうか!!また風邪ひいちゃう!」


途端に心配そうな言葉をかける陽葵。さっきの雰囲気はもうすっかりなくなる。


「……ちぇっ……決まんないなぁ、僕……」


……コウの大人っぽさなのかどうなのかわからない講座が役に立ったような気がしないでもない。尤も、本人は無意識であるし、最終的には決まらなかったが。


記憶としては忘れていても心のうちにはあって、知らず知らずのうちにしていたら面白いなぁと思って何となくで書きました……。読みづらかったらすみません……。


次回の投稿は【10月4日 8時】です!

番外編2をお届け!!


唐揚げ求めて大暴走!?

ちょっとやんちゃしちゃうColorsの日常をおたのしみくださいませ!


お楽しみに!

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